真水稔生の『ソフビ大好き!』


第190回 「ゲイトウエイは心の拠り所」  2019.11

この『ソフビ大好き!』が
毎月連載になって丸15年が経ちました。

これまでにも幾度か述べたとおり、
元々は、
以前、ここ名古屋で毎年開催されていた玩具展示即売会・モダン文化マーケットの
来場者に配布される小冊子に連載させて頂いていたものを、
その小冊子が廃刊になったのを機に、
ゲイトウエイのオーナー・杉林さんの御好意によって
こちらのホームページ上での連載に移行して頂いたのが始まりなのですが、
当初は年2回の連載だったのが
2004年10月の第9回「足の裏のロマン」から毎月連載になりまして、
そこから15年、というわけです。

・・・15年、
そんなにも長く続けてきた実感は、正直、無いのですが、
小学生だった息子たちが、
中学、高校、大学を出て、今ではもう、社会人として働いてますので、
そうやって考えると、

 ずいぶんと経ったンだなぁ・・・、

って、急に心に沁みてきます。

そんな15年前、
あれは
ゲイトウエイさんの営業終了後に杉林さんと2人で飲みに行った時の事、
お店のホームページの話になって、

 「毎月、書かない?」

って、言われたンですよねぇ・・・。

当時、杉林さんは、
お店のホームページを立ち上げたものの、
御多忙だったため
全くと言っていいほど手がつけられず、

 「最低でも月に一度は更新しないと、誰も見に来なくなる・・・」

と、放置状態に頭を悩ませておいででした。

・・・で、その打開策として、
年2回の連載だった僕のエッセイを毎月の連載に変更し、

 とりあえず、月に一度は更新を・・・、

と考えられたわけです。

 僕とこうしてお酒飲んでる暇があるンだから、更新出来るじゃん!

って思いましたし(笑)、

 僕のエッセイなんかで “繋ぎ” になるの?

とも思いましたけど(苦笑)、
ソフビに関して書きたい事はいっぱいあったし、
お世話になってるゲイトウエイさんに少しでも恩返しが出来るのなら・・・、と
カルピスサワーを飲みながら二つ返事で引き受けたのを憶えています。

その後は、約5年間、

 お店のホームページなのに、
 取り扱い商品の紹介や入荷情報などが一切無い、
 もちろん、店長のブログなんてものも無い、
 そこには、ただ、
 常連客である僕のエッセイが載っているだけ・・・、

という、
知らない人からしたら、なんとも謎めいたホームページとなっていました(笑)。

 「あのホームページは何?」

とか、

 「ゲイトウエイさん、って、営業してるの?」

とか、
会う人会う人に、よく聞かれたものです。

中には、
僕のエッセイしか載ってないンで、
ゲイトウエイが僕のお店だと思ってる人もいたくらいで、
ネット上で、

 『セーラーファイト!』のマミズ参謀の店、

などと紹介されて、
杉林さんに、

 「店を乗っ取られた」

って、からかわれた事もありました(笑)。


でも、
こないだ杉林さんと
その事を話したら、
毎月連載を御自分から持ちかけた記憶がまったく無いそうで、

 「そうだったっけ?」

と言われてしまい、
それどころか、

 自分の店のホームページで真水が好き勝手にやってる、

という認識をお持ちで、
「店を乗っ取られた」というのも、
満更冗談で言ってたわけでもなかった事が判明しました(汗)。

「毎月、書かない?」なんて、
たぶん、軽いその場の思いつきで、冗談でおっしゃっただけだったのでしょう。
それを真に受けて僕は・・・(苦笑)。

まぁ、でも
依頼した憶えが無いのに、
自分の店のホームページで赤の他人が毎月エッセイを書いているのを
15年も黙って放っておいてくれたのですから、
杉林さんの人柄の良さや器のデカさに、改めて感服です。

そして、改めて感謝も・・・。

といいますのも、
継続は力なり、とはよく言ったもので、
15年も続けさせていただけたおかげで、いろんな人の目に触れる機会に恵まれ、
それに伴う嬉しい出来事が、度々あったからです。

たとえば、

 中学の同級生が、
 たまたまこのエッセイを見つけて
 僕が芝居をやってる事を知り、公演を観に来てくれて、
 卒業以来、何十年ぶりの再会を果たした、

なんて事もありましたし、

 名前も存じ上げない、
 ゲイトウエイさんの店内や玩具イベントの会場で会った際に挨拶する程度の
 間柄だった方が、
 このエッセイで紹介したソフビの写真を見たらしく、

  「私、違う色のヤツ、持ってますけど、要ります?」

 なんて、或る時話しかけてきて下さって、安く売ってもらえた、

なんて事もありました。

最近では、
遠方に引っ越してしまい、ずっと交流が途絶えていた知人が、
第178回「憧れの人」を読んで、
僕の網膜剥離を心配して連絡を下さり、
御自身も数年前に網膜剥離を患った経験から、いろいろとアドバイスをして下さっています。
ありがたい事です。

・・・そうそう、
雑誌『特撮ゼロ』で
僕のエッセイ(『侘ビ・寂ビ・ソフビ・夢遊ビ』)の連載が始まったのも、
この『ソフビ大好き!』を読んで下さった方が
なんだか面白がって、

 こんなのを誌上でも・・・、

と出版社に企画を持ち込んで下さった事から実現した事です。

ホント、
人生の宝物となるような嬉しい出来事がいっぱい。
15年間、とても幸せでした。
杉林さん、どうもありがとうございました。

そして、
読んで下さった皆さん、どうもありがとうございました。

今回で第190回目を迎えたこの『ソフビ大好き!』、
杉林さんから、

 「やめてくれ」

と言われないかぎり(笑)、
今後も続けていく所存ですので、どうか、よろしくお願いしますね。


・・・最終回だと思った?

ハハハ。そんなわけないじゃん。

 お酒を飲みながらコレクションをボーッと眺める至福の時、
 ふと思いついた事を自由に書く・・・、

それだけでも充分楽しいのに、

 それを読んで下さる人がいて、
 そこから、予期せぬ嬉しい出来事が起き、日常がハッピーに展開していく・・・、

こんな愉快な事、やめられませんよ。
杉林さんから「やめてくれ」って言われても続けます(笑)。





それにしても、杉林さんとは長い付き合いです。
初めてゲイトウエイさんに出向いたのは、
僕がソフビのコレクションを始めて2年目の冬でしたから、
今から30年前・・・、

あっ、『ソフビ大好き!』の毎月連載15年の、ちょうど倍だぁ!

凄いなぁ・・・。
15年を振り返っても、
小学生だった息子たちが社会人になってる、なんていって “しみじみ” しちゃってたのに、
その倍だなんて、気が遠くなるほど長い月日です。

息子たちが、
小学生だったどころか、まだ生まれる前・・・いや、もっと前、
僕が、まだ結婚もしていない、20代半ばの若僧の頃ですらね、30年前なんて。

その後、
結婚して、
父親が他界して、
長男が生まれて、
次男が生まれて、
マイホームを建てて、
離婚してそのマイホームを手放して、
母親が他界して、
再婚しようとしたけどそれもぶっ壊れて、
そして、
サラリーマンを辞めて・・・。

その間、
幸せな時も辛い時も、
健やかなる時も病める時も、
あるいは、人生の岐路に立ったような時も、
ずっと変わらず、僕はゲイトウエイさんに通っていたわけです。
いやはや、なんとも・・・。

なので、
杉林さんとは、
オモチャの事以外にも、いろんな話をしました。
身の周りに起きた些細な出来事から社会問題に至るまで、
嬉しい事や悲しい事、腹立つ事や苦しい事、何でも・・・。

杉林さんは、
嫌な顔ひとつせず愚痴を聞いてくれる、とても優しい方ですが、
そんな柔らかい人当たりからは想像しづらいラジカルな面もお持ちで、
思いも寄らない切り口の助言をしてくれる事も多く、
何かに気づかせてくれたり、
何かの決断の際に背中を押してくれたり・・・、って事が何度もありました。

お話をさせていただく事自体が、
とても刺激的で有意義だったのです。
面白かったし、影響も受けたし、何より、救われました。

言うなれば、
“ゲイトウエイ” というお店は、
単にソフビを買うためだけの存在ではなく、
“心の拠り所” だったンですよね、僕にとって。30年間ずっと・・・。

15年で “改めて感謝” でしたから、
その倍の30年なら、もう、“改めなくても感謝” ですね。
果報者です、僕は。

      ありがたや、ありがたや・・・。




それでは、
そんなゲイトウエイさんで購入して手に入れたコレクションを
いくつか紹介させていただきながら、
その “30年” という長い月日を振り返り、今回は終わらせていただきます。

  ブースカ マルサン製、全長約23センチ。

30年前、
僕がゲイトウエイさんで初めて購入した、記念すべきソフビです。 
 
マルサンのブースカ人形は、
このほかにも、いろんなタイプのものがありますが、
我が家にやってきたブースカは、これが初。

『快獣ブースカ』(昭和41年~42年放映)の最終回で、
ブースカは20年もかかる宇宙の旅に出かけますが、
子供の時、それを観て、

 今度、ブースカに会えるのは、大人になってからなのかぁ・・・、

なんて、
未来に思いを馳せたものですが、
ゲイトウエイさんの店内で、実現したンですよね、その再会(笑)。 
  レジの前にあったガラスケースの
いちばん上の段に並んでいたこの人形に、

 「わっ、ブースカだ!」

って思わず叫んで飛びついた僕を見て、
杉林さんが、

 「可愛いですよね、それ」

って、
笑顔で話しかけてくれた事を憶えています。
そこから交わしたブースカ談義が、
杉林さんとの初めての会話。

常連客となる扉が開いた瞬間でした。
バラサ、バラサ! 
     

お腹や顔が
こんなにもパンパンに張り切っているのは、
夢がいっぱい詰まってるから・・・。

心が浮き立つ、素敵な造形です。大好き。

  レインボーマン ダッシュ2(炎の化身) バンダイ製 、全長約38センチ。

これは、
ゲイトウエイさんに通い出して2、3年経った頃に購入したソフビです。

“売約済み” だったのですがキャンセルとなり、
幸運にも手に入れる事が出来ました。 
     
キャンセルとなった理由は、「タバコ臭いから・・・」との事。

タバコをやめて久しい杉林さんですが、
当時は、なかなかのヘビースモーカーで、
営業中も店内でフツーに吸っていらっしゃったンですよねぇ・・・。

この人形はサイズがデカいゆえ、
当時の店内にあったソフビ用のガラスケースには入りきらず、
レジの横に裸で置いてあったため、
そこでプカプカやってた杉林さんのタバコのにおいが
付着してしまった、というわけです。



  購入する際にそっと嗅いでみたら、
確かに、
当時、杉林さんが吸っていらっしゃった外国製のタバコ(ガラムだったかな)の
においがしましたが、
ほんの微かなものでしたし、
僕自身も少量ではありますがタバコを吸うからか、
買うのをやめたくなるほどの嫌なにおいには感じませんでしたので、
むしろ、

 炎の化身でタバコのにおいがするなんて、
 “火” のイメージで繋がってて、なんだか洒落てるなぁ・・・、

なんて好印象をもって、
夢見る気分で買わせていただいた事を憶えています。 
  それから約30年経った今では、
もう、タバコのにおいは消えてしまいましたが、
僕の心の中では
その思い出がずっとにおい続けていますので、
この人形をコレクションケースから取り出して愛でる度、

 あのにおいのおかげで、僕に購入権が廻ってきた、

っていう
忘れられない喜びが、
まるでアロマ効果のように心地良く気持ちを癒し、
幸せなひとときを提供してくれます。 

  ファイヤーマン バンダイ製 スタンダードサイズ、全長約27センチ。

第59回「赤」の中でも紹介したこの人形は、
ゲイトウエイさんではなく、
東京のアンティーク・トイ・ショップで購入したものなのですが、
ゲイトウエイさん絡みの忘れられない思い出があるので、
特例として紹介させていただきます。
 
 
最初のブースカ談義から5年経ち、
もう、すっかり常連客として定着していた(笑)頃、
或る日、杉林さんから自宅に電話がかかってきて、

 「中京テレビの喜井さんという人が、
    ファイヤーマンのソフビを貸してほしいそうですけど・・・」

と言われました。

・・・そうなンです。
以前、第13回「玩具協力スタッフ奮闘記」の中でも述べたように、
あの伝説のテレビ番組『今甦る!昭和ヒーロー列伝』に
僕が関わる事になったのも、
“ゲイトウエイさん繋がり” だったンですよね。
 
  その時、初めて喜井さんを紹介されたのですが、
聞けば僕と同年齢、との事。
それゆえソフビ人形に強い思い入れがあり、
御自身が企画しプロデュースする事になった、
昭和の時代に活躍した特撮ヒーローを紹介する、というその新番組で、
昔懐かしいソフビ人形を使いたい、と
考えていたのでした。

で、
第1回は円谷プロの『ファイヤーマン』を取り上げる事が決定したため、

 「ファイヤーマンのソフビ、貸してもらえませんか?」

と、ゲイトウエイさんに協力を求め、

 「今は在庫がありませんが、持ってる人は知っています」

という流れで、
ゲイトウエイさんから僕のところに話が来た次第。 
  ・・・嬉しかったですねぇ。
だって、僕のコレクションがテレビに映るンですから。

数週間後の放送日、
番組がこのファイヤーマン人形のアップから始まるのを観た時は、
とても感動しました。




 
 
ただ、これ、
ひとつ裏話がありまして、
当時、ゲイトウエイさんにファイヤーマンのソフビは在庫があったンですよね。
杉林さんが僕を紹介する必要は無かったンです、実は。

先ほど述べたように、
もうすっかり常連客となっていた時期でしたので、
店内のガラスケースの中にあるソフビは、ほぼ全て、僕は把握しており、
杉林さんから電話をいただいた時も、

 ・・・ん?
 ガラスケースの中の、レッドマン人形の横にあったはずなのに、
 売れちゃったのかな?

って思ったのでした。

その後、お店に行ったら、やっぱりあったので、

 「あるじゃん、ここに」

って指摘したら、

杉林さんいわく、

 「あれ?レッドマンに隠れて見えンかった・・・」

との事。

 なんて杜撰な商品管理なんだ・・・、

と呆れたものです(笑)。
  まぁ、でも、
そのおかげで、
この、自分のファイヤーマン人形が番組で使われる事になったのですから、
ラッキーでしたけどね、僕としては。

“運” というか、“縁” というか、
何がどこでどうなるか、わからないものです、人生は・・・。

  仮面ライダーⅤ3 全長約10センチ。

こちらは、
更にそこから5年ほど過ぎた頃(つまり、今から20年ほど前)に購入したもの。
メーカーは不明ですが、
なかなかカッコいい造形です。
 
杉林さんが、
これと同じものを
子供の頃に薬局で買い物した際に景品でもらった記憶があるそうで、
それがとても嬉しかったらしく、
その思い出・思い入れから、

 「売りたくない」

と言って、なかなか売ってくれませんでした。

 空想雑貨か!

って思いましたが(笑)(第174回「夢見る大人のひみつ基地」参照)、

 これは情熱の度合いが試されるゆえ、引き下がるわけには行かぬ、

とばかりに、
半年以上かけて必死に口説き、ようやく売ってもらう事が出来た一品です。
  以来、
杉林さんの分も、僕が、大切に大切にしているのですが、
よく考えると、
杉林さんは僕の5歳年上だから、
『仮面ライダーⅤ3』放映時は中学2年生なので、

 中2でⅤ3のこんなオモチャもらって、嬉しいかぁ?

と、疑問が湧いてきます。

 もしかして、
 なかなか売ってくれなかったのは、ただの意地悪だったのでは・・・?

って、
ちょっと、思ってます(笑)。

  蜘蛛男 全長約11センチ。

ポリエチレン製の、これもメーカー不明のミニ人形。

実物の蜘蛛男と違って腕が4本もありますが、
これは、
『仮面ライダー』のクランクイン前に石森章太郎先生が描かれたデザイン画に
準じているためでしょう。
“原作版を立体化” は、“海賊版人形あるある” ですよね。
マニアには嬉しいところです。 
       
で、これ、
僕がゲイトウエイさんで購入したものの中では、最新のコレクションなンですよね。
今年の2月か3月だったか、
ホームページの “本日の入荷商品” のコーナーに載ってたのを見て、
電話で予約したのですが、
その際、杉林さんが吹き出すように笑われたので、
理由を尋ねたところ、
なんでも、
僕からの電話のタイミングが、
ホームページにアップした直後(ものの1、2分経った程度)だったそうで、

 30年以上もコレクターやってて、まだ、そんなに必死か!

という感嘆から、思わず笑ってしまった、との事でした。 
  ・・・まぁ、
たまたま、そういうタイミングだっただけですけど、
コレクションのためなら、
全然、当然、
今でも必死ですよ、僕は。

そんな当たり前の事に感嘆されるなんて、僕と杉林さんの付き合いも、まだまだ浅いな(笑)。 





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