真水稔生の『ソフビ大好き!』


第59回 「赤」 2008.12


以前、
自分が出演する舞台の宣伝のため、或るラジオ番組に出させていただいた時、
パーソナリティの方に

 「真水さんにとって、永遠のヒーローは?」

と聞かれた。

その日の番組のテーマが “永遠のヒーロー” で、
それについての
聴取者からのハガキやメールを紹介するものだったのだが、
僕は舞台の告知だけして帰るつもりだったので、
自分がそんな質問をされる事を想定しておらず、
いきなり振られても、
すぐ “この人”、って答えられなくて、

 「え?
  ・・・う〜ん、そうですねぇ、永遠のヒーローですかぁ、
  やっぱり、世代的に、特撮ヒーローにはかなり影響受けましたね。
  ウルトラマンとか仮面ライダーとか。
  ホント、大好きでした。
  って言うか、今でも大好きです。ハハハ。
  あ、これ、
  ウルトラマン、って言ってもセブンも含みますし、
  仮面ライダーも、1号や2号だけじゃなくて、X3やアマゾンなんかも含みますよ。  
  ほかには、
  バロム・1とかライオン丸とか。
  それから、キカイダー、イナズマン、ロボット刑事。
  ああ、ヒューマンにも凄く憧れてたなぁ。 知ってます?『突撃!ヒューマン!!』。
  あとは、スペクトルマン、ファイヤーマン、サンダーマスク、白獅子仮面、
  ・・・あ、そうそう、コンドールマンも」

なんて調子でダラダラしゃべってたら、

  「もういいです」

と笑われながら一蹴されて、話が終わってしまった。

別に変なウケを狙ったわけでもなく、
憧れたヒーローは
本当に数え切れないくらい沢山いるので、
咄嗟に思い出せるだけ思い出して答えてみただけなのだけど、
多すぎて絞込みが出来ない故、結局話が膨らまなかったのである。

で、
こういう質問をされた時に、
パッと一人だけ挙げた方が話が展開しやすいのだな、と反省したので、
帰りの車の中で
 “一人に絞るとなると誰だろう?”
と、ちょっと考えてみた。
今度いつ誰にそんな質問をされるかわからないンだけど(笑)。

信号待ちしていた時、「あ、そうだ」と思い出した。
それは “赤影” 。

昭和40年代初頭フジテレビ系列で放送され、
その後も何度となく再放送され、
僕らの世代に愛され続けている特撮テレビ番組『仮面の忍者 赤影』の、
主人公・赤影である。
豊臣秀吉がまだ木下藤吉郎だった頃、
天下平安のために悪者忍者や怪獣たちと戦った、
あの、正義の忍者・赤影である。

ただ単に偶然信号の色を見て思い出したのだけど、
よくよく考えてみると、
赤影こそ僕の永遠のヒーローに違いない、と確信出来た。

なぜかというと、
子供の頃の記憶を辿った際、
おそらく僕が生まれて初めてカッコいいと思った大人であろう、という事から、
その後に憧れたヒーローは全て、
赤影が幼い僕に植えつけてくれた “カッコよさの理念” に基づくものである事に
気づいたからである。

常に冷静沈着。
強くて頼もしく、それでいて品があって優しくて・・・。
赤影は、僕の理想の人間像なのである。

しかも、
ウルトラマンやウルトラセブンのように巨大な宇宙人であったりしないし、
仮面ライダーのように強化改造されたサイボーグであったりもしないので、
赤影のカッコよさには生々しさがある。
何があっても不死身。しかも、完璧なまでに美しい容姿。
そんな現実離れしたキャラクターでありながら、
彼はSFの世界に生きる宇宙人やサイボーグではないのだ。
忍者とは言え、生身の人間なのである。
そこが凄い。
ヒーローであると同時に、
スターとかアイドルとか、そんな感覚でも捉えさせてくれる、
まさに “憧れの人” なのだ。

・・・って、それでもやっぱり架空の存在なンだけど(笑)。

でも、
架空か実在か、なんて関係ない。
特撮ヒーローにしろ、
アーティストやスポーツ選手、あるいは自分の身近にいる先輩にしろ、
僕が憧れの気持ちを抱く人たちは、
必ず、赤影のような魅力をどこかに持ち合わせている。
赤影に似ている人、
赤影のカッコよさ・美しさに通じる人に、
僕は強く惹かれるのである。


というわけで、今回は、
そんな、憧れの人、仮面の忍者・赤影について、述べさせていただく事にする。

『仮面の忍者 赤影』は、めちゃくちゃ面白い番組だった。
しっかりとした戦国時代の設定でありながら、
現代あるいは未来の武器や兵器が当たり前のように出てくるハチャメチャさは、
見ていて、とても胸がときめいたし、
飽きの来ない、スピーディでキレのある物語の展開は、
幼稚園、小学校低学年、小学校高学年、中学生の、
どの年頃に再放送を見た時も、最高に楽しめた。

個性豊な俳優陣が演じるユニークな悪者忍者たちも実に魅力的だったし、
なんといっても、
青年の赤影、そして、少年の青影と初老の白影、
という主役忍者3人のバランスが良く、わかりやすくて感情移入しやすかった。

そういえば、
青影を演じた金子吉延さんのホームページを拝見したら、
白影を演じていた時の牧冬吉さんの年齢は38歳であった事が記されていた。
現在の僕より6つも下。
僕は白影さんより年上になってしまったのだ。・・・信じられん(笑)。

話を戻そう。
そのように、物語も充分面白かったのだが、
主題歌『忍者マーチ』がこれまた優れた名曲で、
イントロが流れ出した瞬間から、
快適なまでにスムーズに、気持ちをお話の世界へ引き込んでくれた。
僕はいつも、オープニングから、ブラウン管に釘付けにされていたのである。

その主題歌『忍者マーチ』の中で、
赤影の目について、

“キラリと光る すずしい目”

と歌われているが、
小学1、2年の頃に、夕方やってた再放送を見ながら、

 「すずしい目、ってどういう意味?」

と母親に聞いた憶えがある。
母親は、巧く答えられない事に少々困りながら、

 「綺麗、って言うかなんて言うか、そんな感じの目」

と教えてくれた。
拙い説明だったけど、
テレビ画面に映った赤影の、
仮面の下から覗く澄んだ瞳を見ながら、なんとなく納得したものである。

そんな素敵な目をした風雅な優男が着けるには、
あの仮面は
かなり思い切ったデザインだったと思うが、
違和感などどこにも無い、むしろ説得力さえ持ったカッコよさだった。
赤影を演じた坂口祐三郎さんの、
なんとも上品で美しい顔立ちに絶妙にマッチする、見事な形だったと思う。

それに、なんと言っても “赤” という色がいい。
忍の者が身に着けるはずのない色、
涼しい目や黒いコスチュームとは正反対のイメージである色、
それが強烈な印象につながり、ヒーローとしてのカッコよさを際立たせていたのだ。

思えば、
仮面ライダー2号がモスキラスを追って南米から帰ってきた時、
手袋の色やブーツの色が赤に変わっていたのを見て、
シビれるくらいカッコいいと思ったけど、
あれは、“赤影” が僕に植え付けてくれたインパクトの再来だったのである。


“赤” という色は、凄いパワーを持っている。
『ウルトラマン』が当たって、円谷プロが次の番組を考えていた時、
赤い色をしたヒーローの方が子供の気を惹くから・・・、
という玩具メーカーの意向もあって、
新しいウルトラマン、つまりウルトラセブンは赤い姿になった、
と言われている。
キャラクターの人気、延いてはオモチャの売上にも、
“赤” という色は多大な影響を及ぼすのである。

“赤” は人間の心拍を上げる効果を持った興奮色。
人目を引くし、エネルギッシュで情熱的で、強い生命力も感じる。
我が国日本では祝い事や魔除けにも用いられる、明るく強い色なのだ。
主役のヒーローには持ってこいの色なのである。

そんな理由からか、
赤い姿をした特撮ヒーローは実に多い。
ウルトラセブンに始まり、
ウルトラマンタロウ、ウルトラマンレオ、
レッドマン、ゴッドマン、アイアインキング、ファイヤーマン、
レッドバロン、マッハバロン、カゲスター、ズバット、メガロマン・・・etc.
30年以上の歴史を誇る戦隊シリーズに至っては、
主人公のリーダーは、
常に、アカレンジャーだの何某レッドだのといった、赤いヒーローである。
特撮ヒーローと言えば “赤”、というイメージは
もはや常識として定着しているのだ。

元を辿れば、
その源は、間違いなく “赤影” である。
“赤” という色の持つ力を効果的に取り入れ、
カッコよさを美しさで更に引き立てる事に成功したため、
ヒーローには “赤” が似合うという、
現在では当たり前の事を、人々に深く浸透させたのである。


さて、
例によってソフビだが、
本来であれば、そんな永遠のヒーロー “赤影” の人形を紹介したいところなのだが、
以前にもぼやいた事があるように、
『仮面の忍者 赤影』関連のソフビ人形は、
誠に残念な事に当時は一切発売されていないようである。
よって、当然の事ながら僕のコレクションには、赤影のソフビは無い。
なので今回は、
赤影の代わりに、と言っては失礼かもしれないが、
先ほど述べた “赤い姿をした特撮ヒーロー” のソフビを、いくつか紹介させてもらう事にする。
赤影の “赤” に敬意を表して。



レッドマン
昭和47年、
日本テレビ系列の『おはよう!こどもショー』の中の
ミニコーナーとして、
毎朝放送された『レッドマン』の主人公。

『レッドマン』は、
5分間くらいのミニドラマで、
敵役として主にウルトラ怪獣が登場する事と、
毎回 “怪獣おじさん” なる人が
コーナーの始めと終わりに解説をしていた事、
そして、
 ♪赤い赤いあいつ〜 レッドマ〜ン、
という子門真人さんが歌う主題歌が印象的で、
記憶に残っている。
毎朝ヒーローと怪獣のバトルを見てから学校に行く、
という楽しい日課を提供してくれた、
ありがたい作品だった。

  だが、
  10年程前に友人がLDを購入したので懐かしさに惹かれて見せてもらったら、
  そのあまりにシュールな内容に唖然としてしまった。
  レッドマンと怪獣の格闘がひたすら描かれていただけの作品、という事は認識していたが、
  大人になってから改めて見ると、
  思わず全身が固まってしまうほどの衝撃があったのだ。
  山道や田舎のあぜ道みたいな所を歩いてきたレッドマンが、
  そこにたまたま居合わせた怪獣たちを、訳も無く片っ端から叩きのめすだけだからである。

  登場する怪獣たちは
  何も悪い事をしていない(人を襲ったり街で暴れたりしている場面が一切無いため)のに、
  怪獣というだけでボコボコにされて息絶えてしまう。
  むごい。
  むごすぎるのだ。
  レッドマンがカネゴンに、
  レッドアロー(手槍のような武器)を突き刺した時は、マジでドン引きした(笑)。

  それでも、
  アトラクションショーなどで使いまわされた、
  くたびれて劣化したウルトラ怪獣の着ぐるみが流用されているので、
  あの、『ウルトラファイト』を彷彿とさせてくれる、個人的には感慨深い映像ではあった。
  世代じゃない人には、チープな駄作にしか映らないだろうが(笑)。

写真の人形は、ブルマァク製。
全長約30センチと約28センチ。
微妙にサイズが違うだけのように見えるが、
向かって左側の人形は
マスク着脱タイプで、
右側は
マスク着脱タイプではないノーマルな人形。

手にしているのは、
先述したレッドアローと並ぶ、
レッドマンの必殺武器レッドナイフ。
付属品として
人形と一緒に袋に入っていた。
  サイズの違う人形の付属品なのだから、
  当たり前と言えば当たり前なのだが、
  レッドナイフのサイズも、微妙に違う。
  なんか嬉しい。

  洗練された美しさを誇るフォルムや、
  手袋やブーツにシワや縫い目を再現している気配りは、
  そつの無い綺麗な造形を保ちながら
  実物の着ぐるみに似せようとするブルマァク独自のセンスであり、
  完成度の高い素晴らしい人形だと思うが、
  レッドマンは、
  訳も無く完膚無きまでに怪獣をぶちのめす猛者だけに、
  こんな優等生のような造形よりも、
  マルサンの血湧き肉躍るような豪快な造形や、
  マスダヤの無神経で粗雑な野暮ったい造形の方が似合う気がする。

  マルサンやマスダヤのレッドマン人形、見てみたかったなぁ。



ゴッドマン
その『レッドマン』の後番組として、
同じく『おはよう!こどもショー』の中で毎朝放送された、
約5分間のミニドラマ『行け!ゴッドマン』の主人公。

『レッドマン』と異なり、
若干のストーリー(冒頭に子供が怪獣に襲われる程度の)があった、
と記憶している。
 
「理由も無いのに怪獣を殺すな」
というクレームでも来たのだろうか(笑)。

  髪の毛があるせいか、
  実物のゴッドマンには、
  いささか暑苦しいイメージがあったが、
  人形の方は、
  その整った造形から、
  なんとも涼し気な印象を受ける。
  こういうところが、
  アンティークソフビの面白さである。

写真の人形は、ブルマァク製。
全長約32センチと約29センチ。
これも、
向かって左側の人形は
マスク着脱タイプで、
右側は
マスク着脱タイプではないノーマルな人形。




アイアンキング
昭和47年の秋から
TBS系列で放送された、『アイアンキング』の主人公。

企画段階では、
アイアン(鉄)のイメージそのままに、
全身銀色のヒーローだったが、
ウルトラセブン同様に、
子供には赤い姿の方がウケるから、という理由で
このカラーリングに変更された、との事。

アイアンキングをデザインした池谷仙克さんは、
銀色から赤に変更された事で「やる気をなくした」と
当時を振り返っていらっしゃるが、
僕ら子供には、
赤い色でも充分に鉄のイメージは伝わっていたし、
むしろ赤い色だったからこそ、
際立つ存在感もあったのではないかと思う。

  人形はバンダイ製で、全長約28センチ。
  この、なんとなく締まりの無い、よれた体つきが、
  枯れかけてしおれた花のようで、水を与えてあげたくなってしまう。
  ちょうどアイアンキングも、水をエネルギー源にしており、
  この人形は、激しい戦闘でエネルギーを消耗した姿、と解釈出来なくも無い。
  やっぱり水を与えてあげた方が良いかな(笑)。

物語の主役は、
石橋正次さん演じる、
ニヒルでカッコいい静弦太郎と、
浜田光男さん演じる、
おっちょこちょいな道化者・霧島五郎の二人なのだが、
ヒーロー・アイアンキングに変身するのは、
二枚目の弦太郎ではなく、
三枚目の五郎の方であった。
その意外な設定が、
物語を面白くしていた最大の要因であろう。
いかにも佐々木守さん(設定および全話の脚本を担当)らしい、
ウイットに富んだ巧妙な作品であったと思う。




ファイヤーマン
昭和48年、円谷プロが創立10周年を記念して
世に放った空想特撮ドラマ『ファイヤーマン』の主人公。

ファイヤーマンは地底人で、
高熱なマグマを、
あるいは、
その名の通りファイヤー(炎)をイメージした、
正真正銘の赤いヒーローである。

番組自体は、
作品世界にリアリティを追求したため
なんとなく地味なイメージになってしまっているが、
それがかえって主人公の真っ赤な勇姿を引き立てた感がある。
また、
ファイヤーマンに変身する岬大介を演じた誠直也さんの、
その誠実で真っ直ぐな演技は、
少年時代の僕の記憶に好印象を残している。
大好きなヒーローだった。

  人形はバンダイ製で、全長約28センチ。
  ファイヤーマンの特徴である、大きな目とスリムなボディがきちんと再現されていて、
  リアルな造形を良しとする現在の風潮の中でも充分に通用しそうな、
  カッコいい人形だ。

余談だが、
当時、『パパと呼ばないで』か『雑居時代』か
どちらのドラマか忘れてしまったけど、
劇中で
石立鉄男さんと杉田かおるさんが
一緒にテレビを見ているシーンがあって、
それが『ファイヤーマン』だったので、
妙に嬉しかった事を憶えている。




そして最後は、
やはりウルトラセブン・・・じゃなくてウルトラマン?

これは、
ブルマァクの
スタンダードサイズ(全長約22センチ)のウルトラマン人形。

通常のタイプは、
実物のウルトラマンに倣って
下の写真の向かって左側のようなカラーリングだが、
何を血迷ったか、
色を反転させて、真っ赤な姿にしてしまった珍商品。

いくら子供が赤い姿のヒーローに惹かれるからといって、
ウルトラマンを赤にしてはいけません(笑)。

ブルマァクというメーカーの
“なんでもいいからやってしまえ” 気質が味わえる、
興味深いアイテムではあるが、
どう見てもカッコ悪いし、気色悪い。

マニアの間では、
“酔っぱらったウルトラマン” などと呼ばれているが、
酔っぱらっていたのは、ウルトラマンではなく、
ブルマァクというメーカーだった事は言うまでも無い(笑)。

  しかも、この酔っぱらったウルトラマン、
  当時の製造数が少なかったのか現在なかなか市場に出ず、
  出たとしても、希少価値が付いていて、
  びっくりするほど高価。
  手に入れなければならない我々コレクターには、まったくもって迷惑な話である(笑)。



先日、『エグザイル/絆』という香港映画を観てきた。
裏社会に生きる男たちの友情を描いたアクション映画で、
説明じみた科白など一切無い(たとえば、登場する男たちの関係を古い1枚の写真で解らせる)、
ダンディズムと言うか、男の美学と言うか、
そういったものが貫かれた、非常にシビれる作品だった。
特に、
スローモーションで描かれた銃撃戦のシーンは、
カッコよさの中に美しさを兼ね備えた実に素晴らしい映像で、感服した。
この原稿を書き始めた頃だったので、
ああ、まさに “赤” という色の魅力はこういう事だ、と身にしみて感じた。
“赤” は、
男のロマンが薫る、カッコよくて美しい色なのだ。

情熱の色。生命の色。
強くて明るくて、温かくて、憧れのヒーローが光り輝く色。

幼い頃に赤影が植えつけてくれた “カッコよさの理念” は、
“赤” という色に表象されて、
僕の感受性や価値観に、多大な影響を与えてくれているのだ。




そういえば、小学生の頃、
運動会で赤組になると妙に嬉しかったし、
白組になった時は、なんとなく最初から負けてる感じだった。
あれは、
赤影やその後の赤い姿をした特撮ヒーローの影響で、
“赤” という色がカッコよく思えて、強い気がしたからだ。
今、気づいた(笑)。


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