真水稔生の『ソフビ大好き!』


第97回 「雪やこんこ ソフビやこんこ」 2012.2

日本は四季があるから素晴らしい、と言いますが、
冬は要らない今日この頃です(笑)。

僕は冬が大嫌い。
以前にも述べた事がありますが、
生理的に夏が大好きなので、
それとは正反対な、冷たく寒い季節・冬は、
必然的に大嫌いとなります。
人生の天敵とすら、感じています。

でもこれは、なにも特別変わった事ではありません。
人間ならば当然だと思います。
だって、そうでしょう。
どうして春が喜ばしいイメージかと言うと、
それは、暗くて辛い冬が終わって、もうすぐ明るく楽しい夏がやってくるからだし、
どうして秋が淋しいイメージかと言うと、
それは、明るく楽しい夏が終わって、もうすぐ暗くて辛い冬がやってくるからです。
冬を嫌うのは、極めて正常な感覚です。

そもそも、
“冬の時代” とか “冬枯れ” とか、
人間にとって苦しい事や悪い事に例えられるのが、冬。
心がやさしくない人は、「冷たい人」と言われるし、
お笑い芸人が、
自分の話がスベったりギャグがウケなかったりした時は、その状況を「寒い」と表現します。
冷たく寒い冬がみんな嫌だから、そうなるのです。

だから、
やっぱり冬なんて季節は要らなくて、
秋が終わったらすぐ春になった方が、断然、気分良く健やかに暮らせようというものです。

なのに、なぜ、
四季が素晴らしいと言われるのか。
どうして、暗くて辛くて大嫌いな冬を、春や夏や秋と並べて讃えるのか。
それは、
冬には “雪” が降るからだと、僕は思います。
雪の持つ情緒・風情といったものが、
人々の心を豊かにし、冬自体の印象を深みのある甘美なものにしているのではないでしょうか。

現実的な話をすれば、
降雪量が多ければ様々な被害が発生するし、
人間にとっては迷惑な、やはり敵視すべき存在なのでしょうけれども、
雪はロマンチックで美しくて、
その神秘性には、
過ごしにくい・生活しづらい、という冬の難点を忘れさせてくれる、魔法の力があります。

今月はじめ、
強い寒気が流れ込んだ影響で列島各地が大雪に見舞われ、
ここ名古屋でも雪が積もりました。
真っ白な雪に覆われた窓の外の景色を眺めながら、
ふと、そんな事を考え、

 そうだ、今月の『ソフビ大好き!』は “雪と怪獣” で行こう!

と思いつきました。

恐い面もあるけれど、
人間の心を豊かにし、風雅な気分に酔わせてくれる “雪” は、
夢の生き物には、ピッタリなモチーフ。
ゆえに、
映画やテレビの中で怪獣になるよりずっと以前から、
“雪男” や “雪女” なるものの存在が、
各地で語り継がれてきました。
面白いのは、
同じ “雪” にまつわるモンスターでも、
“雪男” は、怪力自慢の野性味溢れる怪獣・怪人、
“雪女” は、魔力を秘めた色香が漂う妖怪・鬼神、と
イメージが男と女で分かれるところ。
人間が空想する夢の生き物ならでは、の特徴と言えるでしょう。 
 


ウルトラ怪獣やライダー怪人の中にも、
そんな雪男や雪女をベースに生み出されたものが、たくさんいます。
代表的なものをピックアップしていきましょう。


まずは、ギガス
『ウルトラマン』第25話「怪彗星ツィフォン」に登場した冷凍怪獣です。

 
 ブルマァク製 スタンダードサイズ、
 全長約21センチ。
     
 ブルマァク製 ミニサイズ、
 全長約9センチ。


 
 ポピー製 キングザウルスシリーズ、全長約16センチ。 向かって右端の人形は試作品。


ギガスは、
日本アルプスに出現した、まさに雪男を巨大化させたようなキャラクターであり、
なかなか魅力的な怪獣だと思うのですが、
人気ナンバーワン怪獣・レッドキングとの共演だったり、
ウルトラマンと戦う前に科特隊によって倒されちゃったりしたせいで、
怪力であるという設定どおりの特長があまり浸透せず、
子供たちの心に特に爪あとを残す事も無く、メジャー怪獣になり損ねた感があります。

ソフビの方は、
ブルマァクのスタンダードサイズもポピーのキングザウルスシリーズも
どちらもこのように素晴らしい造形をしていて、
実物の怪獣よりもオモチャの方が評価が高い、という、
ソフビファンにとっては誇らしい人形となっていますが、
そこでも、メジャー怪獣になり損ねた怪獣ゆえの皮肉な運命を、感じずにはいられません(笑)。

           



続きましては、スノーマン
1号と2号のダブルライダーと、初めて戦ったショッカー怪人です。

  ポピー製、全長約11センチ。 


スノーマンは、
死神博士がショッカー日本支部の2代目大幹部に着任の際、
スイス支部から連れてきた怪人で、
名前を日本語に訳すと、そのものズバリ “雪男”。
それもそのはず、
ヒマラヤの雪男を改造して作り上げられた、との事。
未確認生物の存在を
迷わず肯定したところから始まっている設定が、気持ち良いですね(笑)。

全身を覆う白い毛や、胸部の雪焼けを思わせる黒い肌は、
画面を通して獣の臭いがしてきそうなくらい説得力があったし、
また、
それとは対照的な、
目も鼻も口も無く何か機械の装置のように見える顔面が、とても不気味でした。
そんな、
生々しさとメカニック性とのギャップが、
強烈な恐怖の印象を与えると同時に、
今までの怪人を明らかに上回る強敵ぶりを、見事にアピールしていました。

そもそも、
なんたって雪男の改造人間なんですから、
それまでの、
クモだとかモグラだとかサボテンだとかの改造人間よりは、そりゃ圧倒的に強いだろう、と
子供心に最初から納得もしてましたし・・・。

なので、
今改めて思い起こしてみても、
『仮面ライダー』に登場したすべての怪人の中で、
1号ライダーと2号ライダーのダブルキックで倒される死に様が
最もよく似合う怪人だった気がして、
こんな小さな人形を見ているだけでも興奮してきます。




次は、再び『ウルトラマン』に戻ります。
伝説怪獣ウーであります。

  バンダイ製 ウルトラ怪獣シリーズ、全長約16センチ。

発売は、平成14年。
意外にも、
放映当時から今日まで通して、これが唯一のソフビ化。


ウーが登場した『ウルトラマン』第30話「まぼろしの雪山」は、
子供心に、
なんともやりきれない哀しいお話で、心に残っています。

行き倒れになった母娘の
娘の方だけが生き残って村で暮らしていたのですが、
なぜか、
雪山に伝わるウーという怪獣が
死んだ母親の生まれ変わりだと言われており、
村人たちは、
その娘の事を、やれ「雪女の子供だ」やれ「雪ん子だ」、と嫌悪していました。

そして、
あまりにその娘が受ける迫害が酷い事に怒ったかのごとく、ついにウーが出現するのですが、
ウルトラマンと格闘の末、
最後は幻のようにスーッと姿が消えてしまいます。

           

その正体は最後まで不明でしたが、
本当に
その娘が雪女の娘・雪ん子で、ウーがその母親の生まれ変わりだとしたら、
雪男を思わせる容姿でありながら、ウーは実は雪女。
野ざらし感あふれる白い体毛も、
女性のしなやかな髪のように思えてきます。
雪女も
我が子のためなら雪男にも巨大な怪獣にもなる、という事でしょうか・・・。

母親の愛の強さを感じるのと同時に、
素直にウルトラマンを応援出来ない回でもありました。

      雪ん子ではありません(笑)。友人の娘さんです。

でも、
こんな光景を見ると、
いまだに僕は、
近くにウーがいるような気がして、
ゾクッとしながらも胸がときめきます。



最後はこいつ、スノーゴン

  ブルマァク製 全長約22センチ。 


スノーゴンは『帰ってきたウルトラマン』に登場した怪獣で、
その名もズバリ、雪女怪獣。
雪女に化けて人々を惑わせるのですが、
その正体は、
人間を奴隷にするため母性へ連れ去る、恐怖の宇宙人・ブラック星人の手下。

ウーには、
“母親の愛の強さ” という、
雪女(女性のモンスター)が怪獣(男性的なモンスター)である事の理由がありましたが、
このスノーゴンにはそれがなく、
雪女と怪獣の結びつきが強引で、今ひとつ説得力に欠けます。
こんな怪獣然とした姿で “雪女” と言われても、どうもピンと来ないのです。

   






 
 ・・・あ、でも、
凍らせた帰りマンの手足を
ばらばらに引き千切ったあの冷血な行為に、
“女性” を感じなくもないなぁ(笑)。

そう考えて改めてソフビを見ると、
ブルマァクならではのこの美しいフォルムが、
女性の肢体のたおやかさに通じているような気がしないでも・・・。

・・・いかん、惑わされてる。
なるほど、
やっぱ雪女の怪獣だ(笑)。


  ・・・それにしても、
こんな状態から
元の姿に戻る事が出来るなんて、
ウルトラマン、って、やっぱ凄いな(笑)。




“雪と怪獣”、いかがでしたでしょうか?

雪の神秘的な魅力から、怪獣たちに思いを馳せると、
なんだか心がほっこりしてきませんか?
たとえば『笠地蔵』のような、雪にまつわる民話を読んだ後と、同じ感覚ですね。
こうやって、
ソフビ怪獣人形を愛でながら夢や空想を楽しむのが、
僕にとって、
暗くて辛い冬を元気に乗り切る、ひとつの方法でもあります。


・・・とは言うものの、
毎日毎日、本当に寒い。
年齢のせいもあり、弱ってきた体に、この厳しい寒さは応えます。
“死” を感じたりもします。
たぶん、
僕は冬に死ぬような気がするのです。
なんたって、
冬が人生の天敵ですから。

そのうち、
仕事も一切来なくなり、体力だけでなく気力さえも萎えてアルバイトにも行けず、
料金滞納によりガスも電気も止められて、
凍えながら孤独死・・・、といったところでしょうか(苦笑)。
それも、そんなに遠くない気がするなぁ。


・・・あ、いやいや、
寒さに負けて、そんな弱気になっていてはいかん。
僕はまだ、
くたばるわけにはいかないのだ。
なんたって、
欲しいソフビが、まだまだいっぱいあるのですから。

雪が、
 ♪降っても降ってもまだ降りやまぬ
なら、
ソフビは、
 ♪買っても買ってもまだ欲やまぬ
です。

コレクション充実のため、意地でも生き延びなきゃ。
頑張るぞ!




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