真水稔生の『ソフビ大好き!』


第192回 「あの人、カッコいい?」  2020.1

先ほど、
風呂上がりに休憩コーナーでいちご牛乳を飲んでい・・・あ、実は、
昨年のクリスマスに
自宅のお風呂の給湯器がぶっ壊れまして、
現在、僕は、スーパー銭湯に通っているンです、ハイ。

・・・そうですね、
では、まず、その給湯器の話を、先にさせていただきましょう。

急にお湯が出なくなっちゃったンです。
何度やっても水しか出てこないので、慌てて業者さんを呼んで見てもらったら、
「もう、寿命です」との事。

 ガーン!

ショックでした。
でも、考えたら20年も使ってましたので、
これはもう仕方がないと諦め、
新しい給湯器に買い替える事にしました。

以前、
第119回「SOMEDAY ~今は寒(さむ)DAY、でもいつか・・・~』の中で、
壊れているエアコンや台所の給湯器を、
修理も買い替えもせず、

 そんな金があるならソフビを買う、

という理由で放置している事を述べましたが、
さすがに、
お風呂の給湯器となると、そうはいきません。
いくら暖冬とはいえ、水風呂に入って暮らすわけにいきませんからね(苦笑)。

ただ、
例によって “食えない役者稼業” ゆえのカツカツ貧乏生活を送っている僕には、
風呂の給湯器を買い替える、
なんていうそんな大きな買い物、分割払いでなければ不可能。
なので、
その業者さんが用意してくれた必要書類に諸々記入・捺印し、ローンを申し込みました。

そしたら、なんと、

 固定電話を持っていない、

という理由で、審査に落ちてしまったンです。

ガーン!

再びショックでした・・・というより、腹が立ちました。
だって、
固定電話、て・・・。

いつの時代の基準で審査しとるンだ、って話じゃないですか、そんなの。

携帯電話がこれだけ普及した現代、
独り暮らしの家なら、
自宅に電話を引いていない人間なんて、いくらでもいるでしょう。

いくら僕が昭和のソフビや歌謡曲が好きだからといって、
ローンの審査まで昭和の感覚でやられては、たまりませんよ、まったく。
時代は令和ですよ、令和。
昭和じゃないどころか、もう、平成ですらないンですから。
時代遅れにも程があります(怒)。

まぁ、でも、
そもそも一括払いが出来ない僕自身に問題があるわけですから、要は “身から出た錆”。
文句を言ったところで始まりません。

 お金が無い、というのは、不便で惨めだなぁ・・・、

という当たり前の事を改めて実感し、買い替えを断念した次第です。

そういえば、
前回、
母親がゴロザウルスのソフビをプレゼントしてくれた、
幼い日のクリスマスの思い出を綴りましたが(第191回「メリー、ゴロザウルス!」参照)、
まさか半世紀後のクリスマスに
その可愛い我が子が
壊れた給湯器を買い替える事も出来ない大人になっている、なんて
母親は夢にも思ってなかったでしょうから、
お湯が一切出なくなった家で、独り寒さに震えている僕を見て、
情けなくて哀しくて、
きっとあの世で泣いているに違いありません。
不憫だなぁ・・・(苦笑)。

お母さん、ごめんねーっ!


・・・と、まぁ、そんなわけで、スーパー銭湯通いの日々なのであります。

で、冒頭の話(本題)に戻りますが、
風呂上がりに
浴場の外にある休憩コーナーでいちご牛乳を飲んでいたら、
その時、ふと、
やや後方右下の方から、何やら視線を感じたンです。

見ると、
4、5歳の男の子が、ジーッって僕を見つめていました。

いちご牛乳が欲しいのかな? と思い、

 「飲む?」

って笑顔で話しかけたら、
急に表情を強張らせて、近くにいたママのところへ走って逃げていってしまいました。

いちご牛乳を奢ってあげようとしただけなのに、
誘拐しようとしたとでも思われたらたまったモンじゃないので、
早々に立ち去ろうとしたのですが、
その時、男の子がママに、

 「あの人、カッコいい?」

って聞いたンですよね。

 ん?

ってなりました。

幼い感性に僕の何が引っ掛かったのか、
どうやら、男の子は、
いちご牛乳ではなく、この僕に、興味があったようなのです。

“いちご牛乳を飲んでるヒゲ面のオッサン” というのが物珍しかったのでしょうか?

・・・あ、いやいや、
そんな事よりも、
その男の子のママがどう答えるか、です。
チラッと見たら、30歳くらいのきれいな女性でしたので、
とても気になりました。

ただ、
すでにもう歩きかけていたので、そこで立ち止まるのは不自然。
わざとらしくならない程度にゆっくり歩きながら耳をそばだてましたが、
結局、答えは聞けぬまま、
後ろ髪引かれる思いで(笑)立ち去りました。

でも、そのまま歩きながらよく考えたら、

 「そうね、カッコいいわね」

なんて言うはずがないし、
それ以前に、
そのママにとっては、超が付くほどどーでもいい事でしょうから、
にもかかわらず気にして
嬉しい言葉を期待している自意識過剰な自身のしょうもない神経に、

 バカか、僕は・・・、

と失笑してしまいました。

そして、すぐ、

 そもそも、
 「あの人、カッコいい?」なんて、あの子がママに聞くからいけないンだ。
 
 何なんだ、「あの人、カッコいい?」って・・・。
 
 聞くな!
 ちゃんと「あの人、カッコいい」って言い切れ!
 そうすれば僕は
 自分のしょうもない神経を思い知る事も無く、気分よく風呂上がりを過ごせたのに・・・、

と、心の中で男の子を責めました(・・・とことん、しょうもない神経しとるなぁ(苦笑))。

そこで、ふと、

 あれ? そういえば・・・、

と、自分の子供の頃の事を思い出したンです。

あれは小学2年の時、

 「あの人、カッコいい?」

って聞いた事があるンですよね、僕も。

お風呂屋さんでママに、ではなく、
教室で隣の席の女の子に、ではありましたが・・・。

その “あの人” とは、
当時、『アイアンキング』で、
アイアンキングに変身する霧島五郎を演じていらっしゃった浜田光夫さんの事です。

ここ名古屋では、
『アイアンキング』は『仮面ライダー』の裏番組でしたので、
ライダー崇拝者の僕は
『アイアンキング』をまったく観ていなかったのですが、
その女の子は、
逆に、断然『アイアンキング』派で、毎週観ていたのはもちろんの事、

「カッコいい」、「カッコいい」

って、頻りに言っていて、
僕はそれがずっと気になっていました。

というのも、
『仮面ライダー』は、当時、新1号期、
つまり、
藤岡弘さん演じる本郷猛が超絶にカッコいい時期でしたので、
女の子が、
その超絶にカッコいい本郷猛が変身する『仮面ライダー』を観ずに、
裏番組の『アイアンキング』を観て「カッコいい」「カッコいい」と称賛する、という事は、

 いったい、どんだけカッコいい人がアインキングに変身するンだろう・・・?
 本郷猛よりもカッコいい人がこの世にいるのか?

って思っていたからなのです。

それで、或る時、
児童雑誌か何かでアイアンキングに関する記事を見つけた際、
興味津々で
そこに載ってた霧島五郎の写真を見たら、
それが、
どこにでもいるような、ただの “メガネをかけたオッサン” だったので、

 はぁ?
 なに、これ・・・。
 全然カッコよくないじゃん・・・、

って、子供心にびっくり仰天したンです。

・・・なんか、
浜田光夫さんに失礼なので(汗)、
もう少し詳しく説明させていただきますと、
浜田さん演じる霧島五郎も決してカッコ悪くはないンですけど、
従来のヒーローに変身する人のイメージには無かった、
三枚目的なキャラクターであったためか、
そこに載ってた写真は、鋭い表情や勇ましいポーズをしたものではなかったンですよね。
そして何より、
比較対象が新1号期の本郷猛ですから、
それは、もう、
話にならない、と言いますか、
次元が違う、と言いますか・・・(やっぱり浜田光夫さんに失礼だな(苦笑))、

 『仮面ライダー』を観ないで『アイアンキング』を観る 
            = 本郷猛よりも霧島五郎をカッコいいと思っている、

という、
隣の席の女の子の感覚が、まったく理解出来なかったンですよね。
信じられない思いでした。

それで翌日、たまらず、

 「あの人、カッコいい?」

って聞いちゃったわけです。

そしたら、

 「違うっ! 霧島五郎じゃなくて、静弦太郎がカッコいいの!」

って切れ気味な口調の回答が返ってきて、事情が飲み込めました。

静弦太郎とは、
石橋正次さん(当時のアイドル俳優)が
『アイアンキング』の中で演じる国家警備機構の特務隊員で、
物語の主人公でもあったのですが、
番組をまったく観た事が無かった僕は、

 アイアンキングに変身するのは霧島五郎だけど、
 最後に怪獣を倒すカッコいい主役は、静弦太郎である、

っていう番組の内容(特徴)を知りませんでしたので、
その女の子が石橋正次さんに「カッコいい」「カッコいい」とシビれていたのを、
勝手に、
霧島五郎を本郷猛よりもカッコいいと思っている、と勘違いして、首を傾げていたわけです。

当時の石橋正次さんは女の子に凄い人気でしたからね。
納得、って感じでした。

ただ、
ライダー崇拝者の僕としては、

 それでも本郷猛の方がカッコいいじゃないか!

って思いましたけどね(笑)。


・・・と、まぁ、
こんな、なんてことない出来事なのですが、
「あの人、カッコいい?」っていうのがキーワードとなり、
僕の脳裏に、突然、
大切な思い出のように、懐かしく甦った次第であります。


・・・そういえば、
アイアンキングのエネルギー源は水分であるがゆえ、
闘いの後には、霧島五郎は水やジュースをガブ飲みしてましたけど、

 風呂上がりにいちご牛乳をゴクゴク飲んでいた僕の姿も
 あんな感じだったかなぁ・・・、

なんて思って、

 「あの人、カッコいい?」

っていう言葉に、何か運命的なものを感じる僕でした(笑)。

・・・まぁ、
あくまでも “役”として、三枚目を演じていた浜田光夫さんと、
壊れた自宅の給湯器を買い替える事も出来ない、
この、マジでカッコいいわけがない大人を、
一緒にしてはいけないかもしれませんが・・・(苦笑)。


・・・そうだ、
やっぱり、「あの人、カッコいい?」っていう質問に対するママの答え、
聞いておけばよかったな。
だって、

 ♪ショック!(お風呂の給湯器が壊れた事に)
 ♪ショック!(ローンの審査に落ちた事に)
 ♪アイアンショック!(若くてきれいな女性に「カッコ悪い」って言われた事に)

って、
『アイアンキング』の主題歌に乗せて、きれいに “オチ” が付いたでしょうから(笑)。

アイアンキング 
バンダイ製、全長約29センチ。

以前、第59回「赤」の中でも紹介したソフビです。

マスク着脱タイプの人形ゆえ、
頭でっかちになって、全体のバランスが変ですし、
なんとなくヨレッとしていて、
今ひとつ締まらないこの見た目が
いかにも霧島五郎、って感じで気に入っています。

 「このヒーロー、カッコいい?」

って隣の誰かに聞きたくなるし(笑)、
エネルギー切れでこうなってるのだとしたら、

 「いちご牛乳、飲む?」

って人形本人に聞きたくなります(笑)。 
     

 この3体は、タカトク製で全長約24センチ。
   
ノーマルな彩色のタイプと
クリア成形のタイプが発売されていた模様で、
クリア成形のタイプの方は、このような塗装色違いで2種確認。 
 
この仕様は、言うまでもなく、
当時の爆発的ヒット商品であるタカラの変身サイボーグの影響ですね。

 全身を透明にして内部のメカが見えるようにすれば、子供は喜ぶ、

って解釈のもと、
タカラ以外のメーカーも、こぞってこういうタイプの人形を作っていました。

以前、第146回「涙のソフビ」の中で、
その “変身サイボーグ仕様” になったウルトラの父人形(ブルマァク製)を
紹介しましたが、
キャラクターの設定や魅力を無視した、あんな素っ頓狂な商品とは違い、
こちらアイアインキングは
なんたってサイボーグですから、
一応、この仕様で人形になっていても、理には適っています(笑)。

上半身の内部には短冊状に切られたメタリックカラーの紙、
下半身の内部にはモールが、
それぞれ入れられており、
廉価版のミニサイズ人形ゆえの低予算の中、
少しでも本家・変身サイボーグに近い雰囲気を出そうとしている、
メーカーの涙ぐましい努力と工夫が感じられます・・・
って、ちょっとオーバーかな(笑)。

でも、
こういう、
インチキくささの中にも温かみのある “いかにも昭和の玩具” って感じが、
僕は大好き。
子供の頃以上に、良さが解って愛しく思えるので、
癒されますからね、気持ちが。
それに、
塗装色の違いに合わせて、
内部の紙とモールも、それぞれ違う色のものが入っていて、
“コレクター心” もくすぐられます。
 


また、タカトクは、敵キャラもソフビ化してくれていました。
下記のように、不知火一族の破壊工作用巨大ロボットを2種確認。 
      ダブルサタン
全長約15センチ。
 
      デビルタイガー
全長約14センチ。
 
      ともに、
過度なデフォルメは控え、
実物のカッコよさがストレートに表現されています。

個人的には、
デビルタイガーの、
まるで中華鍋でも仕込んでいるかのように丸く膨らんだ、
胸部から腹部にかけての造形が好きなので、
そこもちゃんと再現してあるのが、嬉しいです。


 この調子で、
 モンスターゾロやシルバーライダー、ゴールドファイアー辺りも
 ソフビ化してくれてたらなぁ・・・、

って思いますね。
この2種のみ、とは、ちょっと残念です。


・・・まぁ、
当時、リアルタイムで番組を観ていなかった僕に、
そんな事を言う資格は無いかもしれませんが・・・(笑)。
 
 



ソフビ同士を闘わせた後、
最後は、
自分が静弦太郎になった気分で、
短い紐か何かを
アイアンベルト(劇中、静弦太郎が使用する武器)に見立てて
敵キャラソフビにぶち当てて倒す・・・、
こんな夢見る遊びを、
当時、僕が
番組をちゃんと観てて
これらのソフビも持っていたら、絶対やってただろうな・・・。

 

・・・というわけで、
お風呂の話からアイアンキングの登場、となった、

 ♪霧の中から~ 
 ならぬ、
 ♪湯気の中から~ アイアンキング~~~

の巻でした(笑)。 

今年も『ソフビ大好き!』をどうぞよろしくお願いします。



             前回へ             目次へ             次回へ