真水稔生の『ソフビ大好き!』


第188回 「海辺の愚者は夢を見る」 2019.9

前回(第187回「ソフビ怪人散歩」)、名古屋市港区にある稲永公園で
海をバックにコレクションの写真を撮っていた際、

 あぁ、そういえば、この海、ガメラとギャオスが闘った海なンだなぁ・・・、

って、ふと気づき、胸がときめきました。

昭和42年公開の映画『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』で、

 中日球場の上空におけるギャオスとの激しい空中戦の後、
 海に落とされたガメラが
 ギャオスの足をくわえて海中へ引きずり込こもうとするも、
 ギャオスは
 口から発射する超音波メスで自らの足(片足首)を切断して空へ逃げ去る、

という、
あの、怪獣映画史に残る名場面の事です。

 ここからなら、あのバトル、“生” で観られたのかなぁ・・・、

とか、

 ギャオスの切り離された片足首が翌朝流れ着いていた場所は、どの辺りかなぁ・・・、

とか、
そんなふうに色々と妄想しながら物語の世界の中に思いを馳せて、
数分、名古屋の海を眺めてました。

 手にはショッカー怪人のソフビ人形を握り締め、
 頭の中ではガメラとギャオスの事を思い出しながら、
 海辺にボーッと佇む55歳・・・、

我ながら、

 なんて幸せな大人になったのだろう・・・、

って思います(笑)。

近くで釣りをしていたおじさんが
そんな僕を不思議そうにチラチラ見ていましたが、
あのおじさんが
もしもポール・マッカートニーだったら、
『THE FOOL ON THE HILL』ならぬ、
『THE FOOL ON THE SEASIDE』っていう曲を書いたかもしれません(笑)。



それにしても
ギャオスは魅力的な怪獣ですね。

夜行性で、
人間を喰うわ、超音波メスでなんでも切り裂くわ、
その恐ろしさは、
まさに “ザ・悪者怪獣”。

でも、
それを生々しく表現するのではなく、
凶暴性はバイタリティーとして描かれ、
本来なら身の毛もよだつはずの “恐怖” が、
“強敵” というイメージに、巧みに加工されて映像化されているので、
映画を観ている子供が生理的な嫌悪を覚える事はありません。

極めつけは、
昭和の怪獣ならではの、あの絶妙な “化け物加減” をしたデザイン・造形でしょう。
不気味だけど、どこか愛嬌があり、
シャープなんだけど、どこか滑稽で、
悪者なのになぜか憎みきれない、
その、愛すべき “哀しみ” を秘めた姿形は、
子供心になんとも美しくカッコよく映ったものです。

今回は、
そんな人気怪獣・ギャオスの、懐かしいソフビをいくつか紹介させていただきましょう。


まずは、
ガメラ玩具といえば、このメーカー、日東科学教材のソフビから・・・。





スタンダードサイズ、全長約18センチ。 


 
刷毛塗りによる、手づくり感に満ちた塗装が
なんとも雑な気がして(とくに翼の部分)、一見、人形の魅力を半減させてしまっているようですが、
どうしてどうして、
こうやって、前述した例の名場面を再現させてみると、
その翼の部分の塗装のおかげで、
ガメラを振り切りなんとか空へ逃げようと翼を動かしもがいているギャオスの様子が、
じわ~、っと実感出来て、楽しいです。

それは、おそらく、
この “手づくり感”(もっと適確な言い方をすると “人肌感”)が、
『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』という映画自体の味わいに通じているからだと思うンですよね。

たとえタッチは雑に見えても、

 こうやって翼に躍動感を持たせた塗装にした方が、この人形を手にした子供が楽しめるだろう、 

という “意識” を感じますから、
それが、
低予算の制限の中、少しでも子供を喜ばせようと
湯浅監督をはじめとするスタッフの方々が
様々な工夫を凝らして作り上げてくれたあのエネルギッシュな映像の “面白さ” と、
同じ温かみで、伝わってくるンです。 
 

あの名場面、
紫外線を浴びると細胞組織が破壊されて肉体が縮小する、
という弱点を持つギャオスは、
昇ってきた朝陽に反応して頭頂部が赤く発光(弱ってきた証)しますが、
もう、そうやって、
映画の中のギャオスを実感しちゃってる僕には、
このソフビの、
胴体や翼と同じ色(オレンジ色)でしか塗装されていない頭頂部ですら、
映画の中と同様、赤く輝いて見えてます。
                        翼の背面には
おそらくコスト的な理由で
一切塗装をしない仕様だったと思われますが、
右上の部分に、
このように誤って塗料が付いてしまっています。

なので、
塗装作業は、やっぱり、雑(笑)。 










ミドルサイズ、全長約10センチ。 
 
スタンダードサイズの人形と同じような彩色ですが、
顔は、若干、下膨れ気味、
翼も、若干、前にすぼめた感じで、
スタンダードサイズの人形ほどの鋭さや戦意を感じさせない造形になっていますので、
小さなサイズという事も相まって、
“子供のギャオス” っていう風合いで、可愛いです。  



ミニサイズ、全長約8センチ。

頭頂部どころか全身が赤で成形され、もう、瀕死状態(笑)。
そのせいか、
黒の横棒1本で描かれた目も、
力尽きて静かに閉じていくところのように思えてしまいます。

      なので、
同じ小さなサイズでも、

 “子供のギャオス”

に見えたミドルサイズの人形と異なり、
こちらは、

 “紫外線に長時間さらされ縮小してしまったギャオス”

ってところでしょうか。

なんだか痛々しくて可哀想な気がしてきますが、
その分、大事にしてあげよう、という感情が増大するので、
僕はこの人形が愛しくてたまりません。 

  



・・・あぁ、
なんか、子供の頃の空気感みたいなものが、胸に染み入るように甦ってきました。
だって、
各サイズとも、
情趣に富んだ個性で、いかにも “昭和” なンですもん。
たまらないンですよねぇ~、
この、情緒豊かで活き活きとしていて、なんとも優しい感じが・・・。

これら日東科学教材製のギャオス人形は、
昭和40年代半ば、つまり第2次怪獣ブームの真っ只中に発売された商品で、
ひとつのキャラクターに
スタンダード、ミドル、ミニ、と
いろんなサイズの人形が作られている事からも解かるように、
ブルマァクというメーカーを完全に意識しています(っていうか、真似してます(笑))。

 ゴジラやウルトラのソフビで当てて意気上がるブルマァクに、
 ガメラのソフビで対抗し、ブームに乗っかっていこう、

という野心、ですよね。
そんな勢い・元気の良さが、商品の形や色に表れてます。
そして、その趣こそが、
強い力で僕を半世紀近く前の少年時代へと、タイムスリップさせてくれるわけです。




ちなみにですが、
喉骨を2本持つゆえ、
首の回転が効かずに背後が死角になる実物のギャオスと異なり、
これらソフビのギャオスは、
頭部が胴体とは別パーツゆえ、360度、周囲が見渡せすので、
実物のギャオスよりも強敵、と言えます(笑)。

だから、めっちゃ手強いぞ! 
がんばれ、ガメラ! 映画の中以上に・・・。

     



変わってこちらは、マルサン製。全長約13センチ。

日東科学教材製のギャオス人形たちよりも
時期的には少し前、
昭和40年代の前半に発売されていた商品で、
以前、第34回「幸せの青い鳥(ギャオス)」でも紹介した、
僕の大好きなソフビです。 


もう、理屈抜きで素晴らしい。

 やっぱ、マルサンのソフビはいいなぁ・・・、

って、しみじみ唸らせてくれる名品のひとつ、と言えるでしょう。
    子供のオモチャゆえ、
怪獣という凶暴なキャラクターを可愛らしくデフォルメしながらも、
決して、怪獣の持つ迫力や不気味さを軽視せず、
異形な者に惹かれる男の子の感受性に優しく寄り添う、
絶妙な造形・・・、
たまりません。 実に素敵。

そして、このなんとも魅惑的な彩色。
劇中の、
ギャオスが動物的本能に目覚めている時に体から発する光線の、
あの神秘的な色を彷彿とさせながらも、
冷たい(心を持たないケダモノの)印象になる手前で
その度合いは止まっています。
これまた絶妙で、これまた実に素敵。 

そんな優れた造形・彩色が、
僕の心を、どんな時でも甘美に優美に、気持ち良く酔わせてくれます。
あぁ、最高!





最後に、
ソフビではなく、
『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』という映画そのものについて、少し・・・。

面白い映画ですよねぇ~、ホント。
ありえない事が
当たり前のように起きてテンポよく展開してゆく筋書きは、
誠に持って爽快なものです。
そして、
なんといっても、
観る者を決して飽きさせない、怪獣バトルの多彩な演出、
何回観ても、その都度惚れ惚れします。見事。

これぞ怪獣映画、と言える傑作だと思いますね。

こういう夢のある世界を
「幼稚だ」と言って鼻で笑い、
怪獣映画を、
延いては怪獣映画を愛する僕の事を、
勝手な上から目線で愚弄する人が時々いますが、
そんな不潔で貧しい心では、
この先、楽しい事や嬉しい事は、何も無いと思うンですよね。
生きてたって時間が無駄なンです、そういう人は。

なので、

 「とっとと、〇ね!」

って、人として言ってはならない言葉を言いたくなってしまいます。

もちろん、言いはしませんけどね。
人として言ってはならない言葉を言ってしまうと、人ではなくなってしまいますから。
心の中で思うだけです。
ただ思うだけ。・・・強くね(笑)。

ところで、
劇中、狂言回し的な役割を果たす英一少年ですが、
もう、羨ましい、ったらないですね。
だって、
ギャオスの手に握られるわ、
ガメラの背中に乗って一緒に空は飛ぶわ、
おまけに、
お姉さん役の笠原玲子さんの胸に顔をうずめてギュッと抱きしめてもらえるわ、

 あんた、どんだけ幸せな男の子なの!

って嫉妬してしまいます(笑)。

あ、そうそう、
“ギャオス” って命名したのも、英一少年でしたよね。

 ギャオーって鳴くからギャオス、

だってサ(笑)。

そんなのが瞬時にそのまま採用されて、
科学者や記者や防衛隊の人たち(つまり、すべての大人たち)も
 「ギャオス」、「ギャオス」、
ってフツーに呼び出すわけですから、もう、感嘆すべき愉快痛快な世界観。

やっぱ、怪獣映画には “夢” がありますね。







               前回へ               目次へ               次回へ