真水稔生の『ソフビ大好き!』


第203回 「愉快で高度なコミュニケーション」  2020.12

以前、
僕のアルバイト先では
外国人の若者がたくさん働いている事を述べましたが
第164回「言葉を超えた愛もあるはず」第177回「夢のスリランカ」参照)、
今でもその状態は続いていて、
相変らず楽しい毎日を過ごしています。

昨年の今頃でしたか、
19歳のネパール人の女の子が新たに入ってきたのですが、
その子の、顔や仕草、
僕の事を “マミズさん” ではなく
なぜか “ズ” 抜きで “マミサン” と呼んで、
ほとんど何を言ってるのか解らないレベルの拙い片言の日本語を
一生懸命に話す様子などが、
もう、めちゃくちゃ可愛くて、とても気に入ったので、

 日本では、朝の挨拶は、
 みんな、“おはようございます” の後に “大好き” って付けるンだよ、

と教えて、

 「マミサン、オハヨウゴザイマス。ダイスキ」

と、出勤の度に言わせていました(笑)。

でも、
1ケ月くらい経ったら、
どうやら嘘だと気づいたようで、
「ダイスキ」とは言ってくれなくなりました(当たり前(苦笑))。

ところが、先日、20歳になったというので、

 「誕生日、おめでとう」

って言ったら、
突然、

 「マミサン、スキ」

と、何やら意味有り気な表情で告げられたのです。

ドキッとして気持ちが舞い上がったのですが、
そしたら、

 「デモ、ダイスキ ジャナイ」

と付け加えられ、笑い飛ばされました。

もう、完全に、

 このオッサンは私に気がある、

という事を理解・意識したうえで、
ずっと騙され続けて「ダイスキ」と言わされていた事の仕返しとばかりに、
僕をからかってきたわけです。

「スキ」と言われて一瞬本気にしてしまったのが、
僕の表情やリアクションでバレバレでしたでしょうから、

 恥ずっ!

ってなりました(苦笑)。

けど、感服しましたね。
だって、
まだまだ片言とはいえ、もう充分に日本語を使いこなしているわけで、

 1年でこんなに上達するンだぁ・・・、

って思いましたし、
これ、はっきり言って、
日常会話以上のスキルを要するコミュニケーションですから。
凄いです、マジで。

・・・ってか、
成人する前から言葉の通じない他国へやってきて、
1年後には片言のその国の言葉でその国のオッサンをからかうわけですから、
そもそもが図太い神経で度胸も据わってますよね。

 やっぱ、女はすげェな、
 万国共通で、男は絶対敵わない生き物だ、

と、痛感もした次第です(笑)。

50代も半ばを過ぎて、
19、20歳の女の子にからかわれてる僕が、ただアホなだけかもしれませんが・・・(苦笑)。

まぁ、でも、
こんなふうに、
まだまだ勉強中の拙い日本語を話す外国人の子たちと交わすやりとりは、ホント、愉快で心が和みます。

同じネパール人で、これは男の子なのですが、
今日、仕事でちょっとミスをしたので、

 「それ、違うよ」

って指摘したら、

 「Oh! モウシワケナイデ、クダサイ」

って言われ、

 ・・・ん? 
 申し訳ないで下さい?
 ・・・なんか、僕が注意されたみたいじゃないか!?

って思い、笑ってしまいました。
そしたら、
なぜかその男の子も一緒に笑ってました(笑)。

そうかと思えば、
日本語を聞いて理解する事は出来ても、
話す事がまだまだ上手く出来ないインドネシア人の女の子がいるのですが、
その子が、
日本人の上司に「これ、違ってるよ」と注意された際には、
どうやらそれがその子のミスではなかったようで、

 「ワタシ ジャナイ! ワタシ ハ ヤッテナイ!」

って、
はっきりと聞き取れるきれいな日本語を、急に上手に使いだして反論していたので、
思わず吹き出してしまった、なんて事もありました。


みんな、元気で明るくて、いい子たちばかりなのです。

こう見えて僕も人の親ですし、
自分の子供たちと重ね合わせて見てしまうンですよね、彼らを。
「頑張れよ」って応援したくもなりますし、
特に今はこんなコロナ禍になってしまっていますので、

 それぞれの母国にいる親御さんたちは、さぞ心配だろうなぁ・・・、

なんて、心痛な思いすら抱いてしまいます。

・・・え?
異性として意識した女の子の言動に一喜一憂しといて、何が親目線だ、って?

ハハハ。
まぁ、例外もありますよ、例外も(笑)。

けど、ホント、

 もし、自分の子供が外国でその国の人たちに囲まれて働いていたら・・・、

って考えて、
どの外国人の子にも、男女関係無く、
これからも優しく温かく接していこう、と思う次第なのであります。


そこで、今回は、
“外国人” に因みまして、
外国人が変身する “ウルトラマン” の物語、
『ウルトラマンG(ウルトラマングレート)』を取り上げたいと思います。 

     
『ウルトラマンG(ウルトラマングレート)』は、
平成2年に、円谷プロが、
海外マーケットにおける展開を視野にオーストラリアで制作した、
全13話のオリジナルビデオシリーズで、
現地の製作会社であるサウス・オーストラリア・フィルム・コーポレーションの全面協力の下、
州政府芸術省及び観光局の後援を受けて誕生した、“海外版ウルトラマン” です。

外国人(正確には、日系人、という設定でした)が変身・・・、と述べましたが、
当然の事ながら、
出演者は全員外国人で、
作品全体のビジュアルや雰囲気は、まさに “海外のテレビドラマ” って感じでしたので、
ビデオが発売された後には、
アメリカのケーブルテレビ局で放送されましたし(英題は『ULTRAMAN towards the future』)、
日本でも、NHK-BS2で(数年後には地上波(TBS)でも)放送されました。
また、
ビデオ発売とほぼ同時期に、
その全13話を編集した、2本立ての劇場版も公開され、
僕はいちばん最初にそれを観たのですが、
オーストラリアの広大な土地を活かしたオープンセットでのバトルは、
映画館の大きなスクリーンで観ると圧巻の迫力でしたし、物語も面白く、すぐに気に入りました。
オーストラリアの大空へ飛び立つグレートの姿を見て、

 あぁ、ついに “ウルトラマン” は世界に飛び立つのか・・・、

って、感慨深く思った事を憶えています。 

加えて、
主題歌を歌い、主人公ジャック・シンドー役の吹き替えも担当していた京本政樹さんに、
強烈な憧憬の念を抱きましたね。

だって、京本さん、
役者として成功しただけでも凄いのに、
特撮ファンだから、と
新しい “ウルトラマン” の主題歌を歌って主役も演じる、なんて、
カッコよすぎるじゃないですか。

それに、
聞けば、“ウルトラマングレート” ってネーミングも京本さんの発案だそうで、
演者としてだけでなく、
プロデュースするスタッフ側にもいるわけですから、
これほどまでに夢を現実にして生きていく人がいるのか、って話です。
凄いと思いました。

 生まれかわるなら、京本政樹になりたい・・・、

と夜空の星に願ったものです(笑)。

しかも、そんな京本さん、
なんと、ソフビ人形もプロデュースしていたンですよね(どこまで凄いねん!)。
そう、バンダイの京本コレクションです。

それでは、今回のソフビ紹介は、
その、京本コレクションのウルトラマングレート人形から、始めさせていただきましょう。


全長約44センチ。

実物そっくりのフィギュアを目指す京本さんのこだわりが、大いに感じられる造形ですね。

 名付け親にして、主題歌を歌う歌手であり、主役の声優でもあった、
 ウルトラマングレートに対する京本さんの功績の表象、

と言える人形だと思います。平成3年の発売。
   
こちらは、
同じく京本コレクションのグレート人形で、
平成8年に発売された、“ウルトラマン生誕30周年記念特別版 黄金の巨神像ヴァージョン” です。

上のノーマル版と同じ型ですが、
全長約43センチで、ほんの少しだけ小さいです。









さて、
バンダイからは、
もちろん、京本コレクション以外にも、いろんなシリーズ、いろんなサイズの、グレートのソフビが発売されていました。

下の3体は、定番のウルトラヒーローシリーズ。
   
平成2年に発売された、
最初のグレート人形。 
全長約17センチ。  
   平成12年に、
 彩色が変更されました。
 全長約18センチ。 
   平成21年には、
 新造形で発売されました。
 全長約17センチ。


そして、
こんな人形もありました。


グレートモンスターシリーズ、全長約21センチ。

発売は平成4年でしたが、
海外では、その前年に発売されていたようです。
 


 ミニサイズも、ウルトラファミリーのセットで、発売されてました。
   


平成3年発売の、
“ 結集ウルトラヒーロー10 PART1” というセットに入っていたグレート人形。全長約13センチ。
背面の塗装を省略した、セコい(笑)仕様です。


こちらは、
上のセットと同時期に発売された、
“結集ウルトラヒーロー10 PART2” というセットに入っていたグレート人形。
全長約12センチ。
ポーズがつけられる造形で
何やらカッコつけてますが、
やっぱり、背面はきちんと塗装されていません。 ダサっ!(笑)

平成6年発売の、“不滅のウルトラ戦士セット1” に入っていたグレート人形。
全長約13センチ。 
背面にもきちんと塗装が施されるようになりました。
 


平成8年発売の、
“ザ・ベスト・オブ・ウルトラヒーローズ” というセットに入っていたグレート人形。
背面の塗装はありますが、
なぜか、腕や足のラインの塗装箇所が、上の人形(2年前のセット)よりも減ってます。
全長約13センチ。
あと、上の人形(2年前のセット)よりも、かかとが高くなりました。
平成13年発売の、
“不滅のウルトラ戦士2” というセットに入っていたグレート人形。
全長約13センチ。 

背面も塗装されているし、
腕や足のラインの塗装もきちんと戻り、
長年かかって、やっとまともな仕様になりました。 世話がやけます(笑)。
   
こちらのミニサイズ人形は、ユタカ製。

平成7年の発売で、
シラリー人形とセットのものと、コダラー人形とセットのものがありましたが、
グレート人形は、
どちらのセットにも同じものが入れられていました。
全長約11センチ。
       
  平成3年にバンダイから発売された食玩のグレート人形。

全長約10センチ。
カラータイマーの塗装色が、
紺のタイプ(向かって左)と青のタイプ(右)の2種、ありました。 

こちらもバンダイの食玩ですが、平成7~8年頃に発売されたものです。
ティガとかセブンとか数人のウルトラ戦士と、セット売りでした。

全長約8センチで、
いちばん小さいグレートソフビです。

成形色(赤の部分)が、
艶消しのタイプ(向かって左)と艶有りのタイプ(右)の2種、ありました。

 


次は、
グレートと闘った怪獣たちのソフビ、紹介します。

ゴーデス
バンダイ製 ウルトラ怪獣シリーズ。
向かって左が平成7年の発売で全長約13センチ、右は平成12年の発売で全長約14センチ。

ゴーデスは、
宇宙のすべての生命体を滅ぼそうとする邪悪生命体で、
第一形態と第二形態があり、これは第一形態を人形化したもの。
よって、
タグには “ゴーデス(Ⅰ)” と表記されていました。 
   
ブローズ
バンダイ製 ウルトラ怪獣シリーズ。  
向かって左が平成2年の発売で、右は平成4年の発売。ともに全長約9センチ。
 
こちらは、
バンダイ製 グレートモンスタシリーズのブローズ。
全長約18センチ。平成4年発売。


・・・それにしても、
ゴーデスといい、ブローズといい、
いかにも
  “海外版ウルトラマン” の怪獣、
って感じですよね。

こういう、
成田亨さんなら絶対にデザインしないであろう、
生理的嫌悪を覚える姿のモンスターは、
日本(昭和)のウルトラ怪獣には
いませんでしたからね。 

日本人で良かった、と改めて実感(笑)。
   
ギガザウルス
バンダイ製 グレートモンスターシリーズ、全長約29センチ、高さ約14センチ。
平成4年発売。 
   



ゲルカドン
左は、平成7年発売のバンダイ製 ウルトラ怪獣シリーズ、全長約16センチ。
下は、平成4年発売のバンダイ製 グレートモンスターシリーズ、全長約22センチ。
   
デカンジャ
バンダイ製 ウルトラ怪獣シリーズ、全長約16センチ。
平成7年発売。 





   
バランガス
バンダイ製 グレートモンスターシリーズ、全長約24センチ、高さ約16センチ。
平成4年発売。 



マジャバ

右が、平成7年発売のウルトラ怪獣シリーズ、全長約15センチ。
下は、 平成4年発売のグレートモンスターシリーズ、全長約19センチ。
   
バイオス
バンダイ製 ウルトラ怪獣シリーズ、全長約17センチ。
平成7年発売。 

タグの表記は “プラントバイオス” となってました。
   
シラリー
バンダイ製 ウルトラ怪獣シリーズ、全長約20センチ。平成2年発売。

“シーラギ” という怪獣名のタグが付いていますが、
元々、シラリーは、シーラギという名前だったンですよね。
これは、古代の朝鮮半島にあった国 “新羅(しらぎ)” をもじったものであり、

 いくら古代のものだからといって、
 国家の名前を悪者の怪獣の名前にするとは何事か、

ってクレームが入り、急遽、シラリーに変更されたのです。

その変更前に、もうすでに商品化され出荷されてしまった人形が、これなのです。

発売元であるバンダイはすぐに回収しましたが、
発売後にすぐ購入した消費者の手元には、これが残っている、というわけです。

 以前にも述べた事がありますが
 僕はソフビ怪獣人形をパッケージ入りのままコレクションする事はありません(第43回「オモチャの価値とコレクターの情熱」参照)。
 子供が、買ってもらったソフビ怪獣人形をパッケージから出さずに、遊んだりオモチャ箱にしまったりしないのと同じ感覚です。
 オモチャ(特にソフビ怪獣人形)は、“手に持って遊んでナンボ” のものですし、
 飾って並べているコレクションケースも、“子供の頃のオモチャ箱が進化したもの” というイメージで楽しんでいます。
 なので、
 バンダイのウルトラ怪獣シリーズの人形は、購入後、必ずタグを切り取るのですが、
 このシーラギ(つまり、シラリーの初版)人形だけは、先に述べた経緯から、資料性を重視し、
 例外として、タグ付きのまま所有しています。

 僕はこれを、
 この『ソフビ大好き!』の連載でお世話になっているゲイトウエイさんから購入したのですが、
 バンダイが回収して間もない頃で、
 クレームによる名称変更のエピソードも、
 その時にゲイトウエイの杉林店長から教えてもらったくらいなンですよね。
 つまり、
 ゲイトウエイさんと付き合いが無ければ買いそびれてしまっていたわけで、

  ゲイトウエイの常連客で良かったぁ・・・、

 って感謝したのを憶えています。

 ただ、
 その時、ゲイトウエイさんには、
 確か3体か4体、入荷しただけだったのですが、
 “シーラギ” という名称にクレームを入れたのが名古屋の人だった事もあってか、

  名古屋のゲイトウエイっていうアンティーク・トイ・ショップが、
  シーラギを回収前に全部買い占めた、

 っていう間違った情報で噂になり、
 買いそびれてしまった全国のマニア・コレクターからの問い合わせが、
 一時期、ゲイトウエイさんに殺到しました。

  お前が、また話を盛って言いふらしたンだろ?

 みたいな事を杉林店長に冗談交じりに言われましたが、

  「そんな発信力、僕にはありません」

 って否定しながら、
 ゲイトウエイさんのおかげで既に入手済みである事を改めて感謝したものです。
回収直後は、
2種類のシラリー人形が流通してました。

足裏の “シーラギ” という名前の刻印を、
削って消したものと(向かって左)、
パテのようなもので埋めて隠したもの(右)です。

ともに全長約19センチ。 
 

その後、
平成4年に
成形色が変更された際、
晴れて足裏に
“シラリー” と刻印されまして(向かって左)、
平成8年には
また元の成形色に戻りました(右)。
     

バンダイ製 グレートモンスターシリーズ、全長約21センチ。

   
こちらは、
ユタカ製、全長約10センチ。
グレート人形とセット売りだったものです。
平成7年発売。
   
コダラー
バンダイ製 ウルトラ怪獣シリーズ、全長約12センチ。

コダラーも、
シラリーがシーラギだったのと同様に、
古代の朝鮮半島にあった国 “百済(くだら)” を
もじった・・・っていうかそのまんまの“クダラ” って名前の怪獣でしたが、
クレームが入って名称変更された怪獣です。

ただ、
ソフビ人形としての商品化の時期が平成7年で、
クレームによる名称変更からは数年経った頃でしたので、
最初から “コダラー” として発売されたゆえ、
“シーラギ” のように “クダラ” なんて名前のタグが付いた人形は存在しません。
こちらは、
ユタカ製、全長約8センチ。
グレート人形とセット売りだったものです。
平成7年発売。 
   
   
・・・それにしても、
“シーラギとクダラ” なんて、
実際にあった国の名前を悪者怪獣の名前なんかにしたら
クレームが来る事くらい、
スタッフの方々は予想出来なかったンですかね? 

・・・ってなわけで、今回は、
アルバイト先にいる外国人の若者たちの話題から、
“外国人が変身するウルトラマン” という事でグレートを取り上げましたが、

 グレートも、
 ウルトラの星・光の国で
 ウルトラ兄弟たちと会話する際は、
 片言の日本語を発して楽しい雰囲気を作っているのかな・・・、

なんて、ふと思ったりしました。

・・・あ、自分の故郷でわざわざ地球の言葉を使う必要はないか(笑)。


そういえば、
アルバイト先では、

 休憩室や喫煙コーナーなどで
 ネパール人とインドネシア人とベトナム人とスリランカ人が日本語で会話している、

なんていう光景をよく目にします。
日本の職場ゆえ共通の言語が日本語ですから仕方ない・・・というか必然的にそうなるンでしょうけど、
考えてみれば、

 いろんな国の言葉の中で特に習得が難しいと言われている日本語をわざわざ使って会話、

なんて、
実に高度なコミュニケーションですよね(笑)。

なので、
地球に滞在した事のあるウルトラ戦士たちも、
ウルトラの星・光の国で、わざわざ地球の言葉で話す、なんていう高度な遊びをやっているかもしれません。

やっぱり、グレートは、

 「モウシワケナイデ、クダサイ」

みたいな、ちょっと変な日本語を言ったり、

 「ワタシ ジャナイ! ワタシ ハ ヤッテナイ!」

なんて、自身の潔白を主張する際には急に流暢な日本語を放ったりして、
セブンやエースたちを笑わせ、
ウルトラの星・光の国を楽しい癒しの空間にしている事でしょう。

いいぞ、グレート! 
がんばれ、グレート!(笑)



 


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