真水稔生の『ソフビ大好き!』


第184回「好きにならずにいられない』 2019.5




 ♪ 好きです 好きでぇす~ 好き 好き~
 ♪ だから一緒に食べよぉ~ すき家の牛丼


というわけで、
今日の昼御飯は “すき家の牛丼” であります。
 

・・・え?
前回、“吉野家の牛丼” が好きだ、って言ってたのに
節操が無いじゃないか、って?

いやいやいや、
両方好きでしょ、フツー。

ゴジラが好きならガメラも好き、
ウルトラマンが好きなら仮面ライダーも好き、
谷ナオミが好きなら麻吹淳子も好き、
よって、
“吉野家の牛丼” が好きなら “すき家の牛丼” も好き、なのでありますよ。

三つめのが解からない?

にっかつロマンポルノの “SMの女王” であります。
女賭博師とか華道の家元とか、
和装の妖艶な婦人役が似合う谷ナオミさんが初代で(70年代に活躍)、
女教師とか銀行OLとか、
洋装の綺麗なお姉さま役が似合う麻吹淳子さんが2代目(80年代に活躍)。
御二人とも、実に素敵なポルノ女優でした。
永遠の憧れなンです。

以前、第16回「エロチズム ~キルギス星人の復讐~」の中でも述べましたが、
にっかつロマンポルノのSM映画は、
“原作・団鬼六” と謳いながら、
原作とは全く異なる内容のものがほとんどでしたので、
団先生のファンとしては決して肯定出来るものではないのですが、
その不満を補って余りある、
御二人の美しい肢体と高い演技力が、
思春期の僕を魅了し、恋焦がらせ、大いに興奮させてくれたものです。
随分 “お世話” になりました。

“谷ナオミ・麻吹淳子” なくして、
僕の、青春・・・いや性春は、語れないのであります。


・・・あれ?
いきなり話が横道に逸れてしまってますね(苦笑)。
失礼しました。
牛丼です、牛丼。
すき家さんに牛丼を食べに来たのです。

・・・あ、そういえば、
前回、生まれて初めて “吉野家の牛丼” を食べたのは高校生の時である事を述べましたが、
何を隠そう、あれは、
大須の名画座(名古屋市中区大須にあった映画館)で
谷ナオミさん主演の映画4本立てを観た帰りでありました。

思い出すなぁ・・・。
もう、頭の中が谷ナオミさんの裸でいっぱいになり、
帰宅後の激しいオナニーに備え(笑)、
しっかり腹ごしらえして精力をつけようと思い、お店に入ったのです。

ほら、
大須通りを挟んで、
名古屋スポーツセンター(大須スケートリンク)の向かい側にある、
あの吉野家です。

・・・って、
名古屋の人しか解かンないですよね(苦笑)。

・・・え?
そんな事より、
高校生なのにポルノ映画なんて観ていいのか? って?

まぁ、まぁ、まぁまぁ、そう固い事言わずに(笑)。
頭もお肉も、どうぞ柔らかく・・・。


・・・ん? お肉? 

ああぁっ!
またしても話が逸れてましたっ!! 
スミマセン!(汗)

今度こそ、
本当に本題に入ります。
牛丼ね、牛丼。
それも、今回は吉野家じゃなくて、すき家。“すき家の牛丼” です。


では、始めます。

“すき家の牛丼”・・・、
“吉野家の牛丼” とは、もちろん味が異なりますが、
いちばんの大きな違いは、
“キムチ牛丼” とか “高菜明太マヨ牛丼” とか “とろ~り3種のチーズ牛丼” とか、
いろんなトッピングが楽しめる事ですね。

世間には、

 いろんなものを乗っけて牛丼自体の味を誤魔化してる、

とか、

 あんなのは邪道だ! 男は黙って大盛食えばいい!

とか、
否定的な意見(ってか、乱暴な主観(笑))を言う人もいますが、
このトッピング牛丼、僕は良いと思います。

なんたって、どれも美味しいですし、
牛丼のみならず、
それを提供する “牛丼屋” というもののイメージをも大きく変えたのは、
価値ある事だと思うンですよね。

それまでは、
牛丼屋といえば、

“男が腹ごしらえに牛丼をかっ込みに来る場所”

でしかなかったのに、
それが、

“家族みんなで楽しくお食事出来る場所”

にもなりましたから。

現に、
それが成功して、
店舗数では吉野家さんを抜いて業界トップなわけですから、
ケチをつける方がおかしいのです。

・・・なんか、
ウルトラシリーズに似てますよね。
僕よりも上の世代の人は、
ウルトラ兄弟に加え父や母までもが出てきた第2期シリーズのファミリー路線に、

 神秘性が失われた、

とか、

 幼稚っぽい、

とか、
そんな理由で否定的ですけど、
Q、マン、セブンの第1期シリーズだけでは、
伝説にはなっても、
“ウルトラマン” が今日のような普遍的人気を獲得するには、至らなかったと思うのです。
なんだかんだ言っても、
やはり、
第2期シリーズのあのファミリー路線があったからこそ、
“ウルトラマン” は、国民的ヒーローに成り得たのではないでしょうか。

なので、
もう10年くらい前でしょうか、
すき家さんは、
いろんな世代のタレントを家族の設定で起用し、
おじいちゃん、おばあちやん、お父さん、お母さん、そして子供たちが、
それぞれ異なるトッピング牛丼を食べる、というテレビCMを作っていましたけど、

 おぉ、このファミリー路線、円谷プロの真似かぁ!?

なんて思ったものです(笑)。


あ、そうそう、
そのCMに、
おばあちゃん役で酒井和歌子さんが出演されていたのですが、
酒井和歌子さんといえば、
子供の頃に観ていた何かのテレビドラマで
おでんを食べるシーンがあり、
その食べ方が、
それはそれは優雅で美しく、

 なんてきれいな食べ方をする人なんだ・・・、

って感動した事を憶えています。

決して上品ぶってるわけじゃないのに、
自然と、
口の動きとか表情とかから滲み出てたンですよね、気品が。
素敵だなぁ・・・、って思いました。

そんな酒井和歌子さんがお召し上がりになるのですから、
そりゃ、牛丼のイメージも変わりますよね。

・・・けど、
酒井和歌子さん、
普段、牛丼屋で牛丼なんて、ほんとに食べるのかぁ・・・?(笑)

まぁ、とにかく、
すき家さんの、この、
トッピング牛丼を用いたファミリー路線で、
“男の腹ごしらえのための食べ物” であった牛丼が、
女性や小さな子供たちを含む、
より多くの人たちに食されるようになった事は、間違いないでしょう。


ただ、
そんなすき家さんにも、
決して女性向けでもファミリー向けでもないものがあります。
   
それは、
この、裏メニューのキング牛丼。

 御飯が並盛の約3倍で、肉は並盛のなんと約6倍、

という、
とんでもなく豪快なボリュームです。 

ビジネス戦略として、牛丼屋のファミリーレストラン化を図りながらも、
こんなハードなものを裏メニューにして残している事に、

 “男の腹ごしらえのための食べ物”

という牛丼本来の姿(笑)を忘れていない、すき家さんの “牛丼屋魂” を感じます。

それはまるで、
ウルトラシリーズをファミリー路線に変化させながらも、
文明批判の精神や重厚な物語を作ろうとする姿勢を決して失くさなかった、
円谷プロの気概のようで、
ウルトラファンとして、生理的に惹かれるのです。

ゆえに、今日は、
トッピング牛丼ではなく、
こうしてキング牛丼を注文した次第。
第2期ウルトラシリーズをリアルタイムで観ていた僕ではありますが、
いちばん好きなのは、
やっぱ、『ウルトラセブン』のハードボイルドな世界ですしね。

そして、
今回紹介するソフビコレクションは、
そのキング牛丼の名前に因みまして、キングジョー
更には、
キング牛丼のボリュームにも因みまして、ブルマァクの特大サイズ(全長約34センチ)、であります。 
 
キングジョーといえば、
言わずと知れた『ウルトラセブン』の登場怪獣の中で1、2位を争う大人気怪獣。
いや、セブン怪獣だけでなく、
すべてのウルトラ怪獣の人気投票でも、トップ10入りする事は間違いないでしょう。

飛行してきた4つのパーツが合体変形しての登場、
圧倒的な重量感と強靭な腕力、
セブンのエメリウム光線もアイスラッガーもまったく通用しない超金属のボディ・・・、
幼少時、
このスーパーロボットに魅せられなかった男の子はいないはず。
もちろん、僕も、めちゃくちゃ好きでした。

馬乗りになって押さえつけたセブンを、
さらに全身で覆い被さって叩き潰そうとしたところでストップモーションとなり、
次回に続く・・・、
というあのシーンには、
それはそれはシビれたものです。 


ただ、この特大サイズ、
ちょっと(・・・っていうか、かなり)残念なのは、
縦長な造形ゆえ、
キングジョーの、あのズシリとした重みのある迫力が薄れてしまっている事。

下の比較写真を見るとよく解りますが、
スタンダードサイズ(全長約21センチ)は、
マルサンの人形を原型にしているため当然の事ながらカッコいいし、
ミニサイズ(全長約10センチ)ですら、
キングジョーらしいフォルムがしっかりと表現されているのに、

 なんでまた、
 いちばんデラックスで高価な特大サイズがこの出来なのか・・・、

と口惜しい溜め息が出てしまうのです。
 

この造形のせいで
発売当時(昭和40年代半ば)に起きたであろう状況が、想像出来ます。 
それは、

  可愛い我が子の誕生日プレゼントに・・・、

 と
 お父さんが会社帰りにオモチャ屋に寄り、

  確か、キングジョー、ってのが好きだ、って言ってたなぁ・・・。
  えーっと、キング、キング、キング・・・、あった、これだ!
  ・・ん? あ、大きいサイズのもあるゾ。
  よぉし、誕生日だし、奮発して、こっちの大きいサイズの方を買ってってやろう。
  喜ぶだろうなぁ~、あいつ・・・、

 なんて感じで、
 この特大サイズのキングジョー人形を買い、
 帰宅後、ドヤ顔で我が子に渡すも、
 当の息子は、

  ・・・なんか、変な形だぞ、これ。
  〇〇君の持ってる普通の大きさのキングジョー人形の方がカッコいいじゃん!
  チェッ、あれと同じものが欲しかったなぁ・・・、

 って、
 瞬時に思い、がっかりしたものの、
 お父さんはドヤ顔だし、
 お母さんは、

  「良かったねぇ~」

 なんて言ってるものだから、
 「カッコ悪いから気に入らない」なんて事、
 とても口に出来ず、
 一応「ありがとう」とは言うものの、それほど嬉しそうでもない反応。
 それを見た父親は、

  あれ? なんか思ってた感じと違うなぁ・・・、

 と戸惑い、
 父と子の間に、
 なんだかしっくりこない、変な空気が流れる・・・、

というもの。

お父さんも息子も、両方、可哀想で、胸が苦しくなります(笑)。 

 


ただ、実は、
そんなこのキングジョー人形に、
僕は、自分自身を重ね見て、激しいまでの親しみを感じてしまってるンですよねぇ・・・。

以前、第64回「コケたら起きて進むだけ」の中で述べたように、
僕は、
ここぞ、という肝心なところで必ずズッコケる人生を歩んできたので、

 せっかく大人気怪獣であるキングジョーが特大サイズの人形になったのに、
 スタンダードサイズどころかミニサイズの人形よりもカッコ悪い、

という、この不調法なドン臭さが、
残念で口惜しいにも関わらず、愛しくて愛しくてたまらないのです。

コレクションケースから取り出してみては、

 「なんでこうなっちゃうのかなぁ・・・」

なんてつぶやき、傷を舐め合うような感覚で、切なく抱きしめている次第。

                         キングジョーなのに・・・、
 特大サイズなのに・・・、
 キング牛丼と違って全然 “キング” じゃないこの人形が、
 僕は、

  ♪好きです 好きでぇす~ 好き 好き~(笑)

 というわけです。   






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