真水稔生の『ソフビ大好き!』


第183回 「味と種類のソフビ愛好』  2019.4

 ♪ は~や~い~ うまい やすい の三拍子~
 ♪ ここは吉野家 味の吉野家
 ♪ 牛丼ひとすじ 八十年~


・・・って、
50歳以上の人じゃないと知りませんよね、こんな古い歌・・・(苦笑)。


というわけで、
今日の昼御飯は “吉野家の牛丼” であります。

初めて食べたのは、
CMで歌われていたように創業80年の頃ですから、今から約40年前。
僕は高校生だったのですが、

 世の中にこんな美味いものがあったのか!

って思いました(笑)。

・・・あ、
“(笑)” なんか付けたら、吉野家さんに失礼ですね。
それに、
本当にそう思いましたし、あの時。
フルーティーな旨み、柔らかな食感、そして充実の食べ応えに、
舌と胃袋が感動したンです。
虜になりました。

それ以来、
ずっとずっと愛し続けているのですが、
以前、BSE問題のせいで販売休止になってしまった時は、本当に辛かったです。
禁断症状とまではいきませんでしたが、
あのオレンジ色の看板が、何度も夢に出てきました(・・・禁断症状だったかも(苦笑))。

 僕の食生活において “吉野家の牛丼” がいかに必要不可欠か、

を痛感したものです。

販売再開後、
ビミョーに味が変わった(若干、淡白になった)気もしますが、
それでも、
あの、食べられなかった時期の苦痛を思えば、
毎日、24時間、“吉野家の牛丼” が食べたい時に食べられるのは、とても幸福な事。
その幸福を
牛肉や玉ねぎと一緒に噛み締めながら、
むしろ販売休止前以上に美味しくありがたく、いただいている僕なのです。 
   
 写真の見映えを良くしようと、今日は味噌汁も付けてみました。
 いやぁ~、贅沢(笑)。 

そういえば、
彼の円谷英二さんは
このように味噌が沈殿している状態の味噌汁を見て、

 水の入った水槽に黒い絵の具で着色した水を流して
 火山噴火のキノコ雲を表現する、

という、水分の比重を利用した特撮技法を思いついたそうですが、
いやはや、
凄い人ですね、ホント。
心から尊敬します。

僕なんて、
味噌汁を見て思う事といえば、

 美味しそうだなぁ・・・、

って事くらいですから(笑)。

それ以外は特に何も思い浮かびま・・・、
あ、いや、
ありました、ありました、もうひとつ。

それは、
この、“味噌汁は御飯の右側” という配膳が、

 食べづらいなぁ・・・、

って事です。

・・・え?
何それ、って?

いやいや、食べづらいでしょ、こんなの。
だって、
味噌汁を飲む場合は、
左手に持っていた茶碗なり丼なりを一度卓上に置いて、
その空いた左手を汁椀へと伸ばすわけですから、
汁椀が右側にあると、
腕がクロスする形になって、動きに無理が生じるじゃないですか。
誤って手を滑らせ、ひっくり返して味噌汁をこぼしてしまう危険性だってあります。

右利きの人(右手に箸、左手に茶碗・丼を持つ人)なら、
汁椀は左側にあった方が、
断然、なめらかな動きで、気持ちよく食事が出来るのですよ。

               
           
    自然         不自然 

・・・え?
そんな事ない?

そうかなぁ・・・。
理に適ってると思うンだけどなぁ・・・。

まぁ、とにかく、
僕は、
家で食事する時も、今日のような外食の際にも、
必ず、味噌汁を御飯の左側に置き換えます。

もちろん、
“味噌汁は御飯の右側” って配膳が、
日本の伝統であり、正しいマナーでもある事は知ってますけど、
左手で持つものは
左手の近くにあった方が、
絶対、食べやすいですから。

たまに、

 「間違ってるよ」

って、
マナーに反している事を指摘してくる人がいますが、
クチャクチャ音をたてて食べる、とか、
食べてる最中にゲップをする、とか、
そういう、
下品で無神経な行為とは違いますから、
食器を自分の食べやすい位置に置き換えるくらい、
誰に迷惑かけるでなし、べつに構わないと思うのです。

だいたい、
伝統だ、マナーだ、と言ったって、
元々は、中国から伝わってきた “左上位の考え方” でしょ?
そんなの、
日本で御飯や味噌汁を食する事と、何の関係も無いじゃん。

それに、元号だって、
これまで使われてきた中国の書ではなく、
日本の書(『万葉集』)を典拠にする時代なのですから、
日本人なら、
もっと、日本独自の価値意識をしっかり持つべきです。

もちろん、
日本が中国文明の影響を受けているのは事実ですし、
“脱・中国” などというチンケなナショナリズムを唱えるつもりは毛頭ありませんが、
日本人が、
知を磨き心を養い生きていく中で、新たな可能性を・・・あれ?

何の話をしてるンだ? 僕は・・・(汗)。

話を戻さなきゃ。
えーっと、
吉野家さんで牛丼を食べてて・・・、
あ、そうそう、味噌汁だ、味噌汁。

 味噌汁を見て火山噴火の特撮技法を思いついた円谷英二さんは凄い人だなぁ・・・、

って話でしたね。
失礼しました(苦笑)。


・・・で、
思い出すのは、幼稚園児だった頃の事。
僕は、
“円谷プロ” を、
“つぶらやプロ” と正しく読めなくて、“えんたにプロ” って言っていたのですが、
それを、

 「“つぶらやプロ” って読むンだよ」

と教えてくれた、近所に住む小学生(確か僕より5歳年上)の子が、
その時、続けて、

 「『ゴジラ』の監督の円谷英二って人が
  円谷プロの社長だから、
  ゴジラのぬいぐるみが『ウルトラマン』で使えるンだよ」

って言ったのです。

これは、
ゴジラの着ぐるみを東宝から借りてきて、
エリマキトカゲの頸部にある襞襟状の皮膚のようなもの(襟巻き)をつけて
無理矢理ゴジラとは違う怪獣(ジラース)に見立てた事を、
指していたわけですが、
今考えると、
あれが人生でいちばん最初の、

 円谷英二、って凄い人だなぁ・・・、

と思った瞬間だったかもしれません(笑)。


というわけで、
今回紹介するソフビコレクションは、その、ジラースでございます。

・・・配膳のくだり、本当に余計でしたね。スミマセン(苦笑)。

まずはこちら。
ブルマァク製 スタンダードサイズ、全長約21センチ。 

昭和40年代半ばの商品です。

襟巻きが実物よりも小さくデフォルメされていますが、
これは、
ジラースとしてだけでなく、ゴジラとしても遊べるよう、
この人形を手にした子供たちがイメージしやすいように、
メーカーが気を利かせてくれてるのかもしれません(笑)。
あるいは、
『ウルトラマン』に登場したジラースではなく、
『レッドマン』に登場した、
しおれた花みたくクタクタになった襟巻きのジラース、ってことかも(笑)。

前者も後者も、“(笑)” を付けましたけど、
実は、
こういう自由な空想で勝手に解釈して遊ぶのが、
“ソフビ怪獣” というオモチャの本来の楽しみ方なンですよね。

怪獣が友達だった僕らは、
それを理屈でなく感覚で理解し、そこに夢を見、これら人形を愛したのです。
そして、その造形は、
ただ夢を見させてくれただけでなく、
今、大人になった僕らに、
奥深い “味” を感じさせ、癒しや和みをも、与えてくれています。

荒々しく咆哮しているようにも、
楽しそうに笑っているようにも、
どちらにも見えるこの顔の表情は、まさにその象徴ですね。

アンティークソフビの、たまらなく面白いところであります。 

また、
僕のようなコレクターには、
そんな、造形の “味” 以外にも、
心を愉快に酔わせてくれるものがあります。
それは、“ヴァージョン違い” の存在。

この人形のほかにも、
歯が金色に塗装してあるものや、
この緑とは全く異なる白っぽい成形色に、薄い茶色が全身に塗装されている、
それこそ牛丼や味噌汁のような色をしたものが
存在するのですが、
その、牛丼や味噌汁のような薄茶色のジラース人形は、
なかなか市場に出ない、いわゆる “激レアアイテム” でして、
僕はいまだに実物を見た事がありません。
もう、ロマンの域(笑)。

余談ですが、
その昔、
僕が、まだコレクターになって2年目か3年目の頃、
この『ソフビ大好き!』の連載でお世話になってるゲイトウエイさんの店内で
杉林店長から、

 「今度、ジラースが入る(入荷する)かもしれないけど、まだ持ってなかったよねぇ?」

と聞かれた際、
その時、たまたま名古屋に来られていて店内にいらっしゃった、
コレクターの大先輩・西村祐次さんが、

 「何色ですか?」

と話に入ってこられたのを憶えています。

まだその時点では、
今度入荷するジラース人形が、
緑色の方なのか薄茶色の方なのか不明だったのですが、
僕はそこで初めて、
薄茶色のジラース人形が非常に珍しい品である事を知ったのです。
なんたって、
あの西村祐次さんが気にするほどだったわけですから。

西村さんが帰られた後、
杉林店長に、

 「“西村祐次” とコレクションを取り合うなんて、
        真水さん、凄いコレクターになったね」

なんて茶化され、
更には、

 「もし茶色のジラースだったら、西村さんに回しますから」

などと、
冗談なのか本気なのかビミョーに解からない冗談(笑)で
からかわれたので、
いまだに忘れられません。 
・・・まぁ、
入荷したのは、
よくある緑色のジラース人形でしたので、
西村さんに回される事なく、
こうやって、無事、僕のコレクションとなりましたけどね(笑)。
 



続きましては、
以前、第68回「心は “せいたかさん”」の中でも紹介した、
ブルマァク製 ミニサイズ、全長約10センチ。 

なんと、
手の指が、3本のものと4本のものがあるンです。
もう、ヴァージョン違いの妙味中の妙味。
こたえられません。 
 

これもゲイトウエイさんの店内における思い出なンですが、
或る時、
お店のガラスケースの中にあったミニサイズのジラース人形をなんとなく眺めていたら、

 なんか、僕が持ってるヤツと違う気がするなぁ・・・、

と思い、
一旦家に戻って、自分のをお店まで持ってきて2体を比較して、
その違いが判明した(その違いに気づいた)のです。

 アンティークソフビは深いなぁ・・・、

って思いましたね(笑)。


   


戦闘意欲を感じさせる前傾姿勢である事と、
正面でなく、
ちょっぴり斜めの方を向いている造形が好きです。
洒落てますよね。 


こちらは、
昭和50年代前半の商品。
ポピー製 キングザウルスシリーズ、全長約15センチ。

ブルマァク倒産後も
ソフビ怪獣人形が男児玩具の1ジャンルとして存在してくれた事は、
冒頭で述べた、
BSE問題のせいで
一度は吉野家のメニューから消えた牛丼が販売再開となってくれた事に、
通ずるものがあります(笑)。
以前のもの(ブルマァク)とはビミョーに “味” が異なる、
ってところも、似ていますし・・・。 

    そして、なぜか、
胴体の成形色と手足・尻尾の成形色が、このように違ってます。

前述のミニサイズの指の数の違い同様、
こういう細かいマニアックな事に気づいた時の悦びは、
ソフビコレクションの醍醐味。
なんだか興奮します(笑)。
   
別のカラーヴァージョンもありますが、
こちらは、
胴体も手足・尻尾も、全部、同じ成形色で出来ています。

 
   
そして、これは、
サイズが少し小さい(全長約14センチ)ヴァージョン。




     ・・・やっぱ、アンティークソフビは深いなぁ・・・(笑)。


ここからは、平成ソフビ。
平成最後の年の最後の月に紹介する、平成ソフビです(笑)。 
   









バンダイ製 ウルトラ怪獣シリーズ、全長約16センチ。







平成7年に発売された、
“ウルトラバトルゾーン 怪獣大決戦場” という商品名のサウンドジオラマに、
ウルトラマン人形とともに同梱されていた人形です。

そして、
3年後の平成10年、単品でも発売されました。
上記のセット売りの人形と比べると、
体色である緑色の明るさのトーンが、
かなり抑えられています。 




・・・やっぱ、
カッコいいですね、このシリーズは。




食玩のミニ人形もありました。

バンダイ製 ウルトラマンソフビ道、全長約10センチ。
平成14年の発売です。

今回紹介したものの中では、いちばん実物に近い造形・彩色の人形です。 


ここ1、2ヶ月、

 “平成” とは、どんな時代だったか、

という総括の論評が
様々なメディアにおいて取り上げられてきましたが、

 お菓子のオマケの人形にも、
    ここまでのリアル造形が求められた時代、

っていうのが、
僕にとっての “平成” でした(・・・頭ン中、ソフビの事しか無いンかいっ!(笑))。



今回は、
吉野家さんにて、
味噌汁から火山噴火の特撮技法を思いついた円谷英二さんの話を思い出し、
そこからソフビコレクションの紹介へと繋げましたが、
先ほど、
BSE問題による販売休止に
ブルマァクの倒産をダブらせたように、
僕の中では、
そもそも最初から、似たようなイメージで、
“吉野家の牛丼” はソフビと結び付いていました。

だって、
なんたって “味” が魅力だし、
そのうえ、
並盛とか大盛とか特盛とか、いろんなサイズがあって、
更には、
“つゆだく” とか “とろだく”とか、
そんな、いわゆる “ヴァージョン違い” も、あるわけですから(笑)。


            ♪


さて、
明日は日曜。
我が草野球チーム・マミーズの試合があります。
    よぉし、
“吉野家の牛丼” をがっつり食べて、

 明日はホームランだっ!



・・・って、
やっぱり古い(苦笑)。




 








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