真水稔生の『ソフビ大好き!』


第181回 「え~っ!? 今日、ふりかけ、無いのぉ~!?」  2019.2

1週間ほど泊まりの仕事があり、
お昼御飯は、毎日、
同じ弁当屋さんが届けて下さる仕出し弁当を、
控え室みたいなところで
スタッフの方々と一緒に食べていたのですが、
4日目、
そのスタッフの中の或る1人の方が、

 「え~っ!? 今日、ふりかけ、無いのぉ~っ!?」

と、めっちゃ落胆した感じでボヤいたのを聞いて、
思わず吹き出してしまいました。
だって、
まるで大金の入った財布でも落としかのような、世にも悲痛な叫びでしたから。

確かに、
初日から3日目までの弁当には、
アルミの袋に入った市販のふりかけが付いていたので、

 あ、今日は無いンだな、

って思いましたけど、
大の大人が、そんな、声をあげて嘆くような事では絶対ないし、
しかも、
顔を見たら、“おふざけ” の要素は一切無しの超真剣モード。

 「子供か!?」

ってツッコもうかと思ったのですが、
出会って4日目の、よく知らない間柄なので、やめときました(笑)。


それで思い出したのが、
中学2年の時の或るクラスメイトの事です。

その子の弁当には、必ず、
当時グリコから発売されていた “知床しぶき” というふりかけが
1袋付いていたのですが、
或る時、
おそらくお母さんが付けるのを忘れたのでしょう、
昼休みに弁当をカバンから取り出したら
いつも輪ゴムで弁当箱にとめてある “知床しぶき” が無かった事があり、
カバンの中に落ちてないか執拗に探したものの見当たらず、
そうしたら、
その子もやっぱり、めっちゃ落胆してしまったのです。

弁当を食べた後は、
いつも、運動場に出て、
バレーボールしたりハンドベースしたりして遊ぶのが日課だったのですが、
その日は、

 「ボク、いい。行かない」

と言って、暗い顔して教室に残るほどでした。

当時は、
今日のようにいろんな種類のふりかけが売っていたわけではなく、
僕は、ふりかけといえば、
幼い頃から食べていた丸美屋の “のりたま” くらいしか
知らなかったので、

 無いとそんなに悲しくなるほど “知床しぶき” は美味しいものなのか?

と興味が湧き、
その日の夜、母親に、

 「今度買い物に行く時、
  グリコの “知床しぶき”、ってふりかけ、買ってきて」

って頼んだ事を憶えています(笑)。

“知床しぶき” は、
アルミの小袋入りのふりかけが、
確か、5、6袋くらい箱に入っていて、
1箱全部食べきるまで、
毎日、
僕もその子のように弁当に付けてもらいました。

まぁ、確かに美味しかったですけど、
無いからといって
休み時間に運動場で遊ぶ気力も無くなるほどのものでは
ありませんでしたけどね(笑)。

っていうか、
唐揚げや玉子焼きやウインナーなど、立派なおかずがあるのですから、
ふりかけなんて、
むしろ邪魔に感じるほどでした。

でも、
その子にとっては、無くてはならないものだったのでしょう。
中学2年・14歳にして、まるで人生に絶望してしまったかのようでしたから。

先述のスタッフの方みたく、
大人になっても
ふりかけが無いと痛嘆する人がいるのですから、
もしかしたら、そのクラスメイト、
現在でも、
会社でお昼御飯を食べる際、
奥さんが弁当にふりかけを付け忘れた事でめっちゃ落胆し、
午後からの仕事には
暗い顔で取り組んでいるかもしれません(笑)。



・・・というわけで、
ソフビでふりかけといえば(笑)、こちら。 

世紀末覇王ゴジラ
バンダイ製 ゴジラFOEVER特別版、全長約22センチ。

平成5年に、映画『ゴジラvsメカゴジラ』が公開された際、
劇場で限定販売されたソフビで、
ゴジラ人形に金粉がふりかけて(表面塗装して)あります。

なぜならば、これは、
劇中、
瀕死の状態に陥ったゴジラが、
ファイヤーラドンからエネルギーを吸収して復活した姿であり、
その際に、
ファイヤーラドンが
金の塵となってゴジラにふりかかり、その体内へと取り込まれていったから、であります。

復活後は、
見違えるほどパワーアップして大暴れしてましたので、
実はゴジラも、
先述のスタッフの方や中2の時のクラスメイト同様の
“ふりかけ必須派”、なのかもしれません(笑)。
 





月日は流れて平成16年、
千葉県は松戸のバンダイミュージアムにおいて限定発売されたヴァージョン。
全長約16センチ。

今度は、
あらかじめ金粉を混ぜた素材で、人形が作られています。

なので、
先の、人形に金粉をふりかけた劇場限定版を “ふりかけ御飯” とするならば、
こちらは、
ふりかけ御飯で作った “おにぎり”、といったところでしょうか(笑)。
サイズもコンパクトですしね。 
       





ただ、
哀しい事に、このソフビ、
コレクターやマニアの間では、あまり人気が無いンですよねぇ・・・。

そもそもが、
映画の公開から10年以上経っていたので、

 なんで今さら覇王ゴジラ?

って感じでしたし、
肝心の金粉の量が極端に少なくて、
劇場限定版と比べると明らかに見劣りがするからです。
それに、
目と歯にしか塗装がされておらず、
ファイヤーラドンから命のエネルギーをもらって復活したとは到底思えない、
むしろこのまま死んでいくように思えてしまう、なんだか貧相な見た目になってしまっているのも、大きな欠点。 
           

要は、
やる気が感じられないンですよね、メーカー側の。

もしかしたら、
開発担当の人が “ふりかけ必須派” で、
お昼の弁当にふりかけが付いていなかった事にめっちゃ落胆し、
失意のままこの人形を作ったのかも・・・(笑)。 


・・・あ、そうそう、
先ほどの “知床しぶき” ですが、
僕と同世代なら、
そのテレビCMに
桜田淳子さんと新沼謙治さんが出演されていた事を憶えている人も
少なくはないでしょう。

実は、前回、

 ベムラーは、
 『ウルトラマン』の栄えある第1話に登場した怪獣でありながら、
 第2話に登場したバルタン星人の
 圧倒的なインパクトの強さのせいもあって印象がかすみ、
 一般的知名度が今イチ・・・、

ってな事を述べた際、
僕の頭の中には、
新沼謙治さんのデビュー曲である『おもいで岬』が浮かんでいました。

なぜかというと、
2枚目のシングル『嫁に来ないか』が大ヒットしたため、
1枚目のシングル『おもいで岬』は、
やはり、
印象がかすみ、一般的知名度が今イチ・・・、だからです。

40代後半以上の方には説明不要ですが、
『嫁に来ないか』は、
“新沼謙治” の名を世に知らしめた名曲であり
(僕なぞは、イントロを聴いただけで涙腺が緩みます)、
これが新沼謙治さんのデビュー曲だと認識している人もいるくらいの、
圧倒的知名度を誇ります。
よって、
セールス的に一歩も二歩も引けを取る『おもいで岬』の存在は、実に地味なのです。


ね? ベムラーっぽいでしょ?

・・・って、
僕だけか、そんな発想するの(苦笑)。

でも、
『嫁に来ないか』と同じくらい、いい曲です、『おもいで岬』も。

ちなみに、
『おもいで岬』も『嫁に来ないか』も、
作詞が阿久悠さんで、作曲が川口真さん。
・・・そう、
以前、第107回「OH!ギャル」の中で述べた、
ギャルの『薔薇とピストル』や『マグネットジョーに気をつけろ』と
同じコンビの作品です。
つまり、
『ウルトラマンタロウ』や『ウルトラマンレオ』の主題歌と同じセンス・同じ才能が生み出した楽曲である、
という事です。

ここまで説明すれば、
このエッセイを読んで下さってる方は、まず特撮ファンでしょうから、
歌謡曲に興味が無くても、
楽曲のクオリティの高さが想像出来ますよね。
キャッチーで、かつ、胸の奥に沁みる、素晴らしい歌なのです。
   
 ベムラーの事を書きながら『おもいで岬』を思い出して以来、
 やたらと聴いている、新沼謙治さんのベスト版CD。
 『おもいで岬』や『嫁に来ないか』はもちろん、
 新沼謙治さんの最大のヒット曲『ヘッドライト』も収録されている、
 贅沢な1枚です。 




・・・さて、

 ♪嫁に~来ないか~

と言ったら来てくれた女性も、どこかへ去っていってしまって、はや20年。
食事を作ってくれる人がいない生活が続いております(哀)。

それゆえ、
中2の時は邪魔だと思ったふりかけも、
現在の食生活では、とても重宝するありがたき存在。
しかも、
“売れない役者” ゆえの貧乏生活にとって、
今日のような
おかずを買うお金も無くなる給料日前などは、
重宝するどころか、必需品となります。

・・・なのに、
今、御飯を茶碗によそってから気づいたのですが、
なんと、
そのふりかけの、ストックが切れていました。

 え~っ!? 今日、ふりかけ、無いのぉ~!? 



・・・めっちゃ落胆してます(笑・・・いや、結構マジ)。 




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