真水稔生の『ソフビ大好き!』


第145回 「禁じられぬ感情」  2016.2

自分より幸福だと思える人に対して抱く感情に、
“妬み嫉み” というものがあります。

恥ずかしい事に、
僕という人間を構成している要素の8割強が、これ。

僕はすぐ嫉妬してしまいます。
僕がやりたいような役をやっている人や、
そういう仕事がたくさんある人を見ると、悔しくて仕方ないのです。

さもしいし、ダサいし、
決してほめられた性格ではないのですが、
解っていながら、なかなか治せません。
いや、
治す気が無いのかもしれません。

というのも、
その “妬み嫉み” が、
僕の生きていくエネルギー源になっているからなのです。

“僕という人間を構成している要素の8割強”

と述べたのも、そんな実感からです。

“妬み嫉み” の感情は、
僕を精神的に散々痛めつけた後、
「今に見てろ」という独り言を生み出し、
僕の心と体を突き動かす原動力となります。

なので、
他人に嫉妬などしない清廉潔白な人間に、たとえ無理してなれたとしても、
その結果、
抜け殻みたいになっちゃう気がするンですよね。

よくない事と解っていながら、

 僕には必要な事だから・・・、

と、
脳のどこかで “妬み嫉み” を肯定しているンだと思います。

それに、
他人を羨ましがりはしても、

 “なんであいつが僕より幸福なんだ!?”

って、
憎んだり呪わしく思ったりするのでなく、

 “なんであいつより僕は幸福じゃないンだ!?”

って、
自分自身を嘆くだけですので、
誰に迷惑かけるでなし、別にいいかな、と(笑)。

「今に見てろ」に進化させられる限り、
心のままに他人に嫉妬して、
もがき苦しみながら生きていけば良いのではないか・・・、
そう思ってます。

ただ、

 「今に見てろ」

と言っても、
今年でもう52歳ですし、

 「いつまで見てりゃいいンだ?」

って言い返されそうですけどね(苦笑)。



さて、
今回、どうして、
そんな “妬み嫉み” などというキーワードが浮かんだのかといいますと、
仕事も無くフテくされ、
コレクションルームでボーッとしていたら、
ふと、
メフィラス星人の人形が目に留まり、或る歌を思い出したからなのであります。 

メフィラス星人は、
言わずと知れた、
『ウルトラマン』第33話「禁じられた言葉」に
登場した侵略宇宙人で、
ウルトラマンと同等の能力を持つ強敵ですが、
現在では、
CSで放送されている『ウルトラ怪獣散歩』の
メインMCであり、
番組のテーマ曲まで歌っている、愉快なヤツです(笑)。
 

メフィラス星人の人形に目が留まって思い出した或る歌、というのは、
そのテーマ曲の事。

地球人の子供(サトル君)に

 「地球をあなたにあげましょう」

と言わせようと迫るも拒否された、
自身の過去(前述の第33話「禁じられた言葉」の話)をもとに、

 ♪だ~れか ぼ~くに 地球をくれませんか~
 ♪だ~れか ぼ~くに 愛をくれませ~んか~

と歌いだす、
相変わらず勝手な事を言っている(笑)歌なのですが、
途中、

 ♪怪しい獣と書いて 怪獣なんだ~
 ♪でも本当に怪しいのは~ 地球人の方だろ~
 ♪妬み嫉みの化けの皮に包まれた人間どもよ~

という部分があるのです。

番組自体も面白いですが、
そんなシニカルなメッセージが込められたあの歌が、僕は大好き。

 本当に怪しいのは怪獣ではなく、
 妬みと嫉みの化けの皮に包まれた人間・・・、

宇宙人がそう思うンだから、
僕に限らず、人間は皆、
“妬み嫉み” を抱えているものなンですよね。

そういう生き物なンだから、気取っててもしょうがない。
開き直って
それを生きてくためのエネルギーに変えている僕は、
やっぱ、間違ってないぞ!

かといって、
決して正しいわけではありませんが・・・(苦笑)。 

  マルサン製、全長約23センチ。

前述の『ウルトラ怪獣散歩』を元ネタに
以前書いた、
第140回「ソフビ怪獣散歩」でも使用した、昭和40年代はじめの商品です。 
     
  造形で一番好きなところは、この、うねりを打った腰。
見てると、中森明菜さんを思い出すンです。
たとえば、
『禁区』の

 ♪私からさよならしなけ~れば~

って歌いだしのトコなんて、
まさにこんな感じで、
右側の腰をキュッキュッと上げ下げしてリズムを取りながら
歌っていらっしゃったように思います。
 
  マルサンならではの、
呼吸を感じる “歪み” や “ねじれ” が、
そんな明菜さん独特の動きと美しくオーバーラップして、
人形に艶っぽい生命感を与えている、そんな気がします。素敵。
 
 
そういえば、
『禁区』の歌詞の最後、

 ♪それはちょっと で~き~ない~ 相談ね~

って箇所が、

 ♪それはちょっと で~き~ない~ そうだんねん~

だと、
本気で思ってたヤツが大学の時の友人にいて、
学食で御飯食べながらそれを聞き、大笑いした思い出があります。

百歩譲って聴き間違えたとしても、
そこだけ急に関西弁で歌いだすなんておかしいし、
そんな素っ頓狂な歌を “アイドル中森明菜” が歌うわけがないのだから、
すぐに自分で気づきそうなものなのですが、
そいつは、
僕に指摘されるまで、
何も疑う事なく
そう思い込んで聴いたり歌ったりしていたそうで、

 信じられないヤツだ、

と思ったものです。


・・・話が逸れましたね(笑)。
スミマセン。
ソフビの話に戻します。 

 
  腰のうねり以外では、
胸や背中などに無数にある、
“しわ” というか
“ひび” というか、
この線の描かれ方なんかも、イイですね。
お茶目で自由奔放で、見てるだけでなんだか楽しくなってきます。
しかも、
あばらには、
左側に有っても右側にはまったく無く、
その、シンメトリーの徹底した壊しっぷりが、
芸術の香りすら漂わせながら、僕を惹きつけます。
いかにもマルサンのソフビ、って感じですね。
 
     
     
 







同じマルサン製のメフィラス星人を
もう1体、所有しています。

このように、
型も彩色も大きさも同じですが、
向かって右側の人形は、
製造過程で何かアクシデントでもあったのか、
みぞおち辺りのモールドが、
潰れているような、溶け出しているような、
なんかイビツな見た目になっちゃってます。
 
                      紳士のフリして
実は卑怯で悪辣なメフィラス星人の、

 その腹黒さが腹の表面に出ちゃった、

って感じで(笑)、
これはこれで、気に入っています。 

こちらの2体は、
ブルマァク製 スタンダードサイズ、全長約22センチ。

先述のマルサン製のものと同じ型ですが、
やや小さいです。
 
顔の塗装色が若干異なりますが、決定的な違いは足の裏にあります。 
こちらは、
マルサンの刻印をただ消しただけ。
 
一方こちらには、
ちゃんとブルマァクの刻印が入っています。
 
   
ちなみに、
これがマルサン版の足の裏。
   
ソフビ怪獣人形は、
ぱっと見が同じでも、製造過程の諸事情や発売時期などによって、
形状や彩色が微妙に違ったり、
刻印が有ったり無かったりするので、
そういった事を発見しながら研究していくのも、コレクションの醍醐味のひとつであります。 

ブルマァク製 ミニサイズ、全長約9センチ。

メフィラス星人は、
両手を前に伸ばした状態で拳を重ねて
破壊光線を発射しますが、
この人形は、
今まさに拳を重ねようか、という瞬間。

小さくて可愛い人形でありながら、
ウルトラマンの八つ裂き光輪を跳ね返したあの凄い光線を
今にも発射しそうな、
迫力のあるポーズをしています。 

     
          ブルマァク製 ミドルサイズ 全長約13センチ。

向かって左側の人形は
成形色がこげ茶のタイプで、
右側の人形は、
薄い水色の成形色に、こげ茶色でくるみ塗装が施されているタイプ。

また、
同じこげ茶色でも
微妙に色合いが異なるので、
ミルクチョコレートとビターチョコレート、って感じです。

マルサンの型を用いたスタンダードサイズとは違って
腰もうねっておらず、
これといって突出した所の無い、スマートな造形に仕上がっていて、

 カッコいいけど
 なんとなく面白味に欠けるなぁ・・・、

と思いきや、
後ろを見てニンマリ。
  見事なまでに
丸くてボリュームたっぷりなお尻。

橋本マナミさんとか
安枝瞳さんとかの、
美しい巨尻を彷彿とさせます。最高!

尻フェチの僕には、
チョコレートの色のイメージ以上に、甘い味わいです(笑)。
 

それにしても、
往年のアイドルシンガーの腰に似てたり
今をときめくグラビアアイドルのお尻に似てたり、
メフィラス星人のソフビ人形、って、
なんかエロいなぁ・・・。

いや、
僕の見立てがエロいだけか(笑)。
 
 


これは海賊版のミニ人形。
全長約11センチ。

おそらく、
マルサン・ブルマァク時代の怪獣ブームの際に
縁日や駄菓子屋などで売られていたものだと思います。

素材は、ソフビでなくポリエチレン。

前に持ってきた両手を
お腹の辺りで少しズラしている、
この何か意味有りげなポーズが、
実は何の意味も無くて(笑)、そこが気に入ってます。

 


ポピー製 キングザウルスシリーズ、全長約17センチ。

昭和50年代半ばの商品です。

いつも言いますが、
キングザウルスシリーズが発売されていた頃は、
ソフビ人形というオモチャの造形・彩色が
デフォルメからリアルへと変わりつつあった時期。
それゆえ、
メーカーの模索が窺える、
デフォルメにもリアルにも徹しきれていない、
中途半端な表現の人形が多く見られます。

このメフィラス星人人形も、
造形は、
かなり実物の着ぐるみに忠実に仕上げながら、
彩色は、
実物の着ぐるみなど無視して、
成型色にも塗装色にも、
メーカーのセンスで自由な色が選ばれています。 

 
 オモチャ、って文化だなぁ・・・、

って、つくづく思います。

ポピーのキングザウルスシリーズをどれだけ愛せるか、
このメフィラス星人人形でどれだけ楽しめるか、で、
ソフビマニアの “本気度” が判る、
そんな気もします。 


そして、
バンダイのウルトラ怪獣シリーズ(ウルトラ怪獣コレクション)。

メフィラス星人は人気怪獣ですので、
何度もリニューアルされながら、長期にわたって店頭に並び続けました。
すべて、全長約16センチ。

左の人形が、
昭和58年に発売された初版です。
 
   
       
昭和63年の発売。
袋に入って売られていた時期のもの。
顔のグレーが少し濃くなりました。 
        平成3年の発売。
価格が600円になった際の商品。
ボディが黒から紺色になりました。 
           
           
   
平成12年の発売。
価格が700円になった際の商品。
ボディが黒に戻り、
顔の塗装色が増えました。
    平成19年の発売。
価格が800円になった際の商品。
艶消しになったボディに、
お腹の点々の塗装が追加されました。


ウルトラ怪獣シリーズ以外のソフビもあります。
   
これは、
クレーンゲームの景品。平成14年製。
バンプレスト製 ビッグサイズフィギュア、全長約38センチ。
 
デカくて迫力があるし、
完璧とも言える、実物のまんまの造形。

なので、
見つめていると、

 「サトル君・・・」


あの渋い声(声優は加藤精三さん)で話しかけられた気がして、
思わず、

 「違います、僕、サトル君じゃないです」

と答えてしまいます(笑)。



 

平成18年発売の
ミニソフビのセット売り(商品名:不滅の怪獣セット2)の中の1体。
全長約11センチ。
 


食玩もあります。 
       
   
昭和63年発売。全長約10センチ。
 
    平成19年発売。全長約10センチ。
ウルトラマン人形とセットでした。 






第33話「禁じられた言葉」の劇中、
メフィラス星人はハヤタ隊員(ウルトラマン)に向かって、

 「貴様は宇宙人なのか?それとも地球人なのか?」

と、皮肉った質問をぶつけます。
自分と同じ異星人でありながら
地球人の味方をして自分と敵対するウルトラマンに腹が立つのでしょう、
ややキレ気味の口調で。

それに対して、
特に動揺するわけでも、何か考えるわけでもなく、
なんなら余裕の笑みさえ浮かべながら、
ハヤタ隊員(ウルトラマン)は即答します。

 「両方さ」

あの短いやりとり、
子供の頃は
気にも留めませんでしたが、
大人になってから視聴し直してみると、

 深いなぁ・・・、

って思いますね。

あの、一見なんでもないやりとりこそ、
悪者の悪者たる所以と
ヒーローのヒーローたる所以、ではないでしょうか。

最後、メフィラス星人は、
ウルトラマンとの格闘を途中でやめ、

 どれだけ脅しても、
 「地球をあなたにあげましょう」と
 言わなかったサトル君(人間)の心に負けた自分が、
 今更同じ異星人であるウルトラマンと闘っても無益だ、

みたいな事を言って地球から去りますが、
あれは言い訳。
やっぱりウルトラマンに負けたンですよ、メフィラス星人は。

格闘する前(ハヤタ隊員がウルトラマンに変身する前)、
そう、

 「貴様は宇宙人なのか?それとも地球人なのか?」

 「両方さ」

という、あのやりとりの時点で、すでに勝負はついていたのです。

憎々しげにぶつけた感情的な質問に
冷静な態度であっさり即答された事で、
メフィラス星人は、
自分とウルトラマンの、“心の出来” のあまりの違いを
思い知らされたのだと思うンです。
 
 同じ能力を持つ宇宙人同士なのに、
 なぜ、
 自分は悪者で、ウルトラマンはヒーローなのか?

という “妬み嫉み” を抱えたメフィラス星人の女々しさと、
それを、

 お前みたいな次元の低いヤツなど話にならん、

とばかりに 
簡単に弾き飛ばしたハヤタ隊員(ウルトラマン)の、
後暗いところなどまるで無い清らかさは、
誠にもって対照的です。

おそらく、
恥ずかしくて
いたたまれなくなったンじゃないでしょうか、メフィラス星人は。
だから、
1秒でも早く立ち去りたくて、
空へ飛び去らず、
テレポーテーションを使って一瞬にして消える退散法を選んだ気がします。

ウルトラマンは、やはり偉大です。 

ただ、
そんなふうに、
どこまでも廉潔なウルトラマンに憧れる一方で、
僕はどうしても、
邪念を持つメフィラス星人の方に、感情移入してしまいます。

それは、やはり、
僕自身が “妬み嫉み” を抱えて生きているから。
自分という人間を
メフィラス星人に投影してしまうンですよね。



ウルトラマンみたいな立派な人間になれたら、
そりゃあ、それがいちばんカッコいいンでしょうけど、
僕には無理だなぁ、やっぱ。
頑張ってめざしたところで、
結局、それは、自分に嘘をつく事だから・・・。

なので、
これからも今までどおり、
“妬み嫉み” をエネルギーに変えて、
汗かき恥じかき、歯を食いしばって生きていこうと思います。

メフィラス星人も、

 「俺はあきらめないぞ!」

と叫んでましたが、
僕もあきらめません、絶対に。 
今に見てろ。


♪だ~れか ぼ~くに 仕事をくれませ~んか~(笑)
 
 
 
                 












 




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