真水稔生の『ソフビ大好き!』


第121回 「ニコニコ笑って(追悼 大瀧詠一・その2)」  2014.2

前回に続き、
昨年末に亡くなった大瀧詠一さんを偲び、
名盤『NIAGARA CALENDAR』に因んで
カレンダー形式で僕のソフビコレクションを紹介していく、“ソフビ大好き!カレンダー”、
今回は、5月から8月です。


五月、皐月、MAY 

『ニッコリ・ママさん』


  5月には “母の日” がありますね。
  14年前、
  入院していた母親の見舞いに行く途中、
  ふと、花屋の “母の日” の広告が目に留まり、

   「あぁ、今日は母の日か・・・」

  なんて呟きながら、
  なんとなく釣られてカーネーションを買って行ったのですが、
  病室でそれを受け取った母が
  とても嬉しそうな笑顔をしたので、驚きました。
  思えば、
  母の日にカーネーションを贈る、なんて行為は、
  僕は人生でその時が初めてだったので、
  母親がそんなに喜んでくれるものだとは知らなかったのです。

   こんなに喜んでもらえるなら、今度から毎年そうしよう、

  と心に決めました。
  でも、
  その2ヵ月後、
  母はこの世を去ってしまいました。
  もう、
  何回母の日がやって来ても、僕は母にカーネーションを贈る事が出来ません。
  なんで子供の頃からそうしてこなかったのか、
  せめて社会人になった頃からでもしていれば・・・、と悔やんでいます。


  詩人の谷川俊太郎さんが、
  以前、テレビのトーク番組でこんな事をおっしゃっていました。

   ボクは、
   子供の頃に母親に愛された事で、生きていく力がもらえた。
   無条件に愛された記憶があるからこそ、
   自分が生きてていい人間だ、って思えるンです。
 

  ・・・ガツンと頭を殴られた気がしました。
  僕がまともな社会人面して生きていられるのは
  母親が愛情を注いで育ててくれた事が根源・大前提にある事を、
  気づかされたからです。

  自分ひとりで大きくなったわけではない事は、
  理屈ではもちろん理解していましたが、
  人生に絶望する事も
  反社会的な道へ進んでしまったりする事もなく
  今日まで無事生きてこられた事を、僕は当たり前のように考えていました。
  ちゃんと我が子を愛してくれる母親がいなかったら、
  今頃どうなっていたかわからないのに・・・。

  僕はそれを見落としていました。
  だから
  母の日にカーネーションを贈る事もしてこなかったンだと思います。
  馬鹿息子の馬鹿息子たる所以。
  恥ずかしいです。

  たった一人しかいない息子がこんな不出来で、
  天国の母親には申し訳ない気持ちでいっぱいですが、
  せめて、
  人生を最後まで一生懸命清く正しく生きて、
  もらった愛に応えたい、と思っています。
  カーネーションを受け取った時の、母のあの笑顔を胸に・・・。


       

ママゴン
昭和40年代半ばに放映されていた
円谷プロの怪獣コメディ『チビラくん』に登場する、
主人公・チビラのお母さんです。

ブルマァク製、全長約23センチ。


怒ると怖い教育ママでしたが、
科学者である夫・パパゴンを尊敬していて、
そこが今どきの主婦とは違って(笑)素敵でした。

チビラは勉強が嫌いでしたので、
父親のような立派な科学者にはなれなかったかもしれませんが、
この母親に育てられたおかげで、
きっと今頃は、
家族への愛に満ちた、
優しくたくましい心の男に育っている事と思います。


 
        ちなみに、
  実物のママゴンは、こんなに太い脚はしていません。
  マスクを被って演じていた女優さんの、
  パンストをはいた脚がそのままワンピースの裾から出ていて、スリムできれいでした。
  名誉のために言っておきます(笑)。  

       
  

  ところで、
  僕は幼い頃から
  このママゴンに “美人” というイメージをずっと抱いていて、
  自分でも
  それがどうしてなのか不思議だったのですが、
  今から25年前、
  大阪は十三の
  サンポード・アップルシアターで開催された、
  円谷プロ作品の上映会を観に行った際、その理由が解りました。

  上映作品の中に『チビラくん』があり、
  劇中に、
  チビラの友達・ガキンコの母親(もう亡くなっている設定)が
  遺影で登場するのですが、
  それがなんと、
  女性の服を着たブースカ(着ぐるみの流用)だったのです。
  その時、思い出しました。
  『チビラくん』放映当時、幼稚園児だった僕は、

   ガキンコのお母さんより
   チビラのお母さんの方がずっと綺麗、

  と、思っていた事を。
  なので、  
  その印象が、
  月日の経過とともに
  “ママゴンは美人” という認識と化して脳に貼り付いていった、というわけです。

  
  
  ブースカは大好きですが、
  母親の容姿としては、ちょっと、ねぇ・・・(笑)。

  長年の謎が解けてスッキリしたのと同時に、
  ママゴンの顔とブースカの顔を
  改めて比較し、
  ママゴンに対する “美人” というイメージを
  より強固なものにした僕でした(笑)。






      その上映会に行く数ヶ月前、
円谷プロの怪獣倉庫に行ったら、
チビラとママゴンとガキンコとブースカのマスクが
並んでいたので
記念撮影したのですが、
よく考えたら、
これ、二組の親子だったのですね。
もうすぐ長年の謎が解けるよ、
っていう暗示だったのかも・・・(笑)。


六月、水無月、JUNE 

『朱色雨(しゅみだれ)』

  6月、と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、やはり、梅雨。
  ジューン・ブライドとか
  衣替えとか
  父の日とか、
  6月で思い出す事柄はほかにも色々ありますが、
  鬱陶しい雨降りのイメージが圧倒的に強いので、僕はこの月があまり好きではありません。

  とはいえ、
  ある程度は降ってくれなければ、人間は生きていけないンですけどね。

  ただ、
  一滴も降ってくれなくて結構なのが、
  円盤生物ノーバが降らす、赤い雨です。 

        バンダイ製 食玩
(商品名:プレイヒーローvsウルトラマン対決セット)。
ウルトラマンレオの人形とセット売り。
全長約8センチ。 

                                『ウルトラマンレオ』第49話「死を呼ぶ赤い暗殺者!」における、
      あの、血のような雨が降る真っ赤な空間で繰り広げられたバトルは、
      異様で、病的で、不快極まるものでした。
                           

        てるてる坊主は、
やはり、白い方が健全で良いですね(笑)。


七月、文月、JULY

『空で逢えたら』
 

  特撮の神様・円谷英二さんの誕生日は、7月7日。
  そう、七夕です。
  そして、七夕と言えば、ガヴァドン
  『ウルトラマン』第15話「恐怖の宇宙線」に登場した怪獣です。

  お話はこうです。

    ムシバ少年が土管に描いた怪獣の絵に、
    特殊放射線を含んだ宇宙線が当たって実体化したガヴァドン。
    子供の落書きゆえ、その姿はあまりに稚拙。
    はんぺんのお化けみたいな、ヘンテコな怪獣でした。
    しかも、
    ただ寝ているだけ、という拍子抜けにも程がある振る舞い。
    そして、
    太陽の光が弱まると宇宙線のエネルギーが消耗するのか、
    夕方になると姿が消え、元の絵に戻ります。

    描いた絵が本物の怪獣になると知ったムシバ少年とその友達らは、
    もっと強暴でカッコいい怪獣にしよう、と
    その夜、元の絵にみんなで手を加えます。
 
    その絵に再び宇宙線が当たって実体化。
    今度はたいそう怪獣らしい姿に生まれ変わりましたが、
    ムシバ少年たちの願いも虚しく、ガヴァドンはやはり寝ているだけ。
    ガッカリです。

    ところが、
    ただ寝ているだけでも、
    イビキがうるさ過ぎて我が国の経済生活をメチャクチャに打ち壊す、
    という理由で、
    科特隊に攻撃され、延いてはウルトラマンにも痛めつけられることに・・・。
    怪獣、ってなんて可哀想な生き物なンでしょう。

     「ガヴァドンを殺さないでェ」

    というムシバ少年たちの悲痛な声が聞こえたウルトラマンは、
    ガヴァドンにトドメを刺す事なく、宇宙のどこかへとその巨体を運び去ります。
    そして、

     「泣くな、子どもたち。
        毎年七月七日の七夕の夜、
          きっとガヴァドンに逢えるようにしよう。 この星空の中で・・・」

    と約束するのでありました。

  今見ると、
  見所満載のメチャクチャ面白い回なのですが、
  子供の頃は、
  なんだかはぐらかされた感が強く、
  シーボーズの回と並んで、最もつまらない回でした。
  なんたって、
  佐々木守・実相寺昭雄コンビの作品ですから(笑)。

  描いた怪獣の絵が実体化する、ってところには夢があってワクワクしたのですが、
  その後の展開があまりにも・・・。
  やっぱ、子供は、
  暴れまわる強い怪獣と、それを倒すウルトラマンの勇姿が見たいわけですからね。

  けれど、
  こういった異端なエピソードが、
  『ウルトラマン』の世界を深めて広げたのは、純然たる事実。
  この内容にOKを出した当時の円谷プロやTBSが凄いと思います。
  しかも、
  公園のあらゆるところに怪獣の落書きをし始める子供たちを見て、
  科特隊のムラマツキャップの心が真っ暗になる、っていうシニカルなラストも効いています。
  佐々木さんや実相寺さんをはじめ、
  番組を制作していたスタッフの方々の、その豊かな才能と鋭いセンスに脱帽です。


  ちなみに、
  七夕(7月7日)が円谷英二さんの誕生日、と先ほど述べましたが、
  戸籍上の誕生日は7月10日だそうで、
  僕の誕生日と同じなンです。
  なんだか運命を感じます(感じたモン勝ち(笑))。

  ちなみにちなみに、
  元AKB48の前田敦子さんも、僕と同じ7月10日が誕生日。
  運命は感じないけど(・・・いや、感じたモン勝ちなのだから、感じておこう(笑))、
  なんか嬉しいです。

  ・・・って、
  おもいっきり話が脱線しました。スミマセン。
  閑話休題、ガヴァドンのソフビです。

  まずは、
  バンダイ製 食玩(商品名:ウルトラマンソフビ道)の2体。

     
       ムシバ少年が最初に描いた落書きが実体化した、
 いわゆる、ガヴァドンA。
 全長約13センチ。
       
 次の日に友達みんなで手を加えた絵が実体化した、
 いわゆる、ガヴァドンB。
 全長約12センチ。     
         

  そして、なぜか、
  カッコ悪いガヴァドンAの方のみ、
  ほかにも2種、ソフビ人形化されています。


        これもバンダイ製の食玩
(商品名:プレイヒーローvsウルトラマン対決セット)。
ウルトラマン人形とのセット売り。
全長約13センチ。

ガヴァドンAは
ウルトラマンと対決なんかしないのに・・・(笑)。

      これは、
バンプレスト製で、
ファミリーマートの1番くじの景品。
全長約20センチ。

なんで、
くじ引いて当たる景品が
こいつやねん。
どう考えたってハズレやろ(笑)。




                       僕は、毎年、
   七夕の夜になると、
   織姫と彦星に思いを馳せるだけでなく、
   ガヴァドンと会うためにも、星空を見上げています(マジ)。
                       
                     
                     


八月、葉月、AUGUST
 
『あつさのえい』

  8月といえば夏休みですが、
  幼稚園に通っていた頃の夏休み、
  両親と出かけた旅行先で水族館に入り、そこで、生まれて初めてエイを見ました。
  カメラを持っていくのを両親が忘れたのか、
  その時の旅行の写真がアルバムに残っていないので、
  どこの水族館だったか解らないし、
  僕自身も幼すぎたため
  その旅行の記憶自体がほとんど無いのですが、
  エイを見た事だけはずっと憶えています。よほど印象的だったのでしょう。

  大きくて平べったい、あの独特のフォルム、
  そして、
  ニコニコ顔のように見える、腹側の面にある嗅覚器官と口、
  迫力に圧倒されて恐いンだけど
  どうにも惹きつけられてしまうその不思議な生き物は、
  幼い僕には、
  まるで怪獣のように感じられました。
  『ウルトラQ』に出てくるボスタングという怪獣の姿がエイそのものだった事も、
  もしかしたら影響しているのかもしれません。

  でも、
  僕の中で “エイをモチーフにしたモンスター” と言えば、
  ボスタングよりもこちら、
  『仮面ライダー』に登場した怪人、エイキングです。

        ポピー製、全長約12センチ。 

「走れ、稲妻!」 と叫んで
100万ボルトの高圧電流を放電する姿が
子供心にめっちゃカッコよかったし、
ボスタングのようにエイそのものの姿ではなく、
エイの姿を人の形に発展させたデザイン・造形をしているところに
なんとも深みを感じて、
大好きな怪人の1人でした。
 
         
      確か、
エイキングの次の回がゾル大佐の正体・狼男で、
そのまた次の回はダブルライダーの共演と死神博士の登場・・・、と
めくるめく展開でした。
大瀧さんの『あつさのせい』では、、

 ♪暑さでのぼせあがった心は 宙に浮いたままウロウロフラフラ

と歌われていますが、
『仮面ライダー』にのぼせあがっていた幼い日の僕の心は、
ウロウロフラフラではなく、ワクワクドキドキ。
あの頃の夢見るような感覚は、今思い出しても熱くときめくものです。

稲妻の映像を伴うエイキングの放電攻撃は、
幼い胸が『仮面ライダー』から受けた衝撃の象徴。
その強度・威力は凄まじく、いまだにシビれ続けている次第です。


 
       



さて、
次回はラストの4ヶ月、9月から12月を綴ります。
大嫌いな冬へ向かう、憂鬱で苦痛な時節に関するものになりますが、
大瀧さんの音楽とソフビを愛するパワーで、
幸せな結末をきっと見つけますから(笑)、最後までお付き合い下さいね。
それでは、また来月。

つづく



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