真水稔生の『ソフビ大好き!』


第91回 「ビューティフル・ネーム」  2011.8

バルタン星人、ネロンガ、レッドキング、ピグモン、ガボラ、ジラース、ギャンゴ、ドドンゴ、
ガマクジラ、ブルトン、アボラス、バニラ、ケムラー、ジャミラ、ダダ、ウー、ゼットン・・・etc.
『ウルトラマン』に登場した怪獣たちの名前は、
実にユニークである。
そして、
それらがどのようにして命名されたかを辿っていくと、更に面白い。

たとえば、
空からドーンと落ちてきた怪獣だからスカイドン、
なんていう、
馬鹿馬鹿しいくらい単純な(そこが良いのだが)ものもあれば、
親しげに近づいてきて
「我々は兄弟だ」などと言って友好を求めるものの、
それはまったくの嘘、つまり逆なので、
“ブラザー(兄弟)” を逆から読んでザラブ星人、
のように、
一見単純そうでも、ちゃんと論理的に考えられているものもある。

あるいは、
石油を食べるヒトデ型の怪獣だから、
“ペトロリューム(石油)+ スターフィッシュ(ヒトデ)” を略してペスター、
とか、
地底人が地上を破壊する目的で送り込んだ怪獣だから、
フランス語の“テレストロイタス(地底)” や “テレストル(地上の)” をモジってテレスドン、
とか、
ネーミングの由来を知って、
「あぁ、なるほど」と納得出来るものがある反面、
当時のスタッフにインド人の友人(非常に怒りっぽい性格だったらしい)がいて、
その人の名前をそのまま引用したチャンドラー、
などという、
忙しさのあまり適当に付けたのか
あるいは、悪意を持って付けた(笑)のか、経緯をもっと詳しく知りたいものもある。

とにもかくにも、
当時のスタッフの “知的な言葉遊び” のセンスは実に洒落ていて、
それが、
子供たちに怪獣が愛された要因のひとつにもなっていると思う。

『仮面ライダー』の怪人も、
トカゲロン、キノコモルグ、ムカデラスなど、
同じように洒落たネーミングセンスで命名されているが、
それぞれ、
トカゲ、キノコ、ムカデ、と
モチーフになった動植物の名前がモジってあるので、
その怪人を知らない人でも、
どんな姿形をしているか、どんな特長なのか、
だいたいイメージ出来るし、それが大きく裏切られる事もない。

だが、
『ウルトラマン』の怪獣は、
バルタン星人、と聞かされただけで、
手がハサミになっている宇宙人なんかイメージ出来ないし、
ネロンガ、と聞かされただけで、
姿が透明の、電気を食べる怪獣なんてイメージ出来ない。
レッドキングなんて、
“レッド” と言いながら赤い怪獣ではないのだから、
名前を聞いただけでは、
いったいどんな怪獣なのか、さっぱりわからないのだ。

にもかかわらず、
ウルトラマン怪獣の名前は、
迫力満点の出現シーンや格闘シーンをつぶす事無く、
姿形や物語としっかり結びついて、
大人になってからもずっと憶えているくらい、強烈な印象を残している。
そのネーミングセンスが
いかに洗練されたものであったかが窺い知れよう。

また、
濁音とラ行が使われている名前が多い、という特徴もあるが、
これには、
“洒落たセンス” と言うより、確固とした “理由” がある。

“怪獣” という存在のデフォルトと言える “ゴジラ” の影響を多分に受けている、という事と、
あと、
日本人の感覚では、
濁音やラ行が入った名前というのは、その語感や響きが非日常的で、
違和感を覚えたり、
あるいは、
別世界への憧れみたいなものを感じたりもするものである、という事である。

濁音とラ行は、
“怪獣” という、異形なる夢の生き物をイメージするのに最適な音なのだ。

たとえば、
“亀(カメ)”という馴染み深い実在の動物を、
濁音にして “ラ” をつけたら、
たちまち “ガメラ” という立派な怪獣になってしまうのだから、
こんなにも判りやすく、即効性に優れたものは無い。
濁音とラ行を用いる事は、怪獣命名の “基本” なのである。   

そこで、今回は、
ゴジラやガメラのように、
濁音が用いられ、かつ、“ラ” が “○○ラ” といった具合に接尾語として使われている、
いかにも怪獣らしい名前をしたウルトラマン怪獣を
2匹ピックアップして、
そのネーミングの妙から、怪獣自体の魅力に迫ってみたい。


まずは、古代怪獣ゴモラ
バルタン星人やレッドキングと並んで人気のある、超メジャー怪獣である。
三日月形の巨大な角と太い尻尾の、
迫力ある容姿が特徴で、
大阪城を襲撃してダイナミックに破壊するシーンをはじめとするその豪快な暴れっぷりは、
“怪獣史” にその名を遺す、凄まじいものであった。
旧約聖書にある、
神の怒りに触れたため破壊され滅ぼされた町・“ソドムとゴモラ” から名付けられただけの事はあり、
“怪獣” というものに、“町を壊す” というイメージを植えつけた、
破壊の代名詞、と言える怪獣である。
おまけに、
自慢の尻尾は切断され、トレードマークとも言える角も砕かれ、
自身も徹底的に破壊されて息絶えるのだから、
その印象は、
とことん “破壊”。

そんな凄い怪獣、忘れられるわけがない。
子供心を揺さぶりシビれさす、実に魅力的な怪獣であった。


そして、
ソフビ人形のゴモラの方も、
そんな実物のイメージを決して崩さぬカッコよさで、
幼い胸を大いにときめかせてくれた。

                       












マルサン製、全長約20センチ。
           

近所のオモチャ屋さんの店先に吊るされていて、
通っていた幼稚園のバスが
そのオモチャ屋さんの前の道路を通るため(しかも、ちょうど信号のある場所だったので、そこでよく停まった)、
毎日、車内から窓越しに、僕は熱い視線を送っていた。
何ヶ月もかけて必死におねだりした結果買ってもらえる事になったのだが、
いざ買いに行くと売れてしまっていて、
とても悔しかったのを憶えている。
ただ、
ゴモラの人形なんて誰もが欲しいに決まってるから
売り切れてしまったのも仕方ない、と
すぐにあきらめる事が出来た。

「せっかく買ってもらえる事になったのに、
         なんで売り切れなんだーっ!」

と、泣き喚きたい心境だったが、
人気怪獣ゴモラの偉大さが、それを説き伏せたのである。
でも、
代わりにほかの怪獣人形を買ってあげる、という母親の申し出は断った。
今度どこかのオモチャ屋さんでゴモラ人形を見つけた時に、

 “こないだ違う怪獣買ってあげたでしょ?”

などという理屈で買ってもらえなかったら困るので、
買ってもらえる権利を残しておこう、と咄嗟に考えたからである。
やはり、どうしてもゴモラの人形が僕は欲しかったのだ。

とは言うものの、
その後買ってもらった記憶がないので、
ほかのオモチャ屋さんで
たまたま最後まで見つける事が出来なかったか、
あるいは、
小学校に上がると『仮面ライダー』が始まって僕はライダーに夢中になったから、
その “ゴモラ人形を買ってもらえる権” を
ショッカー怪人の人形か、何か仮面ライダー関係のオモチャを買ってもらう事に、
結局交換して使ってしまったのかもしれない。

             


そんなわけで、
最後まで、僕のオモチャ箱には入る事がなかったゴモラ人形だが、
モリサダ君(以前にも何度か名前が登場している、僕の幼なじみで大金持ちの家の子)は
当然持っていたので、
モリサダくんの家に遊びに行った際には、必ずゴモラ人形で遊ばせてもらった。

    そんな時、モリサダくんは、
ゴモラ人形を指して、よくこう言っていた。

 「お腹のビラビラが凄いだろぉ?
       簡単には、こんなふうに作れんゾ」

モリサダ君は、
わずか5、6歳にして、
すでにマルサン造形の魅力を語っていたのだ。・・・凄い。
大人(コレクター)になって、
マルサン造形の偉大さを痛感した時、僕はモリサダ君の偉大さも痛感した(笑)。
 

この連載エッセイのタイトルに
ゴモラ人形のお腹の写真を使用しているのは、その思い出と感動からである。


また、
マルサン亡き後、
ブルマァクからも、当然、ゴモラのソフビは発売されている。

    スタンダードサイズ、全長約20センチ。

マルサンゴモラの金型を、そのまま流用したものである。

    ジャイアントサイズ、全長約33センチ。

このサイズの人形は、
種類も少ないし、高価なので買ってもらえた子も少ないし、
また、子供には遊びにくい大きさであった事から
スタンダードサイズの人形ほど激しく戦わされたりしなかったため、
中古品でも、新品同然のきれいな状態で残っているケースが多いが、
さすがゴモラともなると、
このサイズでも散々遊び尽くされたようで、
塗装の剥げや
他人形とのバトルの跡が、全身に見受けられる。
ずいぶんお疲れのようなので(笑)、
僕の部屋でゆっくり休ませてあげているつもりで所有しているのだが、
細長い黒目が、
「ココ、居心地がいいです」
って喜んでくれているみたいに見えて、なんか嬉しい(笑)。
 

    ミドルサイズ、全長約11センチ。

以前にも述べた事があるけど、
造形ミスと思われる異常な首の長さが、なんとも憎めない “味” を出している。

    ミニサイズ、全長約10センチ。

赤い成形色の方には、
お腹のスプレーが銀色のバージョンも存在する。 


どのサイズの人形も、
これから大暴れが始まる雰囲気に満ちていて、ドキドキする。
それは、
地味なカラーリングでつっ立ってるだけなのに
最強の風格が漂うゴジラ人形(第8回「ゴジラ人形のこと」参照)に通ずる魅力であり、
ゴモラが
怪獣然とした人気怪獣である証拠、と言えよう。



ところで、
『ウルトラマン』全39話中、
このゴモラの回だけが、
他の回と異なる世界が舞台であった事は、ゴモラを語る上で外す事の出来ない事項であろう。
子供心に、とても印象深く残っている。

“怪獣殿下” というあだ名の、
怪獣が大好きな少年が主人公のお話なのだが、
周りの友達が

「怪獣なんか本当はいるもんか!」と

怪獣殿下を馬鹿にしているところから、物語が始まるのである。
つまり、
ウルトラマンや科特隊が怪獣と戦っているいつもの世界ではなく、
『ウルトラマン』をテレビで見ている僕らが住む世界と同じ次元の世界が描かれていたのだ。
その世界の中に、
実際に怪獣が現れ、科特隊やウルトラマンと戦うわけだから、
いつもとは一味違った感覚で胸がときめく、という特殊な回だったのである。
怪獣殿下が、
自宅の部屋の、怪獣ソフビが数体並んだ机の上で
怪獣の絵を描きながら、
ハヤタからもらった流星バッジで実際にハヤタと通信するラストシーンは
その象徴であり、
大人になった今ビデオやDVDで見直してもワクワクしてしまう。

また、僕がいちばん好きなのは、
ウルトラマンが落として紛失したベータカプセル(変身アイテム)を拾った怪獣殿下が、
ハヤタにそれを届けるために、
必死で走り、立ち入り禁止区域を突破していくくだり。
リアリティの欠片も無い、強引な展開ではあるが、
ハヤタにベータカプセルを渡したい、
という純粋な少年の強い思いが奇跡を起こす様が、清々しいまでに感動的なのだ。
結果として、
ウルトラマンの落し物を届けた御褒美で、
怪獣殿下はハヤタから、先述したとおり流星バッジをもらえるわけで、
そういった意味でも、
このエピソードの “肝” といえるものである。

余談だが、
平成17年に公開された映画『小さき勇者たち 〜ガメラ〜』で、
子供たちがガメラに
力の源となる赤い石を必死で走って届けるシーンがあったが、
あれを観て、
ハヤタにベータカプセルを走って届けた怪獣殿下の事を思い出した人も
多かったのではないだろうか。

「荒唐無稽だ」と馬鹿にして笑い飛ばす人も大勢いた映画ではあったが、
『ウルトラマン』を見て育った怪獣ファンは、
なんだか懐かしい感動を覚え、
思わず涙がこぼれそうになった事だろうと思う。

もちろん僕もその一人。
純粋な思いが天に届いて奇跡が起きる瞬間ほど、夢に溢れたものはない。
あの、
子供たちが赤い石を持ってガメラのもとへ走る展開は、
『ウルトラマン』で育った世代の心に理屈抜きで通じるものであり、
怪獣映画を彩る、怪獣映画に相応しい、実に素敵なシークエンスなのである。
それほど、
幼い日に見た『ウルトラマン』のゴモラの回は、印象的なものだったのだ。

       



そんな、
登場エピソードの強烈なインパクトが
怪獣としての凄まじい迫力を更に印象強く際立たせた事もあり、
ゴモラは、
怪獣ブームが去ってマルサンやブルマァクが無くなった後も、
一時も忘れ去られる事なく様々なソフビ人形が発売され続ける、絶対的存在の怪獣となった。

       
  ポピー製、全長約10センチ。
   ポピー製 キングザウルスシリーズ、全長約16センチ。    


これらは、昭和50年代前半に発売された商品。
ブームに関係なく、
いつの世も子供たちには怪獣が必要である、という事が、
このソフビをはじめ、
怪獣消しゴムや超合金など、
この時期ポピーから発売された怪獣玩具・ウルトラグッズの
好調な売れ行きによって証明された、と言える。
そして、
そういった、ウルトラマンや怪獣の根強い人気に牽引される形で
昭和55年に制作・放映が開始された新番組『ウルトラマン80』にも、
我らがゴモラは登場した。
やはり、ゴモラが出てこなきゃあウルトラは始まらない、といったところか。


その『ウルトラマン80』終了から数年後、
バンダイは子会社であるポピーを吸収合併して、
新時代のソフビ人形・ウルトラ怪獣シリーズ(当初の名はウルトラ怪獣コレクション)を発売するわけだが、
それが
今日まで脈々と続く超ロングラン商品になって、
一匹の怪獣につき何種類ものバージョン違いを生んだだけでなく、
それ以外にも、
食玩やゲームの景品、キャンペーン賞品など、
多種多様な怪獣ソフビが世に送り出され続け、
人気怪獣であるゴモラはその都度商品化されたため、
結果、
非常に多くの種類のゴモラ人形が
ソフビ怪獣人形の歴史に存在する事となっている。

また、
『ウルトラマンマックス』(平成17年)、
『ウルトラマンメビウス』(平成18年)、
あるいは、
平成19年に、
カードゲームとの連動企画で
BS放送やネット配信用の番組として制作された『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』、と
ここ最近では、
過去の怪獣を登場させて
親子2代・3代で “ウルトラマン” を楽しませようというウルトラシリーズが多いため、
当然ゴモラは引っ張りだこ。

よって、
ソフビ人形のバリエーション増加が、ますます加速している次第である。
コレクターとしては、楽しい事この上ない。

その数々を紹介しよう。
まずは、
ウルトラ怪獣シリーズから。

   
     バンダイ製 ウルトラ怪獣シリーズ(ウルトラ怪獣コレクション)、全長約16センチ。

                   
               昭和58年に発売された初版。     白色成形版。


                   
               このシリーズが
 袋に入れられて発売されていた、
 昭和62年頃のもの。
 初版人形とは、微妙に彩色が異なる。
   時代が平成になって、
 このシリーズが
 500円から600円に値上げされた際に
 色替えされたもの。


                     
                平成12年、
今度は600円から700円に値上げ。
それを機に、この造形にリニューアル。
   そして、
 それを平成19年に色替え。
 微糖のコーヒーがカフェオレに変わった感じ(笑)。


                  データカードダス(トレーディングカードアーケードゲーム)で
当たりのカードが出ると店頭でもらえた人形。
赤いクリア成形にラメ付き、
という、いかにも “限定商品” な仕様。


                  ビルやタワーなどのジオラマとセットで、
平成21年に発売されたもの。
単なる色替えでなく、
“このセットのための新造形” というのが嬉しい。
 


                『ウルトラマンマックス』に登場したゴモラも、
しっかりとラインナップ入り。
従来のゴモラと大きく異なるのは、
三日月形の角の表面の模様である。


                     
                   『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』に登場したゴモラの人形。
   向かって左の人形は、ネットショップでの通販限定商品で、
   右の赤い人形が、一般流通版。 



続きましては、
ブルマァクのジャイアントサイズを思い起こさせる(って言うか、それより大きい)、ビッグソフビ。

   
   バンダイ製 全長約37センチ。
 向かって左側が
 昭和の終わり頃に発売されたもので、
 右側が、
 平成に入ってから再販されたもの。


次は、ミニサイズ人形。

   
     セット売りや食玩として、
  昭和の終わり頃から平成の初めにかけて発売されていたミニソフビ。
  バンダイ製もしくはユタカ(ハーティロビン)製で、全長約8センチ。


   
    これらは最近の食玩。
 バンダイ製、全長約9センチ。


    第89回「ミスター・ウルトラファイト」の中でも紹介した、
『ウルトラファイト』に登場したゴモラ。

バンダイ製、全長約10センチ。
『ウルトラファイト』のDVDボックスの予約特典として付いていた人形。


まだまだあります。
今度は、プライズ(ゲームの景品)ソフビ。

    
     この2体は、 
  どちらもクレーンゲームの景品で、バンプレスト製。
  向かって左側の人形が全長約13センチ、右側の人形が16センチ。

  誇らしげに長い尻尾や、
  ダイナミックな上体の “ひねり” など、
  両者とも、なかなか個性的な造形で気に入ってます。
     


    この人形は、
ファミリーマートでくじを買って
当たると店頭でもらえた賞品。
バンプレスト製で、全長約24センチ。

カッコいい。
 


更に、マニア向けフィギュアも・・・。

 
   これは、
  3年前にメガハウスから発売された、
  “アートワークモンスターシリーズ
           〜戯画GIGA〜 ゴモラ”
  という商品。
  
  特徴は、
  この異常に長い商品名ではなく(笑)、
  熱烈な特撮ファンとしても知られる、
  イラストレーターの開田裕治さんが
  デザインを担当した、
  という点と、
  なんといっても、
  全長約50センチという、
  迫力満点の大きさ、である。
 
 
     以前、芝居でダンボール箱を小道具として使用する事になった際、
  この商品が入っていた箱を稽古場に持っていったら、
  共演の女優さんが、小柄な方だったとはいえスッポリと箱の中に収まってしまった。
  それくらいデカい人形なのだ。
  


いかがであろう、この種類の多さ。
ゴモラだけでも
充分コレクションが成立してしまうほどである。
しかも、
小さい人形、大きい人形、シンプルな立ち姿の人形、動きを表現した人形、
どの人形からも
「ピシャーッ!」という、あの何かを引き裂くような鳴き声が聞こえてくるようで、胸がときめく。
登場から45年、
このようにいまだに新しい型の人形が発売され続け、いろんな世代の怪獣ファンを楽しませてくれるのだから、
ゴモラは、
“ウルトラ” という枠を越えて、
わが国・日本を代表する怪獣の一匹、と言っても過言ではないかもしれない。
凄い怪獣である。


また、
人気怪獣であるがゆえの宿命とも言えようか、
姿形をアレンジされて作品に登場したゴモラもいる。

   
平成5年に制作された『ウルトラマンパワード』に登場したゴモラ。
通称・パワードゴモラ。
バンダイ製 パワードモンスターシリーズ、全長約17センチ。
 


     
     これは、
   先述した『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』の劇中、
   通常の姿からバージョンアップを果たした強化形態、EXゴモラ。

   向かって左側の写真の2体は、
   バンダイ製 ウルトラ怪獣シリーズで、全長約16センチ。
   一般流通版とネットショップの通販限定版である。
   右側の写真は、
   同じくバンダイ製で、全長約9センチの食玩。

   このゴモラの姿には賛否両論あると思うが、
   誰もが認めざるを得ない凄い事実がひとつ。
   それは、
   この『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』では、
   なんとゴモラが、
   “正義の怪獣” としてほぼ毎回登場し、主役のような扱いでストーリーが作られている、という事。
   悪役の怪獣が、
   何十年という時を経て、
   主役にまでのぼりつめたわけである。
   幼い頃に見てた『ウルトラマン』に出てきたあのゴモラが、
   今ではウルトラシリーズの主役なのかと思うと、実に感慨深い。
   もはやゴモラの存在が、
   単なる人気怪獣から普遍的キャラクターへと進化し、花開いている証拠と言えよう。   


・・・悪役怪獣の常識まで破壊したゴモラ、本当に凄い怪獣である。



さて、次は、
そんな高い人気を誇るメジャー怪獣・ゴモラとは正反対の、
超マイナー怪獣・ゲスラについて。

(・・・なんか、
 ゴモラの話だけでお腹いっぱいな感じですが(笑)、
 もう少しお付き合い下さいませ。)

ゲスラは、
元々は、南米に生息するトカゲの一種で、
カカオの実やカカオの実にたかる害虫を食べて生きている動物だったのだが、
輸入されるカカオの実と一緒に東京湾へやってきてしまった際、
廃液などで汚染された東京湾の海水のせいで
突然変異して巨大化してしまった、という不運な怪獣である。
ネーミングの由来は、
東京湾の海水には下水道の汚水が流れ出ているので、
下水(ゲスイ)に “ラ” を付けてゲスラ、という事らしい。

僕が子供の頃は、
ゲスラはそのマイナーさゆえ、
マルサンからもブルマァクからもソフビは発売されなかった。
なので、
コレクションを始めてから、
昭和50年代にポピーからゲスラのソフビが発売されていた事を知ったり、
平成に入ってバンダイのウルトラ怪獣シリーズのラインナップにゲスラが加わったりした時は、
怪獣ファンとして、とても嬉しかった。

   
    ポピー製 キングザウルスシリーズ、全長約16センチ。
     下水を飲んだからか、
「ゲェ〜」という嘔吐するような鳴き声が印象的だったゲスラだが、
この人形は、
まさに、「ゲェ〜」と鳴いているような雰囲気があり、、
大好物であるカカオの実を食べたかっただけなのに
自然環境を破壊する人間のせいで怪獣になってしまったゲスラの、
怒りと哀しみを感じさせる。


      バンダイ製 ウルトラ怪獣シリーズ、全長約15センチ。

前傾姿勢の造形と、
ヒレや無数のトゲが海水に濡れた感じの表現になっているところが、
リアル志向の平成ソフビならではでカッコいい。


      バンダイ製 ソフビ道(食玩)、全長約8センチ。



下水から命名されたうえに、
“ゲス” が “下衆” をも連想させ、
不潔な上に、なんだか下品で卑しいイメージまでついてしまっているゲスラだが、
その可哀想な情感こそが、怪獣という生き物の本質。
図体がデカいから、姿形が醜いから、
というだけで、
人間から迷惑がられ、怖がられ、嫌われ、攻撃されて、そして葬られる。
メジャーな人気怪獣ゴモラとは異なり、
ゲスラはとっても可哀想な怪獣なのである。

・・・いや、
ゴモラも、
ジョンスン島でのんびり暮らしていたところを、
珍しいから万博で展示しよう、などと無茶な事(本当に無茶な事だ(笑))を考えた人間の手によって
生け捕りにされて日本へ空輸されてきたうえに、
やっぱり邪魔だからと、散々痛めつけられたあげくに殺されてしまうわけだから、
ゲスラと同じくらい可哀想なヤツなのである。

怪獣は、
マイナーだろうがメジャーだろうが、みんな可哀想なのだ。
凶暴性の裏側に哀しみを秘めた生き物であり、
それでいて、
滑稽なまでの愛嬌も兼ね備えている、という、
実に奥深いキャラクターなのである。

第89回「ミスター・ウルトラファイト」の中で、
僕が子供だった頃は
ウルトラマンと怪獣の闘いが “怪獣プロレス” と評されていた事を述べたが、
当時の大人たちの
そういう浅く薄っぺらい意見は、
最初っからスペシウム光線を使えば怪獣なんてすぐ倒せるのに
ウルトラマンがそれをしない事を揶揄してのものだったと思う。
つまり、
当時の大人たちは知らなかったのだ。怪獣が可哀想な生き物である事を。

ウルトラマンは怪獣を殺したくなんかない。
なんとか殺さずに済む方法を、命をかけた闘いの中で模索しているのである。
それゆえ、いきなりスペシウム光線を放ったりしないのであり、
決して
怪獣とプロレスごっこをしているわけではないのだ。
僕らには、
ウルトラマンの気持ちがちゃんとわかっていた。
だから、ウルトラマンと怪獣の両方を愛したのだ。

洒落たセンスのユニークな名前には、
そんな子供心に見事なまでにヒットする、実に気の利いた語感と響きがあった。
有名になった怪獣も、
そうでない怪獣も、
切ないまでに美しい名前を僕らの記憶に残し、ウルトラマンに敗れ去っていったのである。
そんな怪獣たちを、
僕はこれからも
ずっとずっと愛し続けていきたいと思う。
その分身であるソフビ人形を、この胸に抱きしめながら・・・。



       



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