真水稔生の『ソフビ大好き!』


第198回 「ナショナル・モス・ウイーク」  2020.7

車を運転中、信号待ちしていたら、
運転席の窓に何かがコツンと当たる音。
目を向けると、
なんと、大きな蛾が、バタバタと翅を羽ばたかせていました。

昼間でしたし、特に車内が明るかったわけでもないのに、
なぜか、
その蛾は、車内に入れてくれと言わんばかりに、窓に何度も顔面をぶつけてきました。

窓を1枚挟んで見る蛾の顔面アップに思わず鳥肌が立ち、

 「気持ち悪っ・・・」

と呟いたものの、
ふと、その顔面がショッカー怪人のドグガンダーにそっくりな事に気づいて、
なんとも懐かしく、
慕わしい気持ちにもなりました(笑)。




そういえば、
7月は “ナショナル・モス・ウイーク” がある月。
モスラに人生を監視されている僕(第50回「モスラの怨念」参照)なので、

 自然を愛する心、自然を大切にする心を、決して忘れるでないぞ!

と、神様がこの時期に蛾を僕の前に遣わせたのかもしれません。


・・・え?
ナショナル・モス・ウイークって何、って?

いやぁ、あるンですよ、そういうウイークが。
直訳すると “世界蛾週間”。
要は、愛鳥週間の “蛾” 版、ってトコでしょうか。

愛鳥週間は5月ですが、
ナショナル・モス・ウイークは、7月の下旬。

蛾という昆虫を通して、
自然の面白さや素晴らしさを再確認しよう、というウイークです。
その期間中に、
情報や知識の共有を目的として研究者や昆虫マニアが集うイベントも、
世界各国(日本を含む)で開催されているそうです。

 でも、なんでまた “蛾” なの? 気色悪いじゃん!

と思われるかもしれませんが、
蛾は、ものすごく種類が多く、翅の模様の美しさや不思議な生態などが、
昆虫好きな人たちからすると、たまらなく魅力的なんだとか。



そんなわけで、
今回はドクガンダーのソフビを紹介させていただきます。


ドクガンダーは、
『仮面ライダー』に登場した蛾の怪人ですが、
その登場エピソードは前後編で描かれ、
前編の第20話「火を吹く毛虫ドクガンダー」では、幼虫(つまり毛虫の怪人)の姿で登場します。

そして、
繭の形態を経て、
後編の第21話「ドクガンダー 大阪城の対決」で、成虫蛾の怪人)の姿を現すのですが、
この、
変態を行う “蛾” という昆虫の特徴が、そのまま “蛾の怪人” の特徴に活かされている事が、
昆虫にとても興味があった子供の頃の僕の心を鷲づかみにしましたし、
また、それが、

 前編は幼虫編、繭となったところで “つづく”、そして後編は成虫編、

というふうに展開される物語も、幼い胸を大いにときめかせてくれました。

この怪人およびその登場エピソードに惹かれた事が、
僕を一生『仮面ライダー』を愛する人間にした大きな要因の一つ、と言っても過言ではありません。
実に魅力的でした。 
     



では、そんなお気に入り怪人のソフビ、まずは幼虫の人形から・・・。
       
 

3体ともすべて、ポピー製で全長約11センチ。
ただし、
真ん中と向かって右端の2体は、
左端の黄色のものより数ミリ小さいので、
メーカーの刻印ごとコピーした海賊版である可能性もあります。

そう疑ってかかると、色が異なる事も、なんだか怪しく思えてきます(笑)。

いつも言いますが、
『仮面ライダー』が放映されていた頃に生産・発売されたショッカー怪人のミニソフビは、
駄菓子屋でも売られていた廉価版商品である事や
苦労せずとも売れていくヒット商品であった事などから、メーカーの管理が不徹底です。

彩色が無責任だったり、
上半身パーツとは違う別の怪人の下半身パーツがくっつけてあったり、と
もう、グチャグチャ。
加えて、
メーカーの刻印ごと丸々コピーした海賊版人形も横行した時代ゆえ、
タグの付いた袋入り新品でない限り、
どれが本物(正規品)でどれが偽物(海賊版)か、判定不可能なンですよねぇ。

・・・まぁ、それゆえ、
バリエーションが豊富で集め甲斐があるし、
当時の時代背景や『仮面ライダー』人気の白熱ぶりが伝わってきて、面白いンですけどね。

その醍醐味・妙味は、
続いて紹介します成虫の人形で、更に強く堪能出来ます。

以前、第68回「心は “せいたかさん”」の中でも述べましたが、
カラーバリエーションが豊富なだけでなく、
異なる下半身の造形をしたものが、何種類も存在するのです(メーカーはすべてバンダイ製で、全長約11センチ)。
     
まず、
この2体の下半身には、
獣の体毛のような表現のモールドが施されています。

蜘蛛男人形、ピラザウルス人形、ムササビードル人形など、
この下半身の型を使った人形は多いです。

要は、使いまわし、ですね(笑)。
 
使いまわし、といえば、これ。
モールドが何も無い下半身。

あらゆる怪人人形に流用が可能です。 
こちらの人形の下半身には、無数の引っ掻き傷のような線が彫られています。

この下半身も、
ハエ男人形やトドギラー人形など、
いろんな怪人人形に使いまわしされています。
そのため、
足の裏に “ハエ男” と刻まれたトドギラー、なんていう人形も
存在します(第169回「忘れじのソフビ通販」参照)。
 
最後は、こちら。
葉っぱのような模様がモールドされた下半身ですが、
これ、ドクダリアン人形の下半身です。

なので、
ドクガンダー成虫の人形なのに
足の裏には、“ドクダリアン” と刻まれています。

しかも、
このサイズのドクダリアン人形はポピー製なので、
足の裏には、“バンダイ” ではなく、“POPY” と彫られています。

もう、どこのメーカーの、何の人形なのか、すべて断定不可能(笑)。
完全なるエラー商品です。



・・・いかがでしたでしょうか?
怪人の人形だけでも、こんなに種類が多くて楽しめるのですから、
その種類の多さが桁違いに豊富な、モチーフ元の “蛾” が、
研究者や昆虫マニアの方々の心を虜にするのも解りますよね。

・・・え? 解らない?
種類がどれだけあったって、気色悪いものが気色悪い?

ハハハ。
まぁ、一般的にはそうでしょうね。

だからこそ、
そんな嫌われものの “毛虫・蛾” というものをモチーフにしたドクガンダーという怪人は、
悪者にピッタリの、実に優れたキャラクターだったわけです。

・・・でも、
蛾がこんなに嫌われるのに、
蝶が「きれい」とか「かわいい」とか言われて好かれるの、って、なんか変ですよね。

ちなみに、
蛾と蝶は、学問的には明確な区別が無いそうで、
よく、

 蛾は夜行性で蝶は昼行性だ、

とか、

 蛾は翅を開いたままとまるけど蝶は翅を閉じてとまる、

とか言いますけど、
蛾も蝶も、“節足動物門 昆虫綱 有翅昆虫亜綱 鱗翅目” に分類される、同じ虫だそうです。

そういえば、
僕の友人に、蝶が近くにいると「怖い」「気持ち悪い」と言って逃げ回る人(男性)がいるのですが、
以前、

 「これ、蛾じゃなくて蝶だよ」

って、ちょっと馬鹿にしながら教えてあげたら、

 「同じだわ、そんなもん!」

ってキレられた事がありましたが、正しい事を言っていたンですね、その友人(笑)。


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