真水稔生の『ソフビ大好き!』


第151回 「タメ口利くヤツを倒せ!」  2016.8

初対面の相手や目上の人に対して、タメ口で話す人がいますが、
何なんですかね、あれ。
凄くイヤ。

どうして、そんな事が平気で出来るのか、
どうして、それで良いと思うのか、
僕は不思議でなりません。

だって、
相手に対して敬意を払っていれば、
タメ口なんかにはどうしたってなりませんから、

 タメ口で話す = 敬意を払っていない、

って事ですよ。
初対面の相手や目上の人に敬意を払わないなんて、
信じられません。
ありえないですよ、そんな社会人。

べつに、
完璧に正しい敬語じゃなくてもいいと思うンです。
相手に礼を尽くす気持ちがあれば、
少しくらいおかしな日本語になっちゃっても、真意は伝わりますから。
けれど、
端から敬語を使おうともせず終始タメ口では、健全な人間関係を築く事は出来ません。
そこには礼儀も常識も無いわけですから、当然です。

ってか、
初対面の相手や目上の人には、
特に意識しなくたって、自然と敬語になりません?
余程バカにしてるか、
“何が何でも侮辱してやろう” なんて悪意でも無い限り、
初対面の相手や目上の人に
タメ口なんか利けないと思うンだけどなぁ・・・。


ちょっと前、
バイト先の後輩に、
入ってきた時からずっとタメ口で話してくる女性(30代の主婦)がいまして、
最初は我慢していたのですが、
あまりに酷いし、
周りからの苦情もあったので、それとなく注意した事がありました。

すると、
彼女はこう言い返してきました。

 「なんでェ? タメ口の方がいいじゃん、親しみがあって・・・」

唖然としましたね、僕は。
なんでも、

 敬語は使おうと思えば使えるけれど、
 タメ口の方が良いと思って、あえてタメ口にしている、

との事で、
その、非常識と言うよりは頓痴気極まりない認識に、驚いてしまったのです。
開いた口が塞がりませんでした。

先輩(それも年上)に敬語よりもタメ口の方が良いのなら、
敬語は、
いったい誰に、いつ、どこで使うというのでしょう?

 先輩とか後輩とか、年上とか年下とか、
 そんなの関係ないじゃん!
 私、べつにあなたの事、尊敬してないし・・・、

みたいな事を言われた方が、
腹は立つけどまだ理解は出来ます。
それを、

 年上の先輩だから、あえてタメ口。その方が良い、

などという素っ頓狂な意見を平然と主張されたので、
理解出来ないどころか、
薄ら寒い恐怖すら感じてしまいました。


 “タメ口の方が親しみがあっていい”

なんて、
とんだ心得違いです。

親しみは、
敬語にだって込められるし、
そもそも、
タメ(同格・同等の者)同士の口の利き方・言葉遣いを、“タメ口” というのであって、
そんなものを、
いくら親しみを伝えたいからといって、先輩相手に使って良い道理がありませんから。

年下の後輩にタメ口利かれて、

 わぁ、親しみを感じるなぁ・・・、

なんて好印象を持つ先輩など、一人としていません。
まぁ、中には、
“バカは相手しない” 論理で、
気にしないように努めている人はいるかもしれませんが、
それでも、決して好くは思わないでしょう。
年下の後輩からのタメ口など、耳障りで不愉快なものでしかないのです。

だいたい、
職場でタメ口使うような人間、社会で通用するわけないじゃん。
ここ、日本なンだから。

10代の学生ならまだしも、
子供だっている30代の社会人が、そんな事も解っていないなんて・・・、と
呆れてしまいました。


そういえば、
昨年の今頃、お笑い芸人であり作家でもある又吉直樹さんが、
芥川賞を受賞してから受けた取材の中で、

 「どこに住んでンの?」
 「引っ越した?」

などと、
初対面にもかかわらずタメ口で質問してきた女性記者に
違和感・不快感を覚えた心中を或るテレビ番組の中で明かし、
それがYahoo!ニュースになっていましたが、
あれにも驚いて呆れましたね。

確か、
その無礼な女性記者の言い分も、

 芸人さんだから、よかれと思ってした、

などという、
これまた、非常識と言うよりは頓痴気極まりない認識によるものでした。

もう、ホント、
何を言ってるンですかね? どいつもこいつも・・・。

「親しみがあっていい」とか「芸人さんだからよかれ」とか、

そんなわけないじゃん。アホか!

頭ン中、
脳ミソの代わりに猫の糞でも詰まっとるンじゃないか? って思います。

ろくな人間じゃないですよ、マジで。
だって、

 初対面の相手や目上の人にタメ口を利く失礼なヤツだけど、
 それ以外の事はきちんとしている人格者、

なんて事は、
絶対にありませんから。
非常識で無神経で身勝手で傲慢無礼な人間だからこそ、
初対面の相手や目上の人にタメ口を利くのです。


子供の頃、
『仮面ライダー』で、
キノコモルグという怪人が、
ショッカーの首領に作戦の執行を命令された際に、

 「任せとけ」

と答えたのを観て、

 あれ? 口の利き方がおかしいゾ、

って、
子供心に思ったのを憶えています。

ショッカーという組織は、完全なる縦社会。
それまでの回で何度か耳にした、

 「お言葉ですが、首領・・・」

っていう怪人や戦闘員たちの台詞で、
“お言葉ですが” という言葉の意味や使い方を知ったくらいの僕ですから(笑)、
首領の命令にタメ口で答えるキノコモルグには
違和感を覚えたわけです。

ただ、
このキノコモルグ、
殺人や強盗を犯して服役中だった囚人を
ショッカーが刑務所から連れ出して改造人間にした、
という、
筋金入りの凶悪怪人でしたので、
そんな口の利き方や態度にも納得はしてましたけどね。

・・・ほら、
初対面の相手や目上の人にタメ口利くようなヤツ、ろくな人間じゃないでしょ?(笑)

 
とは言いつつ、
僕はキノコモルグが大好き。
ライダーと同じくらい、憧れていました。

デザイン・造形が優れていてカッコいいし、
ライダーを捕らえて処刑寸前にまで追い込んだ強敵ぶりが、
幼い日の僕の心を鷲掴みにしたのです。

第24話「猛毒怪人キノコモルグの出撃」と
第25話「キノコモルグを倒せ!」の、
あの前後編、
めっちゃ興奮したなぁ・・・。

高速で回転する電気ノコギリが、
鎖で繋がれた一文字隼人の顔面すれすれまで迫ったところで
“つづく” となる展開なんて、
心底シビレたものです。

以降、
ライダーごっこをする際や
ライダーとショッカー怪人のソフビ人形で遊ぶ際には、
その場面を必ず再現するほどでした。 







キノコモルグ

バンダイ製 スタンダードサイズ、全長約25センチ。

前述のとおり、
元は殺人・強盗の罪で服役中の囚人だったわけですが、
メスで体を切り刻む、
通常の改造手術を受けるのではなく、
毒キノコのエキスに只々1週間漬け込まれる、という、
特異な方法で誕生させられました。


1週間経って
そのエキスの入った大きな水槽の中から
浮かび上がってきた顔のアップ、
めちゃくちゃ不気味でした。
思い出すと、今でもゾッとします。 









ただ、いつも言いますが、
昭和のオモチャゆえ、
デフォルメ造形によって
その不気味さは絶妙に緩和されて、人形化されています。

不気味さの中に、
実はカッコよさや哀しさ、時に愛くるしささえもが混在している事、
そして、
だからこそ悪者なのに憧れのような感情を抱いてしまう事、
それを、
僕ら当時の子供たちは
言葉で説明出来なくても感覚で理解していました。
そこに応えたのが、
当時のソフビ人形なのです。

惹かれてはいるンだけど、
実物通りの不気味な人形では怖くて泣いてしまう・・・、
なんて幼児にも、
この造形は優しかったし、

 子供(特に男の子)は、異形なるものをなぜ愛すのか、

って事の答えを、
世の中に向かって解き示していました。
   
             
           「たかが子供のオモチャだろ」
とか
 「(実物に忠実でない、って事で)テキトーな造形だ」
とか、
そんなふうに
軽視したり馬鹿にしたりする人が
いまだにいますが、
僕は声を大にして訴えたいですね。

 凄いものなンだぜ、これ! と。
     ↑
  あえてタメ口(笑)。
 
とはいえ、
このキノコモルグ人形、
デフォルメされていながらも、
ほかのショッカー怪人人形と比べると、割と実物に近い方ではないか、とも思います。
実物の、
“キノコ人間という設定であの容姿” は、
やはり、
秀逸なデザイン・造形だと思いますので、
ソフビ原型師の方も、

 この見事な “実物の形” をなるべく活かしたい、

と考えたのではないでしょうか。

それに、
ほかの怪人人形と同じ黒いブーツを履かせず、
このキノコモルグ人形だけには、赤いブーツがあつらえてある事からも、
メーカー側が
実物のイメージを極力壊さぬよう配慮していた事が窺われます。

安易に可愛らしいだけの “お人形さん” にはしてない、
ってのが、
昭和の怪獣・怪人ソフビの素敵なところなンです。





 
 
そういえば、
当時買ってもらった、
ライダーや怪人の写真で構成されているテレビ絵本に載っていたキノコモルグの顔が、
角度の加減か、
なんとなく常田富士男さんに似ていて、

 キノコモルグの中に入って演じていたのは
 常田富士男さんなンじゃないか、

って、子供の時ずっと思ってました(笑)。 

人形の方は、このように、
ちょっと犬っぽい(それも、ご主人様の帰りを待っている忠犬みたいな)感じで、
健気な可愛らしさが漂う顔に、仕上げてあります。

実物のキノコモルグの顔からは
常田富士男さんを感じ、
オモチャのキノコモルグの顔からは
忠犬を感じ、
僕の幼心がいかに自由にイメージを膨らませて
テレビで観たあの不気味な凶悪怪人を愛していたか、が
今、客観的に解ります。

当時の大人や女性が、
やれ、グロテスクだ、
やれ、ゲテモノだ、と
揶揄したり忌み嫌ったりした怪獣・怪人を、
僕ら男の子は、
優しい感受性と無限の空想力をもって受け入れ、
楽しみ、慈しんでいたわけです。

ソフビ人形は、その象徴なのです。 


  これらはミニサイズ。
同じくバンダイ製で、全長約12センチ。

この4種のほかにも、
成形色が茶色のタイプも存在するようですが、
なかなか出逢えません。
欲しいなぁ・・・。

 
 



“キノコモルグ愛” を語るあまり、
最初の、
初対面の相手や目上の人にタメ口利くヤツに対する嫌悪が、だいぶ薄れてきてしまいましたが(笑)、
今回のテーマなので、
もう一度、怒りを呼び起こして終わりたいと思います。

初対面の相手や目上の人にタメ口利くようなヤツは、
いっその事、
全員、ショッカーに改造されて、
キノコモルグみたく不気味な怪人にでもなればいいンですよ。
どっちみち、ろくな人間じゃないンだから。
そして、
片っ端からライダーキックを喰らって退治されればいいンだ!

・・・ん?
それ、って、
なんかちょっと羨ましいような気が・・・(笑)。
 




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