真水稔生の『ソフビ大好き!』


第149回 「ソフビ妖怪散歩」  2016.6

           




【出演】

・・・油すまし(日東科学教材製、全長約17センチ)

・・・一角大王(日東科学教材製、全長約17センチ)

・・・一つ目小僧(日東科学教材製、全長約18センチ)

・・・からかさ(日東科学教材製、全長約20センチ)

・・・うしおに(日東科学教材製、全長約15センチ)
 



「やってまいりました! ここは鳥取県・・・」 

「うわっ!」

「あぁ、ゴメンナサイ、うしおにさん。大丈夫ですか?」

「大丈夫、大丈夫。 からかさ君こそ、ケガしなかった?」

「はい、大丈夫です」

「一本足で一本歯下駄履いてるンだから、
  バランス取りづらいよね」

「雨で足場も滑るしな」

「気をつけてね」

「はい、スミマセン」
   
「それでは、
  気を取り直してもう一度。

  やってまいりました! ここは鳥取県境港。
  偉大なる、
  妖怪漫画の第一人者・水木しげる先生の、
  故郷・出身地でありま~す!」


「やっほーい!」

「いやぁ、来ましたねぇ~、はるばる名古屋から・・・」
 
 
       
           
 
「昨年の9月に、
  ソフビ怪獣散歩、というのをやりましたが、
  今回は、
  あれの “妖怪版” って事で、
  御主人様のソフビコレクションの中から、
  僕たち昭和の妖怪ソフビ5体が選ばれまして、
  
   ここ鳥取県境港にあります “水木しげるロード” を
   楽しく散歩しよう、
  
  という企画でございます」

「わーい!」 
   








「なんか、
   いきなり凄いンですけど・・・。 何ですか?これ」

「妖怪トーテムポール。
  水木先生がこのために描きおろした原画をもとに、
  妖怪たちの絵が
  高さ4メートルの杉丸太に彫り込まれてるンだよ」

「へぇ~」

「JR境線の鬼太郎列車で境港駅に着いたら、
  まずは、
  そのトーテムポールや
  この巨大イラストボードと一緒に記念撮影、ってのが定番だね」

「なるほど」
   
「あ、僕の像がある! わーい!」


「からかさ君は、
  水木先生の漫画では “傘化け” って呼ばれてるよね」

「ほかにも、
   “からかさ小僧” とか “一本足の傘” とか、
  からかさ君にはいろんな呼称があるけど、
  それって、
  日本中のいろんな所で愛されてる証拠だよな」

「人気者だよね、からかさ君は」

「一本歯下駄を履いた一本足でずっと立ってるのは
  大変かもしれないけど、
  そのバランスの悪い姿形だからこそ愛嬌があって、
  みんなは、そんなお前が好きなンだから、
  さっきみたいに倒れたり転んじゃったりしても、嘆く事無いンだぞ。
  いつも、そうやって舌出して笑顔でいればいい」

「ありがとうございます!」
 
   
 「ちなみに、
  水木しげるロードは、
  この紹介文にあるように
  いろんな妖怪のブロンズ像が建っているから、
  からかさ君だけじゃなくて、
  僕らも自分の像に出会えるかも・・・」

「わぉ、それは楽しみ!」
「それにしても、
  153体とは凄いなぁ・・・」

「百物語すら、とうに超えちゃってますもんね」

「平成5年のオープン当初は、
  20体ちょっとしか建ってなかったそうですよ」

「それが
  どんどん増えていって、この数かぁ・・・。
  水木先生の描く世界が
  人々からいかに親しまれ愛され続けてきたか、を物語ってますね」

「じゃぁ、
  その妖怪ブロンズ像たちに早速会いに行きましょう!」
   
「天気が悪いのが残念だなぁ・・・」 
   
「からかさ君、パァッと開いて傘になってよ」

「無理だよォ、そんな事。僕、ソフビの人形だもん」

「あ、そうか」

「ってか、みんなソフビなンだから、濡れたっていいじゃん。
  濡れても錆びたり壊れたりしないのが、僕たちなンだから」

「なるほど」

「それに、
  “雨の水木しげるロード”、
  ってのも、なかなか情緒があっていいンじゃない?」
 
「それもそうだな。
  よしっ、じゃぁ、はりきって行こう!」
 
   
   
「わぁ、いるいるぅ~」

「これは、あかなめ。風呂場の垢を舐める妖怪だね。
  観光客を
  お得意のポーズでお出迎え、ってトコかな。
  生き生きとした、いい表情してます」

 
 
「こちらは、豆腐小僧。
  あれ? 豆腐の上に、お賽銭が置いてあるよ」

「豆腐屋さんが
  ここを通りかかった際に商売繁盛でも祈願していったのかな」

「ご利益、あるのかぁ?(笑)」
「おっ、輪入道!
  これを見た者は魂を抜かれる、と伝わる妖怪だな」

「でも、ブロンズ像だから、
  道行く人たちも安心して見る事が出来ますね(笑)」
 
「つづきましては、
  御存知、ろくろ首姐さん」

「おぉ、伸びてるぞ、伸びてるぞ。今日も絶好調!」

「妖怪って、楽しいですね(笑)」
 
 
   
   
「・・・むむ?
  なんか、凄い妖気が漂ってますけど、ここは?」

「妖怪神社だよ。
  みんなで参拝していこう」

「え? いいンですか?
  ソフビ怪獣散歩の時、
  確か、
  神聖な場所に相応しくない、って理由で、
  神社仏閣では撮影NGだったはずですけど・・・」

「メフィラス星人さんたちは、怪獣だからね。
  けど、僕たちは妖怪。
  神社仏閣には、逆に相応しいくらいだよ」

「それに、ここ、妖怪神社だし・・・。
  妖怪が妖怪神社からNG喰らうなんて、
  そんな馬鹿な話は無いでしょ(笑)」

「それもそうですね」
       
   
「“目玉おやじ清めの水” で手を清めて・・・」    「一反木綿の鳥居をくぐり、境内へ」   
         
     
「御神体(高さ約3メートルの黒御影石と樹齢300年の欅)には、
  生前、水木先生自ら入魂されたそうです」

「間違いなく、御利益がありそうですね」




「人々が皆幸せに暮らせる、平和な世の中になりますように・・・」






「では、再び、散歩に戻りましょう!」
 
 
「あ、ぬりかべだ」

「ぬりかべは行く手を阻む妖怪だけど、
  こんな小さなサイズなら、
  僕たち、先へ進めますね(笑)」

  
「なんか、脂汗かいてるけど、
  体調悪いのかな?
  
  ・・・あ、雨に濡れてるだけか(笑)」
  
「今度は泥田坊がいる!」

「田を返せ~、って言ってるよ」

「僕たちに言われても・・・」

「とりあえず、怖いから逃げましょう(笑)」 
「廃家などで放ったらかしにされた古雑巾が
  積年の埃や湿気のせいで妖怪と化す、
  白うねり」

「さすがは元・雑巾、
  濡れてる状態も、絵になりますね(笑)」 
「・・・ん?
  誰かが後ろからついて来てるような・・・」 
「あぁ、やっぱり(笑)。
  べとべとさん、先へお越し」 
「あっ、僕だ!
  イェ~イ、並ンじゃお、っと」


「一つ目小僧は、いたずら好きで有名な妖怪だよね」

「そのいたずらを人間の大人に注意されると、
  決まって言う言葉が・・・」

「黙っていよ」

「タチの悪いガキだな(笑)」
 
「ところで、
  一角大王さん、何してるンですか?」

「何してる、って、ほら、
  柿の実は、熟したら取って食べてあげないと
  妖怪に化けちゃうから・・・」

「たんころりん、でしょ?
  よく見て下さい。もう、化けちゃってますよ」

「えっ!?

  ・・・って、
  しょうもないボケに付き合ってくれて、ありがとう(笑)」

「どういたしまして(笑)」
   
「饅頭屋さんの前で、なんと、雪女と遭遇!
  今降ってるのは
  雪ではなくて雨なのに・・・(笑)」

  
「ちなみに、
  ここで売ってる妖怪饅頭は、冷やして食べると凄く美味しいンだって」

「なんで知ってるンですか?」

「さっき、僕たちの御主人様が、
  お店の人にそう勧められて試食した後、“納得” って顔して買ってたから・・・」

「へぇ、そうなンですか。
  けど、
  冷やして食べると美味しい、なんて、雪女効果かな?(笑)」
 
   
「・・・あれ?
  そういえば、御主人様の姿が見えませんけど・・・」


「あぁ、今、
  隣にある水木しげる記念館で、
  鼻の下伸ばして猫娘さんとデートしてるよ」

「もはや、
  若い娘なら、妖怪もそういう対象なンだ・・・」

「っていうか、
  人間の女性に相手にされないもんだから、ヤケクソなンじゃないか?」
  淋しいンだよ、きっと」

「哀れな御主人様・・・」

「まぁ、せっかくですから、
  そんな御主人様の面倒はこのまま猫娘さんに見て頂いて(笑)、
  僕たちは散歩を続けましょう」









 


「あ、土転び!」

「山道にいきなり現れて、
  こうやって抱きついてくる妖怪だね」

「土転びさんとしては、
  ただ遊んでほしいだけなので、
  こんなに怖がらなくていいンですけどね、人間は」

「いやいや、
  妖怪にいきなり抱きつかれたら、そりゃ、怖いでしょ。
  ・・・同じ妖怪の僕が言うのも何だけどサ(笑)」 
   
「ねぇねぇ、天井なめさん、
  天井、ってそんなに美味しいンですか?
  僕も舐めてみようかな・・・(笑)」
   
「あれ?
  なんか、急に雨脚が強くなってきたゾ。
  カッコいい木の葉天狗の像も、びしょ濡れだぁ」 
「・・・と思ったら、雨ふり小僧!

  そっかぁ、
  どおりでよく降るはずだ。
  君がここにいたからなンだね(笑)」

 
   
「あっ、からかさ君が・・・」

「ねずみ男につかまっちゃったよぉ!
  たすけてぇ~」 
「嬉しそうな顔しちゃってぇ。
  いいねぇ、子供は無邪気で・・・」

「そういえば、
  からかさ君や一つ目小僧君って、何百年も前からずっと子供だね(笑)」

「元祖 “永遠の少年” です(笑)」

 
   
「あ、僕の像だ。
  ふぅ~、やっと会えた」

「油すまし、って妖怪は、
  昔からその存在は言い伝わっていたものの、
  どんな姿形をしてるか、は不明だったンだよな?」

「それを水木先生が空想を膨らませて描いて下さったのが、この姿。
  なので、
  水木しげるロードには、
  絶対建ってなきゃいけない像なンです。エヘン」
 
「僕も、自分の像、見っけ!

  ただ、これは、
  “石見(いわみ)の牛鬼” なので、
  大映の映画に出てきた僕とは姿が違ってるンですけどね。
  でも、まぁ、
  うしおにには違いないから、一応」
    「一応でも、自分の像があるから羨ましいよ。
  俺の像、無いもんなぁ・・・」  
「そんな暗い顔しないで、一角大王さん」

「一角大王さんは水木漫画には出てこないですからね。
  けど、
  そもそも妖怪の姿なんて、曖昧なものなンですから、
  像が無いのも、
  その存在に神秘性が増して、いいンじゃないですか?」

「上手い事、言うなぁ・・・」

「さぁ、明るく散歩を続けましょう!
  妖怪は陽気におどけながら行進するもの、と
  昔から決まっていますし・・・」
  
「百鬼夜行の鉄則(笑)ですね」

「今は昼だけど(笑)、
  でも、まぁ、確かにそのとおりだな。
  よしっ、
  一丁、歌でも歌いながら陽気に行くか!」
          「♪カラ~ン コロ~ン」

「♪カランカラン コロン」


「♪カラ~ン コロ~ン カランカラン コロン」
             
「・・・というわけで、
  鬼太郎さん、こんにちは。

  え~っと、
  お父さん、お隣は親戚のお子さんですか?(笑)」 
   
「ねずみ男が寝転がってるから、
  僕たちも、ここでひと休みしましょう」

「結構、歩きましたね」

「一つ目小僧とからかさは、子供なのに、
  よく俺たちのペースについてこられたな。
  なかなか、体力あるじゃん、お前ら」
  
「周りに妖怪がいっぱいいるから、元気が出るンです」

「じゃあ、もっと元気が出る所、行く?
  なんでも、
  妖怪ミストが噴出して癒し効果満点の
  “河童の泉” ってオアシスが、
  この近くにあるらしいンだよ。
  さっき歩いてたカップルが話してた」

「行きたい、行きたい!」

「よぉし、じゃあ、探しながら向かおう!」
   
「ねぇねぇ、いそがしさん、
  “河童の泉” って、どこにありますか?
  
  って、
  やっぱ、忙しいから教えてくれないのね(笑)」
「あ、あそこに河童の像が・・・!」

「あの辺りなのかな?」 
「あのォ、
  御歓談中、スミマセン。
  “河童の泉” に行きたいンですけど、どこですか?

  ・・・って答えてくれるわけないか(笑)」


「・・・ん?
  おい、あそこの信号のところ、
  なんかそれっぽい公園があるぞ。行ってみよう」
 
   
「あった! ここだぁ!」

「うわ~」

「すげェ~」

「やっほーい!」

「わーい!」
 
「くぅ~っ、妖怪ミスト、出てる出てる! 」

「気持ちが安らぐね」
 
「河童以外にも、いろんな妖怪の像があるよ!」 
「ねぇねぇ、小豆洗いさん、
  僕にもショキショキやらせて下さいよ(笑)」

「人間が小豆洗いに近づくと、
  川にドボンと落とされちゃうンだけど、
  ソフビ人形とは言え、さすが妖怪だな、油すまし。
  近づくどころか、
  背中に乗っちゃっても、全然平気じゃないか(笑)」

「ヘヘヘ」
「そして俺は、
  ねずみ男と一緒に水泳を満喫中。
  ほれ、スーイスイ、っと」
 
「僕は、
  さざえ鬼さんと鬼ごっこ。わーい!」 


「あ、鬼太郎さん、
  ダメですよ、そんな所でオシッコしちゃあ!

  ・・・え? 黙っていよ?

  これは一本取られました! ハハハ」 






「・・・といったところで、
  そろそろ、お別れの時間です」

「えぇ~っ? まだ帰りたくないよぉ~」

「もっといたいのになぁ・・・」

「電車の時間もあるからな、仕方ない」

「でも、
  からかさ君や一つ目小僧君の気持ち、わかりますよね。
  ここ、居心地いいもん。 まさに “妖怪の聖地”!」
 

「ホント、楽しかったぁ~」

「雨で良かったな、逆に。 味のある散歩になったよ」

「妖怪は、命や自然を愛する心の “象徴” でもありますから、
  優しい気持ちで生きていれば雨降りもまた楽し、って事が伝えられて、
  妖怪の面目躍如、といったところですね」

「それに、
  雨の中を散歩だなんて、
  ブリキや超合金のオモチャでは不可能な事ですから、
  僕たちソフビ人形の良さもアピール出来て、嬉しかったです」

「それでは皆さん、
  そんな最高の気分で、元気に名古屋へ帰りましょう!」

「おっ、切り替え、早いね」

「タチの良いガキだ(笑)」



「ハハハ!」













・・・そして、その日の夜。

「いやぁ、
 昼間は賑やかだったなぁ・・・。

 悪天候も何のその。
 ソフビ人形とは言え、さすが妖怪だ。

 さて、
 丑三つ時、今度は我々の時間。
 鬼太郎の歌にもあるように、

  昼がお散歩、

 とくれば、

  夜は運動会。

 さぁ、妖怪ブロンズ像の諸君、
 昼間の妖怪ソフビに負けないよう、今夜も大いに盛り上がろうではないか。

 行こ~~~うっ!」 





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