真水稔生の『ソフビ大好き!』


第141回 「ひとりっ子・テレビっ子 ~忘れえぬ心の妹~」  2015.10

友人たちから、

 「昔のテレビの事、ホント、よう憶えとるなァ」

なんて、
よく言われます。

まぁ、
人間の記憶なんて、
時が経てば経つほど事実からは遠ざかっていくものですから、
半世紀以上も生きてる僕の
子供の頃の記憶など、
そんなに当てになるものではないと思いますが、
テレビは、
ドラマやバラエティ、そしてCMに至るまで、
子供の頃から本当に大好きでよく観ていましたので、
いろんな映像と、
それを観た時の自分の気持ちが、
強く記憶として残っている事は確かです。

そして、
その、“記憶として残ってる” って事に、
僕自身、結構こだわってますので、
友人たちが珍しがるのも無理はないかもしれません。

先ほど、
時が経てば経つほど事実からは遠ざる、と述べましたが、
実際、
好きだったがゆえに
記憶を美化してしまっている事も少なくありません。
「鮮明に憶えてる」なんて言いながら、
再放送などで見直してみたら
記憶と微妙に違ってた、あるいは、全然違ってた、なんて事もありますしね(苦笑)。

でも、それで良いと思っているのです。

重要なのは、
その番組の記憶が正確かどうか、
ではなく、
その番組を観て、
記憶に残るような刺激や影響を心に受けた、という事。

それを長い年月の中で美化してしまったのなら、
それほど愛せる番組に出逢えた、という事ですから、
その事自体が、
僕の人生における宝物だと思うのです。

・・・なんか、
大げさな言い方してますが(苦笑)、
僕にとって
“テレビ” や “テレビの記憶・思い出” といったものは、
それほど大切で愛しいものなのです。


そもそも、
なんでそんなにテレビが好きで、
子供の頃に観ていた番組の思い出に固執するのかと言いますと、
家庭の環境が、
大きく影響している気がします。

まず、
ひとりっ子ですので、
いわゆる “チャンネル争い” というものを、僕はした事がありません。
観たいテレビ番組は必ず観る事が出来ました。
加えて、
父親は仕事の帰りが遅く、
母親は、
テレビにはほとんど興味が無くただひたすらに家事、という人だったため、
テレビを観る際は、
常に独りで、ゆっくり落ち着いて、集中する事が出来たのです。
入り込めたわけですね、作品世界に。

だから、
大家族であるがゆえ、
観たい番組が満足に観られなかったり、
ガヤガヤ騒々しい中でテレビを観ていたりした人たちよりは、
思い入れが強く、記憶も多いンだと思います。

テレビは、
僕の人生(特に少年時代)にとって、特別なものなのです。


僕は、いわゆる “テレビっ子” と呼ばれた世代。
それは単に
“テレビが好きな子”、“テレビをよく観る子”
を指すのではなく、
僕が子供の頃は、

 テレビばかり見ている = 勉強しない

という論理で、
どこか否定的、と言うか、
“将来が心配な子” みたいなイメージで、その呼称が使われていました。

テレビが
まだ一般家庭に普及していない頃に生まれ育った人たちが
生み出した言葉でしょうから
仕方ないですし、
現に
こんな “将来” になってしまった以上、強く反論出来ませんが(笑)、
テレビをたくさん観る事が
悪い事だとは、僕は思いません。

テレビから夢や感動をいっぱいもらったし、
仮にテレビを観なかったとしても、
その分の時間を勉強に費やしたとは、到底思えないからです。

観たいと思う番組があったら、
しっかりと集中して、とことん観るべきです。
僕はそう思います。


『おしん』や『渡る世間は鬼ばかり』などの脚本家として有名な橋田嘉賀子さんは、
長台詞が多い事でも知られていますが、
その理由を、
このように自己分析しておられます。

 「テレビなんて、何かしながら観るもの。
  洗い物か何かをしながら音だけ聞いたりしている事だってあるから、
  私自身、映像をあまり信じていないところがあるので、
  言葉(台詞)で説明してしまうンですよ」

・・・あれ?
やっぱ、テレビなんて、集中して観るものではないのかな?(苦笑)

でも、
だとするならば、
幼い頃からずっと
観たい番組を集中して観る事が出来たのは特別な事なのですから、
幸せに思って感謝すべき。

子供の頃の、“鮮明に憶えている” というテレビの記憶は、
微妙に違っていようが全然違っていようが、
やはり尚更、
大切にしたいと思います。

しかも、
“好き” が高じて、
現在では僕自身がテレビに出る身。
一生懸命やってる仕事ですから、
やっぱり、何かをしながらではなく、集中して観てもらいたいものです。
ごくごくたまにしか、出ないのだし(苦笑)。



ところで、
そんな “ひとりっ子・テレビっ子” な僕ですが、
子供の頃、
ひとりっ子じゃない友達を見て、
羨ましいと思った事が、あまりありませんでした。

やはり、それは、
チャンネル争いをする事無く、
静かに独りで
テレビを集中して観られる日常に満足していたから、なのでしょうか、
お兄ちゃんやお姉ちゃん、
あるいは弟や妹を、
特に欲しいとは思わなかったのです。

テレビがあれば淋しくなかった、
って事ですね
(・・・その事自体が淋しい、という考えもありますが(笑))。


ただ、
或る一時期だけ、
すごく妹が欲しかった事があります。

それは、
小学6年生の時。

当時、『おはよう!こどもショー』という番組がありまして、
その中に、
黒澤久雄さんとコッペさんが司会の “のど自慢” のコーナーがあり、
視聴者の子供たちが
参加して歌を披露するのですが、
そこに登場し、
『山口さんちのツトム君』を歌った女の子がめちゃくちゃ可愛くて、

 この子が妹だったらいいなぁ・・・、

と強く思ったのです。

ニコニコしてて、素直そうで、いたいけで、とても素敵でした。

名前もしっかり憶えています。平山織絵ちゃん。

 「平山織絵ですっ! 4歳ですっ!」

というハキハキした自己紹介、
そして、

 ♪つまんないな~

ってところを、

 ♪つまんないな~~~~”


丁寧にしっかり伸ばす健気な歌い方が、なんともいじらしくて、
たまらなく可愛いのです。

何度も観た記憶があるので、
たぶん、
その “のど自慢” が勝ち抜き制で、
どんどん勝ち抜いていったンだと思います。
確か、
しばらくしてから
チャンピオン大会みたいなものにも出場したはずです。
で、その時は、
自己紹介が、

 「平山織絵ですっ!4歳ですっ!」

から、

 「平山織絵ですっ!5歳ですっ!」

に変わっていたような・・・。

もちろん歌唱力が優れていたンだと思いますが、
何よりも、
その、自己紹介と歌い方に象徴される、
あどけなさの中にも “品” を感じるような可憐な所作が、
とにかく好印象で、
見ていると気持ちが和み、心が洗われるようなのです。

審査委員長だったハナ肇さんも、
歌の評価はそっちのけで(笑)、

 「子供はこう育てるべきだ」

なんておっしゃって、賞賛していました。

本当に可愛い女の子でした。
平山織絵ちゃんが僕の妹として我が家で暮らしている日常を
あれこれ妄想しては、毎日を楽しんで過ごしたものです。

あの時だけは、
間違いなくひとりっ子である事をつまらなく思いましたね。
欲しかったです、可愛い妹が。

懐かしいなぁ。
・・・平山織絵ちゃん、僕の心の妹です。


・・・と、ここまで書いて、
ふと、
ネットで “平山織絵” を検索してみたら、
なんと、
チェリストで同姓同名の方がいらっしゃいました。

写真の
お顔や見た目年齢から、

 もしや、あの “のど自慢” の平山織絵ちゃんでは?

と思い、
ブログのプロフィールを読んでみたのですが、

 子供の頃に『おはよう!こどもショー』の “のど自慢” に出場、

なんて記述はありませんし、

 「平山織絵ですっ! ○○歳ですっ!」

とも書かれていません(笑)ので、御本人かどうかはわかりません。

でも、
なんか、似てる気がするンだけどなぁ・・・。
違うかなぁ・・・。



さて、
コレクションの紹介ですが、
今回は、これ。

 

オレンジファイター
『トリプルファイター』の主人公である早瀬3兄妹の、
末っ子の妹・早瀬ユリが変身する、特撮ヒロインです。

“妹” つながり、ですね(笑)。

 


御存知無い方のために説明致しますと、

『トリプルファイター』とは、
昭和47年に、
月曜から金曜までの帯で放映されていた、
円谷プロ製作の特撮ヒーロー番組であり、
SAT日本支部に籍を置き、
デーモン(デビル星人)の侵略から地球を守る、早瀬3兄妹の物語です。

SAT(サット)とは、
Space Attack Teamの略で、
かつて
デーモンに故郷の星を滅ぼされながらも、
なんとか生き残って
地球に逃れてきた宇宙人たちにより結成された地球防衛組織で、
早瀬3兄妹は、
その宇宙人たちの一部であるM星人の、子孫。

長男の早瀬哲夫はグリーンファイターに、
次男の早瀬勇二はレッドファイターに、
長女の早瀬ユリはオレンジファイターに、
それぞれ変身して戦い、
最終形態として、
3人で合体変身して、トリプルファイターとなります。

         
         

特撮関係で “妹” と言えば、
僕らの世代では、
やはり、この、
『トリプルファイター』に登場したオレンジファイターが、筆頭です。

   

まぁ、でも、
『トリプルファイター』放映時に小学2年生だった僕からしたら、
笛真弓さん演じるオレンジファイター・早瀬ユリは、
妹というよりは、
完全なる “お姉さん”、でしたけどね(笑)。

 

   ソフビは(と言うか、関連玩具は全て)、
 番組の単独スポンサーであったブルマァクから発売されていました。
 
 











全長約30センチ。 
  SAT男性隊員、SAT女性隊員、として
発売されていたようですが、
せっかくなら、
男性隊員をもう1種作って、
早瀬哲夫、早瀬勇二、早瀬ユリ、として
発売してほしかったものです。 
     
  20数年前、
この人形を手に入れて
いちばん最初にした行為が、これ。

見つかったら、
勇二兄さん(レッドファイター)にぶん殴られそうですが(笑)、
子供の時に買ってもらえた子も、絶対にした事だと思うけどなぁ・・・。

だって、
言ってみれば、
これだって “少年の夢” だもの(笑)。


・・・え?
何色のパンティか、って?

ふふ~ん、内緒(笑)。
 
                     
                   


 











全長約30センチ。 
 
 第2回「ああ、麗しのソフ美人」の中でも述べた事ですが、
 この人形の魅力は、
 なんといっても “マスク” にあります。
      優れた頭脳を持つグリーンファイターには、
凛々しくて賢そうな表情が、
 
      強靭な体力を持つレッドファイターには、
勇猛でたくましい表情が、 
      正しくやさしい心を持つオレンジファイターには、
柔和で愛に満ち溢れた表情が、 
       マスクの造形において、
 それぞれしっかりと表現されているのですが、
            特に、
オレンジファイターのマスクは、
目元や口元が紗をかけたように仕上がっているので、
その憐れみ深い表情が
なんともロマンチックに感じられて、実に素敵なのです。 
     
はっきり言って、
実物のオレンジファイターより美しいです、この人形。 
                       
                   


   小さいサイズの人形もあります。 
           
      全長約11センチ。
クリア成形のセット売りの中の1体です。

セットの内容は、
見ればわかると思いますが、
向かって左から、
SAT男性隊員、
オレンジファイター、
グリーンファイター、
レッドファイター、
トリプルファイター、
です。 
 
なぜクリア成形にしたのかは不明ですが、
今となっては、
この飴細工のような見た目が、
人形によって甦る子供の頃の思い出を、より甘く薫らせてくれるようで、癒し効果満点です。 
         
      全長約14センチ。

目が、
実物どおり、黒で描かれていて、
番組の思い出がストレートに甦るため、
見つめていると、
あの、勇ましくも美しい名曲主題歌が
頭の中に流れてきて、
胸が震えます。
 
     


   海賊版の人形もあります。 
     

全長約15センチ。

一目で “ぱちもん” だと判る出来ですが、
セットで売られていたお兄さんの色が違っていますので、
 ぱちもんで悪いか?
という、
開き直りすら感じられて、気持ち良いです(笑)。
 



オレンジファイター・早瀬ユリは、
可愛くて、心がきれいで、
ちょっぴりお転婆で、
それゆえ、
 守ってあげなければ、
と思わせる危なっかしさもあって、魅力的なキャラクターでした。
そして何より、
兄である哲夫と勇二を
心から尊敬し信頼している事が言動に現れていて、そこが素敵でしたね。
今思うと、
“理想の妹像” として愛されるよう、しっかりと物語の中で描かれていた気がします。

平山織絵ちゃんが年頃になったら、あんな感じだったかもしれません。

平山織絵ちゃんも
オレンジファイター・早瀬ユリも、
僕の “心の妹”、
そして、
大切で愛しい、子供の頃のテレビの記憶です。





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